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第8話 暗殺者たちからの脱出

「主様……どうやら来たようズラ」

「ああ……。こんな夜更けに来るのはよい客ではないだろう」

「逃げ出す準備はできているズラ」

「そうだな」


 ケントは短くそう答えたが、それは簡単ではなさそうだ。

 もう客は扉の前まで来ている気配だ。

 部屋には窓が一つ。2階だから不用意に飛び降りるとケガをする。

 屋根づたいに逃げるかだろう。問題はベッドに座っているニケ。人質に取られるかもしれない。

 まあ、取られても魔法の鎧があるから傷つけられることはないだろうが。


(戦うしかないか……)


 ケントは机の上に用意してあった短銃を手に取る。弾は一発であるが至近距離なら確実に1人は仕留められる。


 ドンドン……。激しく木の扉が音を立てる。

 扉の外の客が強硬手段に出たようだ。造りが粗末な木の扉はすぐにバキバキと板が折れて穴が開き始めた。


 ケントは短銃を構える。吉音は部屋にあったモップを握る。

(そんなもので入ってくる客人を追い出せるわけがなかろう)

 ケントはそう思ったが、この緊迫した状況で吉音を茶化す言葉もさすがに出てこない。それでも、震えながらモップを構える吉音に何だか癒される。


「な、なんです!?」


 鎧姿のニケが反射的に両手を突き出してファイティングポーズを取った。ニケの構える方向にを見たケントは驚いた。窓に黒い影が複数映っていたのだ。


 ばりっ、がしゃん。


 ガラスがもろくも割れて、全身真っ黒の鎖帷子と黒仮面を付けた人間らしきものが侵入してきた。


「ち、ちくしょう!」


 まさか窓から入ってくるとは思わなくて焦るケント。木の扉も破壊されて伸びてきた手が解錠する。


「貴様らケンジントン公の暗殺者か!?」


 ケントは銃を構えて扉と窓から来た侵入者を威嚇する。窓から入ってきた2名は出くわしたニケに戸惑っているのか、一瞬だけたじろいだ。

 黒い姿の暗殺者たちは何も話さない。暗闇に白く光る刃身が明らかな殺意を示していた。


「いやああああ~」


 ニケが両手で窓から入ってきた侵入者を押した。

 ドーンと鈍い音がして押された侵入者は後ろの仲間も巻き込んで、再び窓の外へと飛んで行く。ありえないことに向かい側の家の屋根に2人とも頭から突き刺さる。


(マジかよ、ニケ!)


 魔法の鎧のパワーなのか、ニケ自身が強いのか分からないが完全に人間離れをしている。

 目の前で起きた光景に扉から入ってきた侵入者もたじろいだ。きっとニケのことは情報として入っていただろうが、こんな力があるとは思ってもみなかったのだろう。


 その隙をケントは見逃さなかった。手にした短銃の引き金を引く。銃弾は侵入者の体に命中。その侵入者は無言で倒れた。しかし、後の仲間はたじろぎもしない。冷酷な暗殺者たちである。


「このおおおおおっ!」


 ニケが入り口に向かって突進する。ひるんだ2人目の侵入者が短剣を突き立てるが、ニケの魔法の鎧はそれを砂糖菓子のごとく粉々に砕いた。

 そしてその勢いのまま体当たり。侵入者はその体当たりに吹き飛んで壁に激突。それを見た続く侵入者たちは固まった。

 その隙にケントと吉音が部屋にある家具を押して扉をふさぐ。


「吉音、ニケ、窓から逃げるのだ!」


 家具とベッドで入り口を固めたから、逃げる時間ができた。ケントは吉音とニケを窓の外から1階の屋根に移るよう命じる。


 屋根に伝いに裏へ回ると荷馬車が馬につながれている。オトワがそこで待っていた。

 ケントはいざという時のために、異変を感じたら逃げられるように荷馬車を用意していたのだ。

 オトワと吉音がケントたちとは違い、わざと1階の部屋を取っていたのもこういう時のためだ。


 荷馬車には藁が積まれ、そこへ屋根から飛び降りる。吉音、ニケ、そしてケント。荷台に降りるとケントはオトワに馬車を出すように命じた。

 馬車はまだ暗い裏道を静かに走る。

 だが、前方に1つの明かり現れた。

 待ち伏せである。


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