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 スカーレットの方を見ると、惨めそうな顔を、パールは申し訳なさそうな顔をしていた。

そして私はたぶん、厳しい顔をしている。


「スカーレット、悪いんだけどさ、あれのどこが良いの? 正直趣味悪いよ。婚約者がいるのに他の女の子と二人でお茶しようとしてた奴だよ」

「あの、私もすみません」

「別に良いわよ。平民が貴族の誘いを断れるはずないもの。それと私が彼を好きな理由なんて一つよ。寡黙で顔がいいから、様になるのよ。それと、嫌な顔せず私の話を聞いてくれたから」


たしかに、お兄ちゃんには劣るが顔は良い。それと、あの暴走機関車並みに口が周る時代のスカーレットの話を大人しく聞いていたのは、少し褒めてあげるべきところだと思う。


「僕よりも?」

「セレスって何気に自意識過剰よね」

「失礼な。自意識相当だよ。あんなにカッコいいお兄ちゃんと、可愛くて綺麗なお姉ちゃんのいも、弟だもん。なら僕もカッコかわいいのは当然でしょ。パールもそう思わない?」


パールに振るのは可哀想だと分かってるが、ここは証人が必要だ。


「セレス様の御兄姉は存じ上げませんが、セレス様は端麗な容姿をしていらっしゃいますよ」


そこで断言してくれるのはさすが主人公だ。


「ほらね」

「顔が悪いなんて一言も言ってないじゃない。ただセレスには無い魅力が彼にはあるのよ」


なんとなく、自分に言い聞かせているような気がする。


「スカーレットは辛くないの?」

「貴族の恋愛なんてこんなものよ。重視するのは身分。好きな人と恋愛をしたいのなら愛人とよ。私は作るつもりないけれど」

「へー」


身内でしか結婚しなかった貴族もいたしな〜。


「あなたも貴族でしょう」


スカーレットには呆れられた顔をされた。


「僕はお兄ちゃんとお姉ちゃんに、貴族のしがらみとか気にせずのびのび生きるように言われてるから。まあ、その結果がこれだけど」

「セレス様は私から見れば十分貴族らしいと思いますよ」

「そう思っていられるのは貴族の集まりに参加した事が無いからよ。丁度いいわ。今度あなたも招待してあげる。セレスの醜態を目に焼き付けるといいわ」

「ちょっとそれ酷い! てか集まりってそうそうないでしょ」


深い溜息をつかれた。それはそれは長い溜息を。


「セレス、あなたはもう少し貴族の話題に敏感になりなさい」


 ……? 本当に何があるのか覚えてない。


「来月、お兄様の誕生日パーティーよ」

「あー」


そういえば。そういうのはもうどうでもいいから一々覚えてないんだよね。てか、破滅フラグおる事でいっぱいいっぱいだったし。


「でも僕服ない」

「えっ、無いのですか?」


あ、まずった。そりゃ貴族がパーティーに行く服がないってありえないもんね。


「平民である彼女はともかく、セレスは買いなさい。あなたには私のを貸すわ」

「そんな、悪いですよ」

「いいのよ。セレスに嫌がらせをする為なのだから、協力しなさい」


さっきいじめの話をしたばっかりなのに。


「スカーレット、礼儀教えて……」

「シナバー様に頼みなさい。そろそろ帰るわよ。日が暮れてしまうわ」

「そうですね」

「パールを本当に連れてくの?」

「ええ」

「私は、その、良ろしいのでしたらぜひ行ってみたいです。セレス様は嫌ですか?」


あーずるい。ほーんとずるい。うん、嫌。なんて言えるわけないじゃん。嫌じゃないし。スカーレットの動機が嫌なだけだし。


「ううん。嫌なわけないよ」


パールはほっと胸を撫で下ろした。

女の子はずるいと、改めて思う。

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