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「セレス様、ご機嫌麗しゅう。本日も素敵ですね」
「セレス様、こちら実家から送られてきたものですが、セレス様もぜひ」
「セレス様」
「セレス様」
ここ最近、何故かモテ期が来ている。いや、どうして来たかの心当たりはある。差し詰め、あの二人の騒動を止めた事と、婚約者のいるスカーレットとパールと一緒に泊まったからだろう。
前者は分かるが、なぜ後者でモテるのかと思われるだろう。そんなの簡単だ。男女で泊まる時は、婚約者同士が仲を深める時とただ単に仲が良い時。
かと言って、仲がいいってだけで二人で泊まるのはご法度だ。女二男一、男二女一で泊まる時は、一人の方は婚約者がいないという暗喩でもある。そういう意味不明な世界なんだ。ゲームにも実装されている意味不明なシステムなんだ。
「セレス様、どうされましたか?」
「ああ、いえ。すみません、贈り物は受け取れません。ですが、気持ちは受け取ります。わざわざありがとうございます」
「そうですか……」
はあ、何度見てもがっかりされると心にくるな〜。
「この色男、また何人悲しませる気か? 今の子なんて美人で巨乳だったじゃねーか」
「僕は可愛い派だ。あと、どちらかと言うとほどよい大きさが良いから、大きいのはちょっと」
「変なこだわりだな。遊び相手くらいにはしてやれよ。お前顔は良いんだからそれでも喜ぶぞ」
「僕はお前と違って純潔を捧げるのは心に決めた人だけにしてるの」
「姉貴みたいなこと言ってんな。初めてだとがっかりされるぞ。相手は経験済みだろうしっ」
こんな人通りの多いところで大胆な事を喋り出したので、叩くように口を押さえた。
「仮にも王子なんだからそんな口はやめろ」
「へーへー。ところで、お泊まりはどうだった? 勃ったか? 姉貴はともかくパールは中々お前の好みを押さえてるだろ。姉貴と違って性格も良いし、庇護欲が掻き立てられるし」
「お前、弁えろって言ったばっかだろ。あと、パールに手出したら半殺しにしてやる」
「おー怖っ。なんだお前、好きなのか?」
「違う、妹みたいなものだ」
「そうか。まあ、もし好きでも正妻にはするなよ。なんの功績もない平民を正妻にしたら碌なことにならねー。どうしても側におきたいなら側室にしろ」
「だから違うって。はあ、本当にしつこ──」
「セレス様、お初にお目にかかります。私、ペイト王国公爵家、シャルト・ルーズと申します」
声をかけられた方を見ると、黒髪に黄目の少女が柔和な笑顔を浮かべていた。
「はじめまして。セレス・コロールと申します。以後、お見知り置きを」
「こちらこそ。それでその、突然このような事を申し上げるのは大変不躾だと承知しておりますが、セレス様はご婚約なされていますか?」
ああ、またか。今回は直球か。
「いえ、中々縁には恵まれておらず」
「左様ですか。では、もしセレス様がよろしければ、私とお見合いをいたしませんか?」
「お、どうするんだチビ。受け入れるのか?」
受け入れられるわけないでしょうがこの馬鹿。でも、お見合いを断る理由も見つからない。さて、どうするか。
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次話:明日