表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/55

50

「あっぶねえな!」


 そう言って剣を止めたのは馬鹿だった。


「セレス、大丈夫⁉︎」

「スカーレット、どうしてここに? ついでにあんたも」

「助けてやった相手にその言い方はないだろ」


馬鹿はクズを押し返し、よろけたところを体を使って拘束した。


「姉貴、ロープ」

「はい」

「たくっ、急に呼び出されたから何かと思えば、お前のしょうもない告白と護衛とはな」


呼び出された? 誰に?


「パールが顔色変えてあなたを追いかけたから、私もアランを連れてあなたを追ったのよ。何かあったら私じゃ対処できる保証がないもの」

「そっか、ありがとうスカーレット」

「おい、俺にはなしか?」

「ま、一応助かったよ。感謝してやる」


さっきの危機的状況の反動なのか、和やかな空気が一瞬漂った。けど、パールだけは違った。


「皆さん、シャルト様から離れてください」


パールは静かにそう言った。その声色と顔に身体が危険信号を発し、シャルト様を横にして私達は離れた。


「あーあ、残念。失敗しちゃった」

「あんたの仕業?」

「まあそうだけど、ワタシは別に無理矢理やらせた訳じゃないよ。その子の恨みを君が買っていたからだよ。ワタシだって万能じゃない。負の感情がない相手に対して剣を向けさせる事はできない。自業自得だよ」

「待ちなさい。それじゃあ、アッシュ様はセレスの事を嫌っていたということなの?」

「そうだよ。そんな事に気づかないなんて馬鹿だね。やっぱり馬鹿は群れるんだね」

「んだとテメェ」

「だって、パール(そこの子)シャルト(この子)セレス(その子)の話の途中でワタシに魔法をかけてきた馬鹿だよ。そうされたらワタシだって怒るよ。だから、アッシュ(その子)を使ったの。君も油断する馬鹿だし、君も一人で何もできない馬鹿だし、君も言動が馬鹿。分かった?」


パールは申し訳なさそうに耳打ちしてきた。


「すみません、失敗してしまいました。繋がりが緩んだ瞬間を狙ったのですが」


現状のパールじゃ少々力不足だったか。仕方がないこと。むしろ今まで私に被害が出ないように守ってくれただけでありがたい。


「大丈夫。あとは任せて」


 私はみんなよりも一歩出る。


「いい加減にしなよ。こいつが馬鹿だということだけは認めるけど、あとは違う! 私もパールもスカーレットも馬鹿じゃない!」

「おいチビ、そりゃねーだろ」

「今はそんな事いいから! あんたの目的はなんなの!」

「目的か。うーん、そうだね」


パンドラは側に落ちている剣を拾って私に向ける。


「とりあえず、君達みたいな邪魔な存在を消す事かな」


パンドラが思いっきり剣を振ってくる。


『風よ、かの者を吹き飛ばせ』


風魔法で応戦するが、相手は魔力の塊といっても差し支えない存在。正直気休めくらいにしかならないと分かっている。だけど、絶対に近づけられない!


「わー! 君魔法すごいね! ワタシも負けないよー!」


パンドラの魔力の暴力が私の魔法を押し返していく。


『水よ、かの者を押し返しなさい』

『炎よ、奴を近づかせるな』

『聖なる力よ、かの者らに力を授けたまえ』


スカーレットと馬鹿の援護、パールの支援のおかげでなんとか持ち直したけど、正直時間の問題としかいえない。誰か一人の魔力、特にパールの魔力が切れたらまずい。何か策を考えないと、全員お陀仏になりかねない。


「よく持ち堪えました!」


 そんな声が聞こえた直後、瓶がパンドラに投げつけられた。


「ギャ!」


という声をあげて、パンドラは動きを止めた。おそらく中身は聖水だろう。


「みなさん! 大丈夫ですか⁉︎」

「お兄様、来てくださったのですね」

「おせーぞ兄貴」


そっか、そうだよね。パールとスカーレットが私を追いかけたのなら、ホリゾン王子様も来てくれるよね。


「う、うう……」

「やはり掛けただけでは効きませんか」

「……して。ころ、して、ください」


シャルト様の意識が戻った!

パールの方を見ると、かなり疲れているみたいだ。それに、失敗すればおそらく魔力が切れる。そんなリスクを冒せない。


「ホリゾン王子様、今のもう一本ありますか?」

「ええ、ありますよ」

「私に、まかせてもらえませんか? いえ、まかせてください。お願いします」


しかし……。と渋っていたが、スカーレット達の協力もあって、なんとかまかせてもらえた。


まだ、シャルト様の意識がある内にやらないと。


「シャルト様、私は婚約者にはなれませんが、友人になってもよろしいでしょうか? シャルト様と過ごした一日はとても楽しかったです。ですので、友人として、これからも共有させていただけませんか?」


シャルト様の黄色い片目から涙が流れてくる。


「こんな私でよければ」


シャルト様は私の手から瓶を受け取り、中の聖水を飲み干す。

直後、一瞬苦しみ出したがすぐに気を失った。やっと片付いた。

私も緊張が解けたのかその場に横たわる。


「セレス様!」

「セレス!」

「おいチビ!」

「大丈夫ですか!」


みんなが駆け寄って心配そうな顔を見せる。その顔を見るとなんだか安心して、笑みが溢れる。


「うん、大丈夫。ありがとう」

本編では語らないので、付け足しで。

聖水の力だけではパンドラを払うことはできませんが、パールの影響をずっと受けていたので、払うことができました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ