表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/55

22

 日が暮れた頃、ようやくパールが目を覚ました。


「あ、おはようパール」

「おはようございます……⁉︎」


パールは勢いよく起き上がると、私に頭を下げた。


「すみません、私、いつ間にか寝てしまって」

「別に良いよ。普段寝れてないんでしょ」

「え、いえ、そんなことは……」

「よく言うわね。いつも部屋を片付けて夜遅くまで起きているのでしょう。それくらい素直に話しなさい」

「スカーレット王女様まで。あの時は、その、探し物を」

「物を探すだけで服を切り刻んだり、机をひっくり返したり、カーテンを切り裂いたりする必要があるのかしら? あなたもしかして、私達が頼りないとでも思っているんじゃないわよね。それとも遠慮? 平民風情が貴族がやることを心配するものじゃないわ。平民は大人しく貴族に従って、守られてれば良いのよ」


ほんと、どうして今までのスカーレットはこうなってくれなかったのかとつくづく思うよ。


「スカーレットはまた圧かけて……。

パール、僕達を巻き込みたくないって思うのは当然だと思う。でも、知ってしまった以上助けたいと思う。貴族だからって平民をいじめていい理由にはならないし、平民だからっていじめを受け入れて良い理由にもならない」

「セレス様、スカーレット王女様……」


パールは静かに涙を流す。


「よしよし、今までよく耐えたね。あとは僕達に任せて。スカーレット、ホリゾン王子様に相談できる? 私はお姉ちゃんにお願いする」

「もちろんよ。いくら王女でも下手に動いたら信用に関わるもの」

「うん。パール、もう少しだけ耐えてね」

「あの、本当にすみませ──」

「言う言葉が違うでしょう。こういう時はなんて言えば良いかぐらい、子どもでも分かるわよ」

「……そうでした。ありがとうございます、セレス様、スカーレット王女様」

「うん。それじゃあ今日は戻ろうか。どうする部屋? 自分の部屋に戻る?」

「私の部屋に泊めるからいいわよ」


スカーレットと一緒か……。今なら大丈夫だと思うけど、アッシュ様関連で暴走とかしないか心配。


「セレスが何を考えているのか、なんとなく分かるわ。私がそんなに愚かに見える?」


実際そうだったから否定できない。


◇◆◇◆◇


「パール、来てたのか」


 そう近づいてきたのは、噂のアッシュ様だった。

パールって、私達もいるのに気づいてない。私はともかく、スカーレットは悔しいだろうな。

パールもスカーレットを気にして戸惑っているし。


「今日休んでどうしたんだ?」

「あ、いえ、その」

「体調を崩した僕に付き合ってくれたんですよ。アッシュ・グレイ様」


私が前に出ると、少し顔が厳しくなった気がする。


「誰だ君は」

「コロール侯爵家次男、セレス・コロールです」

「コロール家か。君の兄と姉は優秀だとよく聞く。それでパール、カフェの件だが、明日は平気か?」


こいつ、本当に周りが見えてない。ゲームなら主人公視点だから全然良いけど、現実だと気分が悪い。


「あの、実はセレス様にも誘われていまして」


アッシュ・グレイは私を見る。明らかに不機嫌な顔をして。


「失礼だが、君はパールのなんなんだ?」

「友人です。それより、アッシュ様は婚約者がいるのに、他の女性とお茶なんて良いのですか?」

「君には関係ない事だ」

「関係あります。あなた、私の横が見えていないのですか? いえ、厳密に言えばパールしか見えていませんよね」


私がそう言ってようやく、この盲目貴族はスカーレットに気がついた。


「こんなところで何をしているんだ」


それはこっちのセリフだ!


「アッシュ様こそ、授業が終わってしばらく経ちますが、どうしてこちらに?」

「図書館帰りだ」

「そうですか」


パールの時と違って感情の無い瞳に冷たい声。

危害を加えてないにしても、スカーレットが可哀想だ。


「あの、アッシュ様」

「どうした?」

「その、四人で行くのはどうでしょうか?」

「パールはその方が良いのか?」

「その、はい。アッシュ様と二人は流石に緊張してしまいますから」

「そうか、では明日。楽しみにしている」


盲目貴族が去り、張り詰めた空気が緩くなった感じがする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ