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すっかり忘れてた。ここでクール公爵のアッシュ・グレイと主人公のイベントが起こるんだった。
迷子になっている主人公を助けるという、ベタベタな展開。
そしてスカーレットは、女っ気のないはずのアッシュ・グレイが主人公と教室に来たから、少し嫉妬心が芽生える。ここから主人公が目をつけられ始めるんだよね。隣で抑制してた私の身にもなってほしい。
と、思っていたら見つけた。
金髪紫目のロングストレート美少女。そして、このゲームの主人公、パール・ホワイトを。
なんて声かける? 前回と違って今は男。ねえ、は馴れ馴れしいというかチャラいよね。こんにちは? いや、貴族だからご機嫌よう? いやいや、相手は平民だし。
そんなこんなしてると、水色髪に黒目のアッシュ・グレイが向かってきている事に気づく。
もう考えてる暇はない。とにかく勢いでなんとかしよう!
私は一度深呼吸をして、主人公に近づいた。
「何か困っているようだけど、どうしたの?」
主人公は困り顔をこちらに向け、上目遣いをする。
うん、可愛い。やっぱり可愛い。こりゃ惚れるわ。一目惚れするわ。友達の時でも結構やばかったけど、これ惚れられるってもっとやばいんじゃないか? いや、今考える事じゃない。うん。
「あの、実は、道に迷ってしまって。この教室に行きたいのですが……」
主人公が紙を見せてきたタイミングで、アッシュ・グレイが私達を通り過ぎた。よしよし、上手くいった。
「そこ、僕と一緒の教室だ。君さえ良ければ一緒に行かない?」
「いいんですか?」
「うん。困ってる人は助けないと」
「ありがとうございます。助かります」
私達は教室に向かいながらお互いの事を話した。ま、私は知っている事ではあるけど。
「あの、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「ああ、名乗っていなかったね。セレス・コロール。セレスって呼んでくれていいよ」
「コロール侯爵家の御子息ですか?」
「そうだよ。君はなんて言うの?」
「パール・ホワイトです。お好きなように呼んでいただいて構いません」
「パール、良い名前だね。名は体を表すと言うけれど、本当に君と同じで可愛い名前だよ。それと確か、入学試験で学年一位の成績を納めてたよね?」
パールは俯き、暗い顔をした。
この顔は今まで見なかった。前回までの私が主人公に接触したのが、いくつかのイベントが終わった後だからか? だとしたら、攻略対象と接することで何か心変わりがあるのだろう。
「は、はい。すみません……」
「どうして謝るの? 学年一位を納める程努力したんでしょ? パールの努力の結晶なんだから、もっと誇りなよ。暗い顔よりも明るい笑顔の方が、僕は好きだよ」
私がそう言うと、何故かパールは顔を逸らした。
「あ、ありがとうございます」
変な事を言ってしまっただろうか?
確認することもできず、教室に着いた為、私達は別れた。
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