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私は一通り、スカーレットとの出会いを語り終えた。
「こんな感じで、会うたびに関わっていたら今みたいになったの」
「セレス様は昔とあまり変わっていらっしゃらないのですね」
パールはそう言って、クスクスと笑った。
「それは、どっちの意味で受け取れば良い?」
「良い意味で取っていただいてよろしいですよ。それと、もう一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「いいよ。どうしたの?」
「セレス様は、身分差恋愛についてどうお考えでしょうか? 例えば、貴族と平民同士の恋愛など」
娯楽小説かなんかだろう。あるある。私もこれはありえないでしょってツッコんだり、これはちょっといけそう? って思ったりするもん。だから意見交換ってしたくなるよね。
「別に良いと思うよ。あ、でも現実的に考えるなら難しいかもね。貴族は家も関わってくるから。
僕くらいじゃないかな。家とか気にしなくて良いって言われてるのは。いや、もしかしたら気にしなくて良いとは言ってるけど、平民は別かも。うーん、難しい」
「そうですか……」
パールはほんの少し残念そうにしていた。まさか、いつの間にかルート開拓されてた? 今のパールとスカーレットなら特に問題ないと思うけど、不安要素は極力減らしたい。そして何より、ホリゾン王子はともかくあいつらにだけは渡したくない。
「パール、もしかしてだけど、貴族で好きな人がいる?」
「え、いえ、その……」
この反応は前回と同じだ! つまりルート開拓されてる!
私はパールの肩を掴んで顔を近づける。
「誰! パールを誑かした不届き者は誰だ! クズ? バカ? あいつらなの⁉︎ あいつら絶対許さない! 半殺しにしてやる!」
「お、落ち着いてくださいセレス様! 違いますから!」
パールのその返事を聞いて、少し心が落ち着いた。
「そっか、良かった」
「そんなに安心したのですか?」
「もちろん。あいつらに渡すぐらいなら、僕がパールを幸せにしたい。というか生半可な男にパールをあげられな──」
「その言葉、本気ですか?」
パールは私の袖を引き、上目遣いでこちらを見る。
「へ……?」
「本当に、私を幸せにしたいと思ってくださってますか?」
パールの顔と声に対して変な汗が出てくる。息遣いが荒くなり、動機もこれまでにないくらい激しい。
「え、あ、あー、もう暗いから帰るね」
多少強引だが私はそのままパールの側を早歩きで去る。
たしかに惚れさせるって目的で男装したけど、ちょっと気になるなってくらいで留めておかせるつもりだった。
初めて間近で見るパールのあの目に、手と声の震え。
間違いない。私は、大罪を犯してしまった。
だって私は"女"だから。パールの気持ちには応えられない。
胸が痛いのも、動悸が激しいのも、罪悪感だ。
サボってました。ここから頑張って最終話までブーストかけます。




