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第2話 ゲス王子の邪な予定

2回目の投稿です。


ブクマ・感想・評価よろしくお願いします。

 ケントはこの1か月の間、戦場で男ばかりの生活を送ってきた。

 だから今晩は久しぶりに美しい女を抱いて楽しもうと思っていた。

 顔に出していないつもりだったが、侍従として仕えている吉音には、ケントの本能に遠慮しない行動はお見通しである。


「1か月前の出陣前の夜はロイスのマリアーノ王女だったズラ。しばらくは、女と遊べないからと猿のようだったズラ」

 

 無垢な少女の口から、汚いものを見るような言葉が飛び出る。

 心なしか少女の目までゴミを見るような目だ。


「お前なあ、主人に向かって猿とはなんだ!」


 語気を強めるケント。口が悪いにしてもほどがあるから、この辺でお灸を据えなければと思った。


「それは言い過ぎたでズラ。猿ではなくて絶倫王子ズラ」


 そう吉音は謝りつつも、猿より上の称号を贈る。

 その言葉には皮肉が込められているが、ケントは気づかず一瞬だけよい気持ちになった。


「絶倫王子か……それならば……って、褒めているのか、馬鹿にしているのか!」

「褒めているでズラ」

「ならばよい」

「ちょろいズラ」


 小さな声でそうつぶやく吉音。

 ロイス王国はリーグラード王国の南東に位置する小国。

 マリアーノ王女はケントの婚約者候補として送り込まれてきた言わば人質だ。

 

 金髪巻き毛、青い目の美しい姫だ。特徴的なのはその胸。優にHカップはあるかという豊潤なものをもっている。年齢はケントと同じ18歳でかなり食べごろのお姫様だ。

 

 ロイス王国は次期国王をケントと見込んで、美しい姫を貢いできたのだ。

 もちろん、ケントは遠慮することなく、美味しくいただいている。


「それで城にお呼びするのはマリアーノ王女様でよろしいでズラ?」

「どうだろうな。マリアーノいう気分じゃない。どちらかと言えば、今日はアイリーンだな」


 戦場帰りで疲れたケントは、豪華な食事よりはあっさりとした食事がしたいと考えた。

 アイリーンはこの国の副宰相の娘。ディップ侯爵の一人娘だ。ケントと同い年で幼馴染。

 

 彼女とは深い関係になってもう2年経っている。

 マリアーノ姫がケントと深い仲となった今も関係は続いている。

 ケントとしては、アイリーンも正室候補で大事にしたい女であると思っている。今やケントの正室ということは、王妃と同義語である。

 

アイリーンはマリアーノ王女とは真逆の黒く長い髪に燃えるようなルビー色の瞳をもつ姫。

 勝気だがケントのことを昔から慕っている可愛い幼馴染だ。

 そして体つきも豊満なマリアーノとは違って細身である。胸も慎ましい。

 

 ケントの好みは広いのだ。ボリューミーな体も好きだが、ないないのスレンダー体形も大好きなのだ。

 

 しかもアイリーンの体の感度は敏感でケントが抱いて奏でる旋律は、空気に染み渡る魅惑のフルートの音色のようであった。

 

 さらにアイリーンは公爵令嬢という王妃にもなれる身分だ。

 一夜限りの慰み者ではなく、ケントが国王になった暁には、マリアーノかアイリーンのどちらかが王妃。そして片方は側室にしようとケントは思っていた。

 

 ケントにはハーレム構想がある。

 側室は一人だけじゃない。

 他の貴族の姫君の中に何人か候補がいるし、実際に現在も定期的に付き合っている者が数人いる。

 今後も王宮に仕える書記官や軍の士官、召使にいたるまで美しい女は全部いただくつもりのゲス王子なのだ。


「本当に主様あるじさまは鬼畜ズラ。そのうち、女に殺されるでズラ」


 そんな悪口を吉音は言う。吉音の言うことはまともだが、王族と言う特権階級をもつケントには響かない。それどころか。ケントは吉音の小さな体をじろじろと見て皮肉の倍返しする。


「心配するな。お前だけは絶対に手を付けない」

「キモいことを言うなでズラ」


 さも嫌そうにこの侍従は返した。

 王族のケントがこの異種族狐族の少女に手を出すはずがない。

 この世界には様々な人種がいるが異人種同士の混血は珍しい。

 

 ほとんど、同じ種族で結婚するからだ。それに異人種同士では子どもはできにくいと言われているのだ。

 リーグラード王国の時期国王であるケントが、貴重な種を実らない畑にまくはずがない。

 ゲス王子らしい理由である。

 

 ケントはそんな下世話な話を侍従と話し、王宮の自室で礼服に着替えると広間で開かれる戦勝パーティへと向かう。

 一緒に戦ったカイゼル将軍と共に戦勝を祝ってもらうのだ。



 広間には大勢の貴族に軍人が招かれていた。カイゼル将軍とケントが紹介されるとみんな話を止めて拍手を送る。称賛の嵐だ。


「さすがケント王子。戦の天才だ」

「王子の武勇は敵国に届きましたぞ。もう二度と侵攻してくることはないでしょう」

「勇者ケントを祝って、乾杯!」


 ケント王子は称賛されてにこやかにシャンパンを飲む。


(うめえ……。まさに俺を称えるための酒だ)


 ちなみにこの異世界の成人年齢は15歳。酒は20歳になってからという法律はないが、アルコールは成長期の脳に悪影響があるからケント王子は控えている。


 このシャンパンをケントは酒と言っているが、実体はノン・アルコールのブドウジュースもどきである。


 ケントはそんな飲み物をうまそうに飲み干しながら、横目で会場を確認する。多くの招かれた客の中に長兄のメイソン王子、次兄のイライジャ王子を見つけた。


 メイソンはリーグラード陸軍少将の軍服を着ている。ケントは現在准将だが、今回の手柄で長兄と同じ少将になるだろう。兄に追いつくわけだ。


 メイソンはケントの方を見て複雑な表情をしていた。

 ケントがこれほど優秀でなければ、妾腹とは言え一番年長者であるメイソンが後継者候補であってもおかしくはなかった。

 母親の身分は大きな要素ではあるが、長幼の順番も重んじられる。そうなると比べられるのは、やはり本人の能力である。


(くくく……。兄上、残念ですな。優秀な弟がいたせいで……)


 メイソンは身長190cmもあるという大男。

 そして鍛えられた筋肉は軍服の上からでも分かる。

 角刈りの髪型に意思の強そうな眉毛、そして荒鷲を思わせる目つき。見ただけで軍人と分かる体型である。


 性格も荒々しく、戦争ではいつも先陣を切る勇敢さ。前線の兵士たちからの人気は高い。重装突撃騎兵出身だけあって、勇猛さは折り紙付きである。


 ただ、先ほど説明したとおり残念ながら頭が弱かった。


「脳筋」と陰であだ名され、およそ政治向きの話は苦手で国内政治の調整や外交の駆け引きを理解できない。


 また、軍隊生活主体の生活をしていたので、貴族同士の優雅な会話や教養もないので、華やかな宮廷では浮いた存在。 

 当然、貴族の姫たちからは、「ダサい王子」「武骨で泥臭いわ」と嫌われている。


 隣の次兄、イライジャはメイソンと正反対。ほっそりとした体は弱弱しく病的でさせある。いつも胃腸が悪く顔色も青白い。

 体が弱いから軍には入らず、学者としての学問の道に進んでいる。専攻は植物で王宮の庭で花や作物を育てている。


 この兄は貴族の娘を母にもつ高貴な血筋であるが、この気弱な性格で貴族たちからは後継者には向いていないと評価されている。

 いかにも病弱で弱弱しい体に貴族令嬢たちも敬遠気味である。


(兄貴たちは問題外だ。次期国王は俺以外にない)


 ケントはほくそ笑む。この世は自分中心に回っていると考えている。


(それにしても……)


 今日はアルトリア帝国を破り、講話条約が成立した記念すべき祝勝会である。不思議なことに国王である父が出席すべきところであるのに、未だにお出ましの報告がされない。


 父とはアルトリアとの戦いに出陣する際に会ったきりである。その時は顔色が悪く、少し体調を崩しているようであった。

 その後、病状は回復したと聞いているが、ケントはその間、ずっと戦場にいたので直接会ってはいなかった。


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