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久しぶりの学園。そして気づくと断罪の日。
いつもは嫌な気持ちになったこの日を、清々しい気分で迎えられるのがなんとも嬉しい。
「おはようセレス。本当にやめたのね」
「まあ、お兄ちゃんに合わせたやつだから正直ぶかぶかだったし」
「髪も伸ばすの?」
「今のところはね。けど短いのも案外楽だったんだよね」
「セレス様、おはようございます」
「あ、パール、おはよう」
パールは私の姿を一瞥する。
「本当に女性だったのですね」
「そうだよ。残念?」
「そんな事ありませんよ。女性の姿も素敵です」
良かった。パールにまで残念って言われたらどうしようかと思った。
「パールはどっちの私が好き? どっちもは無しね」
「え、そうですね……」
パールはかなり真剣な悩んでいるようだ。本当に安心した。前のパールが私が女でも構わないって言ってたけど、口にするのと目の当たりにするのじゃ違う。だから、今目の前にいるパールが、どっちの私がいいか真剣に悩んでくれているだけで救われる。
「随分と意地悪な質問をするのね。そんなんだから嫌われるのよ」
「そんな私が大切なんだから、スカーレットも趣味悪いよ。てか、あのクズ好きになってた時点で相当趣味悪いけど」
「あのね、一応立場が上の人なのだから、敬意はちゃんと払いなさい」
「あいつに敬意を払うくらいなら舌切って死ぬ」
心の中で唾を吐いておく。
「ふふ、やはり私には決められません。どちらもセレス様ですから」
「私は前のセレスの方が多少猫を被っていたからよかったわ」
「何言ってんの。今も昔も変わらず、礼儀正しく優しいセレス・コロールだよ」
「嘘おっしゃい」
スカーレットに軽く叩かれた。
「セレス様は今もお優しいですよ」
「それはあなたにだけよ」
「そんなことありませんよ」
「あるんだなー、それが。スカーレット、私に優しく接してほしいなら、パールみたいに優しく清らかな心を持って私に接しなさい」
スカーレットはなんともまあ酷い顔を見せた。
「あなたもう一回入院しなさい」
「酷い! この悪役令嬢!」
「なんですって⁉︎」
「まあまあ、お二人とも落ち着いてください」
いつもと変わらないけど、久しぶりの学園は本当に楽しい。そう、楽しかったのだ。
「おいチビ、なに一丁前にスカートなんか履いてるんだ?」
こいつが来るまでは。
「うっせー馬鹿! こっちが本来の制服だ!それに私はチビじゃない! むしろ背は高い方だ!」
「俺より小せーからチビだろ。おまけに器も小せーしな」
馬鹿は私を指差しながらケラケラと笑ってる。
もう公爵の息子殴ったんだから第二王子殴っても良くね? 良いよね? うん、良い。よし。
「一体なに考えてるのよ、セレス」
「うわっ! スカーレット!」
「げ、姉貴」
「何よ二人して。まあいいわ。アラン、ちょっと来なさい」
「ああ、んだよ。ここで話せねー事なのか?」
「婚約に関する事よ。それにセレスは知っているし。でもこんなところで話すことではないし、一応家の事なのだから、セレスは関係ないもの。だから早く来なさい」
「仕方ねーな。おいチビ、お前色々あってパールの呼び出し行ってねーだろ。時間作ってちゃんと応えろよ」
なんでお前が知ってんだよ!
「言われなくとも。だからさっさと行け」
パールの事はちゃんと考えていた。あの呼び出しは、私への忠告もあるが、メインはどう考えても告白だろうし。だからこそ、まだその呼び出しに応えるわけにはいかない。すべてが終わってから、それに応える。
割とセレスとアラン(馬鹿)絡ませるのは楽しくて好きでした。
良い感じにセレスの背中押してくれたりしてくれたので、そういう面でもかなり助かったキャラです。
お互い認めなさそうですが、割とお互い信頼し合っている良い友人です。