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病室に入ると、放心したように外を眺めているクズがいた。
「自業自得」
そう声をかけると、ゆっくりとこちらを向いた。
「君か」
「気分はどう? 最悪? なら良し」
「……俺は君が嫌いだ」
「知ってる」
「だが、感謝もしている。だからこそ、今回起こしてしまったことはすまなかったと思っている」
「謝罪はいらない。それを受け取ったら、私が許そうが許さなかろうが、あんたはその事実だけで少しは満足するでしょ。だからいらない。それよりも、経緯だけ聞かせてほしい」
クズは私から目を逸らし、また窓の外を見る。
「朝、シャルトを見かけたんだ。彼女の顔は暗く見え、昨日の事から君関連の事だろうと思った。
だから俺は放課後、彼女に話を聞き、何があったか聞こうとした。その話題をもとに、君に嫌味の一つでも言ってやろうと思ったからだ」
相変わらず嫌な奴。
「そして彼女と出会ったら、こうなったというわけだ。……いつもみたいに、俺を蔑んでくれ」
「うぇ、なに、そういう趣味? うわぁ〜」
「そんなわけないだろ。……お前の言った通り、俺は最低な人間だ」
「よくご存じで。それでなに? 理解したから少しはましになっただろってしたいわけ? 言っとくけど、今回の事だけじゃない。むしろ、その前の事の方が私は怒っている」
「前?」
「やっぱり、あんたは変わらない。まじで自覚ないのかよ」
クズは前の出来事を思い出そうとしてるのか、また口を閉ざした。
「もしかして婚約の件か? あれは悪かったと思うが、最善の案だと思ったんだ。君がパールの事を好きだと言えば、そもそもあんな事言わなかった」
今回は自制心が働かなかった。手が勝手に拳を作り、クズの顔を殴っていた。
クズの鼻からは、血が流れている。
「お前、まじでなんも分かってない! スカーレットの事、本当になんだと思ってるんだよ! スカーレットはお前にとって都合の良い駒じゃない! お前、自覚ないかもしれないけど、無意識にスカーレットの事見下してただろ。自分が見下していた相手に捨てられた気分はどうだ? 最悪か? だから、ちょっと理解示した態度とって、俺可哀想して、自分を可愛がっているだけだろ。まじでふざけんな」
「……悪かった」
否定しないのかよ。まじでなんなんだよ、こいつ。
「お前、まじで最低。ここまで言って何も分かってないとか。なんで私に頭下げるんだよ。なんでスカーレットはこんな奴の事好きだったんだよ」
「……すまない。こんな俺でも、変われると思うか?」
なんだよその言葉。自分が完全な悪者になるのは嫌なのかよ。
そっちの方がましなのに、だから私は嫌いなんだよ。
「冗談は死んでからにしろ」
それ以外もう何も言う気力がなくなり、少々荒っぽく部屋から出る事しか出来なかった。それが、私の最後の抵抗だった。
どうせ死にません。
なんか、話数を重ねるごとに意に反して性格悪くなってるなっていくキャラでした。実は、途中改心していい奴方面に持っていこうとしたんです。あのデート回とかですね。無理でしたね。現実も創作も、無自覚に性格悪い奴って改心しないんだなってしみじみ感じました。
ちなみに、こいつが本人を前にして名前を呼んでいるのはパールだけです。……だめだこりゃ