15
食事も終わり、何もすることがないので話していると、時計がもうすぐ日付を越す事を示していた。
「そろそろ寝ないといけないわね」
「じゃあ、僕は帰るね」
「何言ってるのよ、セレスも一緒よ」
どー見てもベッド二人だよね? 三人寝たらキツくない?
「床で寝ろと?」
「ベッドで寝ればいいじゃない。あなたそんなに寝相酷くないでしょう」
「え、いや! ソファで寝るよ!」
「いいから大人しく従いなさい!」
スカーレットに押し負けて、結局三人で寝る事になってしまった。
いいよねスカーレットは、真ん中だから落ちる心配ないじゃん。
コチコチと時計の動く音だけが部屋に響く。
私はゆっくり布団から出て、スカーレットの部屋と自分の部屋の鍵を手にして廊下に出る。
たとえ裏切り行為だとしても大いに結構! 私はお風呂に入って、服を着替えてさっぱりしたいんだ! 幸い、戦服は二着あるから変えてもバレない。
「はー、さっぱりした。二人には悪いけど、私は幸せだったよ」
ゆっくりとドアを開け、そっと布団に入ろうとすると、思いっきり手を掴まれた。
そして同時に明かりも点いた。
「おかえりセレス。一人さっぱりした気分はどう?」
「え、いや、ご、誤解だよ。トイレ行ってただけだよ」
無駄な言い訳だという事は分かっているけど、やってしまうんだよ。
「へー、そう」
私はスカーレットに引っ張られ、抱かれる形になる。鼻を首筋に当てられ、少しくすぐったい。
「トイレに行くだけで、とても良い匂いがするのね」
「い、いや、それは、その……。ん?」
そういえば、手を繋いでいるはずのスカーレットはこの体勢無理じゃない? そもそも明かりを点けるにはベッドから離れる必要があるはず。
私はそっとスカーレットと距離を取ると、そこにパールの手はない。
明かりのボタンの方を向くと、パールが苦笑いを浮かべていた。
「え、あれ? 手!」
「離れてるわよ」
「え、謝ったの⁉︎ だったら最初から謝ってればこんな目に合わなくて済んだのに!」
「何を勘違いしているのよ」
「実は、セレス様が剣を片付けている間に、お互い謝罪は済ませていたんです」
……は?
「え、どういう事スカーレット。ちょっと分かりやすく納得できるように説明して」
「あなたが余計な真似をするから、今後はこの手を使わせないようにしようと思ったのよ。もしすぐに謝るって知れば、あなたはまた同じ方法を取るでしょう。それじゃあ困るのよ」
うん、納得はできる、納得はできるけど!
「だからって酷いよ! 僕そのせいであの馬鹿王子に手出すなよって言われたんだよ! そのせいで変な想像少ししちゃったんだよ! どうしてくれるの!」
「へ、変な想像をしたのはあなたでしょう。……って! 私の事を変な想像の内にいれないでちょうだい!」
「変は変だよ!」
私がスカーレットの肩を揺らしながら訴えていると、パールが気まずそうに割って入ってきた。
「あの、セレス様、変な想像ってその、あれですか?」
「あ、安心して、パールはキス止まりだから」
「ちょっと待ちなさい。なら私はどこまで想像したのよ」
「馬鹿王子が姉貴まで想像しちまったじゃねえかって身震いしてたから、たぶん誘ってるところを想像したんだろ──」
喋っている途中で口を押さえられ、あろう事か馬乗りされ、胸ぐらを掴まれる。
「ちょっと! 私はそんなふしだらな女じゃないわよ!」
「あ、相手はわた、僕じゃないよ! 馬鹿王子だよ!」
「余計嫌よ! ならまだセレスの方が良いわ!」
「そんな事言われても困る!」
と、言うのがまたしばらく続き、お互い息切れを起こし始めた。
「はあ、もういいわ。こうなったら聞くわ。あなたは私とどこまでなら出来るの?」
……は? いやいや、もういいわの後のセリフじゃないでしょ。
「そ、そういうならスカーレットから教えてよ」
「そうね……」
スカーレットはしばらく考えた後、いきなり私を押し倒した。二度目だよこれ。
「……へ?」
変な声が漏れたすぐ後、唇に柔らかい感触がした。
「嫌じゃないわね。つまりキスまでね」
い、いやいやいやいや! ファーストキス! 私のファーストキス!
「スカーレット、奪った! ファーストキス奪った!」
「何よ、セレスとのキスは数に入らないわよ。それより、あなたはどうなの?」
「べ、別に嫌じゃなかったけど……」
「なら良いじゃない。私はお風呂に入ってくるわ。あなたも着替えてきなさい」
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次話:明日




