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寮母さんにも伝え、私達は夕食が運ばれてくるまで課題をして待つことにした。
「あら平民、汚い字ね。しかもまだそこまでしか出来ていないなんて、学年一位が聞いて呆れるわ」
スカーレットが少々小馬鹿にするように言ったので、軽く頭を小突いてやった。
「パール、もしかして右利き?」
「はい……。左手でも読める字は書けるのですが、これが限界で」
「じゃあ僕が書こうか? 人の字を真似るのは得意だから、書く事言ってくれたらいいよ。元はと言えば……二人の意地のせいだけど、僕も関係ないとは言い切れないから」
「セレスっていつも変な特技持ってるわよね。それと、こうなっているのはあなたのせいよ」
「ん、んん。パール、どうする?」
「えっと、よろしくお願いします」
「うん。パールはどこぞの誰かさんと違って優しいから癒されるよ」
どこぞの誰かさんに聞こえるよう嫌味ったらしく言ったら、案の定こっちを見た。今は魔法で手が離せないから怖いものなしなのだ! ぬははは!
全員課題も無事終わり、夕食もばっちりのタイミングで運ばれてきた。
「今日もありがとうございます」
三人分の夕食を受け取り、それぞれの目の前に置く。
「ここまで平民と貴族で同じにするなら、デザートもつけてあげればいいのに」
私とスカーレットにはフルーツの盛り合わせが添えられ、パールの方にはそれがない。
「構いませんよ。この学園に通うことができているのも、貴族の方が出資しているおかげですから」
「あら、分かってるじゃない。そんな簡単な事すらも分からない学のない平民が、差別だと騒いでいるけれど、そもそも私達貴族はそれなりの責任を背負っているのよ。
まあ、一人そんな重荷を背負わず、優秀な兄姉のおかげで悠々自適に暮らしている貴族もいるけれど」
「スカーレット、夕食の時くらい気分の良い話をしようね」
「あーら、私は気分が良いわよ。では、いただきます」
「「いただきます」」
本日のメニューはハンバーグにパンにスープ、あとデザートだ。
この世界、スイーツ以外に関しての食事は、前世と遜色ないくらい美味しいから好き。一ついうなら、和食が食べたいってところだ。
スイーツは材料自体はあるから、自分で作れるため問題はない。
「セレス、ちょっと手伝いなさい」
気分良く食事を堪能していると、スカーレットにそう呼ばれた。
「片手じゃ切れないから代わりに切りなさい」
「切りなさいじゃなくて切ってくださいでしょ。そんな上から目線だから友人ができないんだよ」
「貴族間の交流を避けて、友人が私以外にいない人には言われたくないわ」
「僕とパールは友人同士だよ。ね、パール」
「はい、セレス様がそう思ってくださるなら」
はあ、さすが主人公。気の強いところもあるけど、謙虚で優しい。そんな主人公だから、私からサポートしなきゃな。
「パール、食事手伝おうか? 利き手じゃないと不便でしょ」
「ですが、そうするとセレス様の食事が遅れてしまいます」
「別に気にしないで。僕熱いの苦手だから、冷めたくらいが丁度いい」
「そうだったの?」
スカーレットはちょっと黙ってなさい。
「痛っ! なんなのよ!」
「パール、どうする?」
「えっと、それではお願いします」
「うん」
切ったハンバーグとパンは自分で食べれるという事だったので、パールがスープを飲むタイミングで手伝う事になった。あと、遠慮されたけどデザートはほぼ押しつけに近い形で渡した。
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次話:明日