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あれから、シャルト様とクズは禁忌魔法の影響を強く受けていたため、そして私も二人の近くにいたからか、多少の影響を受けていたらしいため、教会の病棟で入院することとなった。
パール達は特に問題もなかったらしく、検査を受けたあと普通に帰されていた。
「本当に心配したんだから。どうしてお姉ちゃんに言ってくれなかったの?」
「カナリアの言う通りです。無事で良かったですが、あまり心配をかけさせないでください。セレスが貴族の交流を拒んでも、男になりきっても構いませんが、今回のような事は許せません。お兄ちゃんは少し怒っていますよ」
二人の顔は疲れきっていて、私が意識を無くしていた間、ずっと心配していたことが窺える。
「ごめんなさい。お兄ちゃんとお姉ちゃんを巻き込みたくなくて……」
「セレスが私達のことを思っての事だってことは理解しているけど、私達だって、同じくらいセレスの事が大切なの」
「今度からは、こんな危険な事に一人で足を突っ込まないように。いいですね?」
「うん」
「なら良いです」
お兄ちゃんとお姉ちゃんに許してもらい、やっと肩の荷が降りた気がする。おかげで他の人を心配する余裕が出てきた。
「そういえば、シャルト様は?」
「彼女はまだ目を覚ましていませんよ。長い間禁忌魔法を体に留めていましたからね。その蓄積もあるし、消えた時の負担も大きい。すぐには目を覚ませないと思うし、覚ましても彼女には色々と聞かないといけない事が多すぎて、中々会えないでしょうね」
「そっか……」
できるなら、大人達よりも先に事情を聞いて、多少は味方できるようにしたかったんだけどな。ま、無駄か。
シャルト様が禁忌魔法を保有していたという事で、ルーズ家の立場は危ういだろう。その立場がどうなるかは、シャルト様の発言次第といったところか。
「ついでにク──アッシュ・グレイはどうなったの?」
「もうすぐ目を覚ますと思うよ。でも、すぐには会えない。彼にも説明義務があるからね」
「ふーん」
とことん不運な奴。いい気味だ。
「私は?」
「セレスは大丈夫。目も覚めた事だし、今日一日入院して、明日の検査で何もなければ退院」
「そっか、しばらくしたらいつも通りか〜。あ、お兄ちゃん、制服返すね」
「何か心変わりでもあったのですか?」
もう女だってバレたし、スカーレットももう大丈夫だろうから、男装する必要が無くなっただけなんだけど、そんな事言えないし。
「今回のシャルト様の件、私が男装した事が原因でもあるから。もうこんな事起こしたくないし、誰も傷つけたくないから」
お兄ちゃんとお姉ちゃんは二人顔を見合わせた後、私をそっと抱き寄せた。
「セレスのせいではありませんよ。むしろセレスは今回の件を解決した立役者です。そんなに自分を責めなくても大丈夫ですよ」
「そうだよ。それに、今回の件はセレスが男性の格好をしていたからこそできたこと。でも、もうやめるっていうならそれでいい。結構好みだったけど、我慢する」
「お姉ちゃん……」
本当に、前世にいたらオタクになってそう。
「セレス、カナリアの為にも制服は持っていてください。邪魔になるようでしたら、返していただいて構いません」
「分かった、そうする。ありがとう」