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スカーレットは唖然とした私を放って、お風呂に向かってしまった。
「あ、パール」
服を着替えているところを見ると、私とスカーレットが言い争ってる間にお風呂に行っていたのだろう。
「あの、すみません、見るつもりはなかったんです」
パールは気まずそうにしている。これは確実に誤解されてるな。
「別にいいよ。一応言っておくけど、スカーレットがどこまでならいけるのかってことで、勝手にキスしてきただけだから。僕とはした内に入らないって、酷いよね」
「えーっと」
ああ、流石にパールは同調しにくいよね。あと少し、座りたそうにしてる。
「パール、おいで。立ってるのも疲れるでしょ。別に何もしないし、なんなら縛ってくれてもいいよ」
「そこまで警戒していませんよ」
「それはそれでちょっと心配。あまり人を信用しすぎちゃダメだよ」
「セレス様だけです」
おっと、それは結構嬉しい。なるほど、モテる女はこうするわけか。
そしてナチュラルに隣にくるし。あ、いい匂い。
「セレス様、ご自身の髪を嗅いでいますがどうされたのですか?」
「いや、パールがいい匂いだったから、どうして自分はそうじゃないんだろうって思って」
「自分の匂いはあまり気づかないものですよ。セレス様の髪もとてもいい匂いですから、そんな心配なさらないでください」
この女はつくづく人が喜ぶ事ばかり言うな。だからハーレム作るんだよ。
「あの、セレス様?」
「パール、間違ってもあの馬鹿王子に惚れないでよ」
「え、急にどうしたんですか?」
「あの馬鹿が惚れるのは時間の問題だから、パールまで惚れたらそこでお付き合いしちゃうじゃん!」
「セレス様は嫌ですか?」
「嫌。正直、パールが他の人に惚れてるのも嫌なのに、その相手がよりにもよってあの馬鹿だったら、僕はたぶんショックで死んじゃう」
あいつ嫌いだし。それとパールとくっつかれると、スカーレットが殺されて今までの事がまたぱあにもなるし。
ふと横を見ると、パールは照れたように、だけど嬉しそうに頬を緩ませた。
「なんだか、告白された気分です」
「……え⁉︎」
た、たしかに、告白みたいな文な気がしてきた。
「な、なんかごめん! そんなつもりじゃなかったんだけど──」
「分かってますよ。ですが、少し嬉しかったです」
……あれ? もしかしてこれOK? あれ? そうすれば後はスカーレットを守ることに尽力すれば、このループから抜けられるんじゃない?
「え、それってパールは僕と付き合っても良いってこと?」
「そう思いますか?」
あ、男が女の子の上目遣いに弱い気持ちがちょっと分かった気がする。ていうか、その返答ずるい!
「セレス」
顔を上に向けると、微妙な顔をしたスカーレットが立っていた。
「おかえりスカーレット」
「ちょっと来なさい」
スカーレットに連れられ、隣の部屋へと移った。
「あなた、弄ぶのはほどほどにしなさい。彼女が本気にしたらどうするのよ。
いい、彼女はセレスの事を男だと思っているけれど、あなた女なのよ。本気で付き合う気も、愛する気もないのなら本当にやめなさい。
もしあなたが本気だと言うのなら、彼女に正体を明かしてからにしなさい」
スカーレットがここまでいうのは、自分が愛を受けられない恋愛をしているからだろう。愛を受けられない苦しさを知っているからだろう。
「気をつけるよ。パールは可愛いし良い子だけど、そういう目で見た事はないから」
まあ、少し良いなとは思ってしまったけど。
「それと、もう平民って呼ばないんだね。どう? 少なくとも悪印象は無くなったでしょ」
「彼女は平民ほど愚かな考えは持っていないもの。少しだけ、認めてあげてもいいわ。それに」
「それに?」
「セレスが大事にしている人だもの、無下には出来ないわ」
誤解を招きそうな言い方だな〜と思ってしまう。あと、その考えを一つ前の世界で持ち込んで欲しかったよ。前は私の友人まで奪うのか! ってすごい勢いだったし。
「スカーレット」
「何よ」
「ありがとう。あと、スカーレットの事も大事に思ってるよ」
「知ってるわよ。私がそうなのだから」
はあ、本当、スカーレットには敵わないや。
◇◆◇◆◇
「…………」
朝起きて、隣にスカーレットとパールがいる事を確認し、昨夜の言動を思い返す。
うわーーーーーーー!!!! 怖い、深夜テンションが怖い!
顔を覆って恥ずかしがってたら、起きたスカーレットに何やってんのよって顔で見られた事は言うまでもない。
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明日の投稿は朝か夜のどちらかになります。