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 私が煮え切らない返事ばかりするので、シャルト様は困った表情を見せ始めた。


「皆さん、ここは通り道ですのであまり集まらないようにお願いします。それと、セレスのお見合いの件、姉として断らせていただきます」


私と同じ灰色の髪を靡かせ、優しい黄色の瞳をシャルト様に向けたお姉ちゃんは、私の隣に立つと笑顔を崩さず、シャルト様にそう言い放った。


「もしセレスとお見合いをしたいのであれば、家を通してください。学園は、学ぶ場であり婚約者を探す場ではありません」

「それもそうですね。セレス様はここ最近多くの御令嬢に好まれていらっしゃるので、少々焦ってしまいました。申し訳ありません。ではまた」


シャルト様は一礼してこの場を退いていった。


「はあ……。お姉ちゃんありがとー! お姉ちゃんいなかったら危なかったよ〜」

「もお、気をつけてね。そもそも、家を通さないお見合い話は誰であろうと断らないと」

「うん〜。あまりの事ですっかり忘れてた」


私がお姉ちゃんに抱きついていると、馬鹿がお姉ちゃんと私の顔を覗き込んだ。


「お前、コロール家の息子だったのか?」

「何今さら。ずっと言ってたでしょ」

「お前の印象なんてチビしかねえよ」

「あんたは馬鹿だけど」

「いてっ」

「痛っ」


私はお姉ちゃんが持っていたノートで軽く叩かれた。特に痛くないけど、馬鹿につられて反射的に言ってしまった。


「王子様にそんな口聞いちゃダメでしょ」

「君はいつから外でも口が悪くなったんですか、アラン」


金髪に赤い目。間違いない、攻略対象の一人、ホリゾン・カラーだ。攻略対象で一番まともな思考をしている、頼りになる王子だ。まあ、そもそもが王子系王子だから当たり前か。


「何だよ兄貴。こいつの口が悪いんだからいいだろ」

「良くないです」

「セーレース、お姉ちゃん聞いてないな、そんな事。お姉ちゃん、セレスは良い子だって信じてたんだけど」


ひー! お姉ちゃんちょっとお怒りだよ。この馬鹿王子のせいでお姉ちゃんから説教される!


「セレスは良い子ですよ、カナリア様。たまに余計な事をしますが」


 私のピンチに颯爽と助け舟を出してくれたのは、いつも通りスカーレットだ。


「げっ、姉貴。いてっ!」

「アラン、お話は終わっていませんよ」


顔を真っ青にしている馬鹿は、実に滑稽で気分が良い。


「はあ。少なくとも、セレスの口調はいつも通りです。──アランと話す時だけ強い口調になるだけです。セレスとアランの出会いは良くないですから、苦手なんですよ」

「なるほど、理由は分かりました。でもダメだよ。お兄様が今のセレスの物言いされたら泣いちゃうよ」

「好きな人の前ではこうじゃないもん。それともお姉ちゃんは僕を信じられない? お姉ちゃん、僕は心が広く、多少の事は笑って流してくれて、頼りになるカッコいいお姉様が好きです。大好きです。そんな僕が、お姉様をがっかりさせると思いますか?」


お姉ちゃんは手で顔を覆い、長いため息をこぼした。


「お姉ちゃんがそういうのに弱いの知っててそれやってるならずるいよ」

「ごめんね。でも、お姉ちゃんが大好きなのは本当だよ」


お姉ちゃんは手を離すと、私の頬を軽く引っ張った。


「これくらいで勘弁してあげる。でも、少しは王子様の良いところを見つけてね。嫌いなままでいるよりは良いでしょう」

「お姉ちゃんが言うなら頑張る……」

「うん、頑張ってね」


 お姉ちゃんは私の頭を撫でると、そのまま教室に向かった。


「ああ、行っちゃった」

「セレスは本当にカナリア様の事好きよね」

「うん! 頼りになって優しい。一番理想の女性だよ」

「お兄さんは?」

「世界一カッコいいお兄ちゃんだよ。もちろん、一番理想の男性だよ」

「はあ、いいな。僕も妹と弟にそんな風に思って欲しいです」


ホリゾン王子が私の方を見ながらそう呟いた。

いや、この二人は思っていても口にしないだろうなっと思っていたが


「私はお兄様の事を尊敬してますよ」

「姉貴よりは好きだ」


と、馬鹿はともかくスカーレットが口にするとは思わなかった。

教室でどういう風の吹き回しかと聞けば


「言われても嬉しい事は、口にするべきだってあなたを見て思ったのよ」


と言われた。

少しでもいいなと思いましたら、ブクマ、評価、いいね、感想、レビューなどいただけると嬉しいです。


次話:明日

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