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 前世の私には親友が一人いた。本当に優しくて、自分よりも人の事を思うような子だった。ただ、人前で話す事を人一倍嫌い、隅で本を読んでいるような子だった。それは、出会った頃から変わらなかった。


 彼女と関わるようになったのは小学校六年生の時だった。


「次、体育だよ。早く着替えないと遅れるよ」


彼女は頭を下げると、すぐに着替えに行った。


この頃の私は、今と比べて少々捻くれていた。だから、着替え終わった彼女を捕まえた。


「教えてあげたんだから、言うことあるでしょ」


そう言うと、彼女は困ったように口をぱくぱくさせていた。その行為に私はさらに腹が立った。


「ありがとうってただ一言言うのも嫌なの⁉︎」


彼女は私の言葉を首を振って否定した。


「じゃあ言って。早く」

「あ、あ、あ、ありがとう」


彼女は顔を真っ赤にして、泣きそうになりながらその一言をつっかえながら言った。


「言えんじゃん」


私がそう言って去ろうとすると、彼女は声をかけてきた。


「へ、へ、へ、変だと思わな、な、な、いの?」

「なんで?」

「こ、言葉が……」


彼女は吃音症だった。もちろん、私はそんな事知らなかった。でも、知っていたところで私の返答は変わっていなかったと思う。


「別に。どうでも良い。だって私、自分とちょっと違うからって、その人を変だと思わないもん。そうやって育てられたし。別にあんたのも、一つの個性だと思えばそれまでじゃん。それともあんたは、それを異常だと思うの?」

「う、う、う、ううん」

「なら別に変じゃないじゃん」

「あ、あ、あ、ありがとう」

「別に」


それから、彼女は相変わらず無口だったが、私にだけは多少口を開くことがあった。だから私もよく話した。彼女は私と同様、漫画やアニメ、ゲームが好きだったから。


 そしてその関係は、中学生に上がっても変わらなかった。


奏音(かのん)、高校どこ受けるの? 前から言ってるところ?」

「う、うん」

「すごいな〜。私も奏音と同じとこ行きたいけど、学力がな〜」

「合わせる、る、よ。私も(そら)と同じ、じ、とこ行きたいし」

「いや、それはやめて。奏音ずっと行きたかった学校でしょ。諦めさせるのは申し訳ないし。私が頑張るから」


奏音と同じ高校に行きたいというのは、ただ仲が良いからってのもあったが、いじめから守りたいという気持ちもあった。

私と行動を共にするようになったため、中学では奏音の吃音症は周囲にもバレていた。ほとんどの人は我関せずだが、一部、奏音にちょっかいを掛ける奴もいた。その度に影でしばいていたが、高校が別になるとそれもできなくなる。だから、私は頑張った。けど、現実は甘くなかった。


「奏音、ごめん」

「へ、平気だよ。空にばかり頼ってられないもん。それに、吃音症、少し、し、ましになってきてるから大丈夫」

「絶対、毎日電話するから」

「負担にならない程度、ど、にね」

「安心して、奏音との電話はむしろ休息だから」

「それは私も」


こうして、私達はそれぞれ別の高校に進学した。

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