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前回と同様、シャルト様に対する忠告、スカーレットとの昔話、そして
「セレス様は、身分差恋愛についてどうお考えでしょうか?」
余計な事は言わない。これが、私ができるパールを傷つけない方法だ。
「それは、物語の中のだけだよ。現実はそう上手くいかない。そろそろ時間だし帰ろうか」
「は、はい」
よし、なんとか回避した。
「セレス!」
ああ、まさかのこれもあるのか。お兄様達に捕まり、前回と全く同じ話をされた。
もし、もしパールが前回と同じく今日、私に告白するつもりだったら、お兄様達の話はまずい。
「あの、セレス様、私、素質があるというだけで聖女になれるのでしょうか?」
突き放せばいいだけ。なれないって否定すれば、おそらくパールがこの後紡ぐはずの言葉は変わる。でも、私はパールを傷つけられない。
未来を、潰せない。私のせいで、パールの確定した未来を壊すわけにはいかない。
「パールの努力次第だよ。僕は、応援してる」
「そうですよね。私、頑張ります。 ……あの、もし私が聖女になれましたら、セレス様の隣に寄り添う権利をいただけませんか?」
「それって……」
「分を弁えるべきだと分かっております。ですが、昨日のお二人を見て、確信してしまったのです。私は、セレス様が好きです」
昨日とは違う堂々とした顔。だからなのか、私は与える言葉を間違えてしまった。
「ごめん、僕は、その、無理なんだ」
言ってすぐ、誤りに気がついた。
「あ、ごめ、ちが、これはその──」
「大丈夫です。出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ありません」
パールはそう言って、一礼してすぐに寮の方へと走っていった。
「違う、違うんだよ」
私は、パールを傷つけたくなかった。パールには、笑っていてほしい。泣いてほしいわけじゃないの。私が、女だから……。
「ああ、違うよ。そうじゃない。私の馬鹿。ずっと前から、気づいていたくせに、都合の良い言い訳で自分を騙してきた罰じゃん」
どうして、今自覚してしまうのか。私は、パールが好きなんだ。
お願い、もう一度、今日になってください。
◇◆◇◆◇
また、同じ夢。気分は最悪だが、ほんの少しの希望が見える。今日を、繰り返しているはずだ。
いつもの日課を今回はやめ、パールの対策に時間を当てる。
やはりここは友達だと、そう言い切ろう。それが一番、傷つけなくて済む。この気持ちは、封印しよう。パールは、私ではなく僕が好きなんだから。
「応援するよ。だって、僕とパールは友達だからね」
「ありがとうございます」
「あ、時間ほんとにまずいや。急ごう」
「はい」
やった、上手くいった。上手くいった!
「それじゃあ、また明日」
「……あの、セレス様、勝手な事承知で申させてください。今はこのままでいいです。ですが、友人以上になりたいと私は思っております。私は、セレス様の事が好きです。お考え、いただけませんか?」
ああ、結局こうなるんだ。




