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安静中



挿絵(By みてみん)



 7月10日、土曜日。

 急だったが、退院日である。朝、テレビの占いで、かに座が1位だった。昨夜は本を読み切れて、朝食までの時間で感想を書いた。母が11時くらいに来る予定なので、最後の病院食メニュー(スイカ2回目!)を食べて、部屋の写真を撮ったりして、もう思い残す事はないかと、座ってボーッとして過ごした。

 担当の看護師さんにこれまでの御礼を言い、スタッフステーション前を通り、それだけで出入口の外で待つ母のもとへ。病室では、隣に私と同じく抜糸していたおばあちゃんが居たな……私は入院生活12日間だったけれど、来週中かなと思っていたら昨夜、急に決まって今日に退院。別れは、拍子抜けするくらいにアッサリだった。

 友達からメールの返信が来ていて、また家に寄るよとなった。当分は家に居るだろう、ウォーキングでもしないとだな、目標が、まずそれだ。家へと帰るまで車の中で、母に話す事が山の如しとあって、入院生活の事を話しまくっていた。母は身の回りのアレコレをしてくれ、見た目には白髪頭の母と若い私が並ぶとどちらが病人かてんで分からない、入院手続きで車いすを持ってきてくれた看護師さんが、そんな事を言っていた。ともかく母よ、ありがとう、心配かけてごめんなさい。階段の上り下りができるかなと不安だったが、それはできた。こうやってひとつずつ、慣らしていくしかない体なのだった。

 しかし、内出血のせいで、右足が見た目に広く青あざで酷い事になっている。消えるのに1ヶ月はかかると聞いたが、治りは遅い方ではないかなと思うので、早く消えてほしい。

 N美ちゃんへの手紙がまだ出せていなかったので書いてしまって、明日には出そう。ヤフオク!も止めたままなので再開しようかな。それより、イベントのキャンセルや告知が先だ、ああそうだ本を借りに行って障害者向けのでも探してくるか、申請の手続きも行かないと……と、頭の中がどんどんと予定で詰まってきたので、どこかにメモしておかないとパニックだった。

 疲れたろうし、今晩はよく寝れます様に。みーんな、ありがとう。


 7月12日、月曜日。

 家に帰った途端、体重が2キロ減った、何故だろうか。朝は父が家に寄り、医療費の話などを込み、申請手続きをしに行かなければならなくて、市役所に相談をしに行った。買い物にも久しぶりに行ったけれど、午後からは保険屋のおばちゃんも来て話し込み、明日は愛田病院にも行くし、結局、ちっとも安静ってしてないなあと思った。


 7月13日、火曜日。

 朝は母と愛田病院へ行った。糖尿病の母もだが、私も元々高血圧や肥満で通院していたので、薬をもらいに。H先生には入院した以降を知らないので手術してペースメーカーを心臓に植え込んだ事を話すと驚いていた。後で母に「娘さん大変でしたね」と言っていたらしい。ええ、まあ……。

 昼に、次男である兄が帰ってきた。週に1回は洗濯物を持って帰ってくるのだが、私の話になり、お金の話になると私も富裕層だなと言われた。私(名前)も、と。障害者になると国や市から制度で自己負担額が減ったり或いは無料にもなったりして生活ができる様に保障される。非常にありがたく生活ができるのだ。私も富裕層だと言われて深く傷ついた。帰った後に泣き出して、母は、(次男)も昔から病気で苦労して、不正とかの悪い奴らの事を言っただけで、などと兄をかばう様な事ばかりを言う、それが余計に腹が立った。

 私はなりたくて障害者になったわけではないし、本人を前にして言う事ではないだろう。2人とも大嫌いと思った。母は明日、新型コロナワクチンの予防接種2回目を受けるので、母を不調には今はさせたくなかった。しかし兄は父の悪口をいつも言うし、お金の事ばかりで本当に嫌だった。内容がどうあれ、もはや意地悪にしか聞こえない。そして絶対に許さない。

 母は買い物に行き、しばらくひとりで泣いていたが何とかメンタルを持ちこたえ、本を読んで過ごしていて、夜ご飯の時間になったら、近所に住んでいる長男である兄が帰って来た。

 入院中は自分の誕生日だったが、それもあってか、滅多にない事だが、プレゼントをくれた。ハムスターのティッシュカバーだった。ハムスター5匹が並んでいる。昔、とっとこハム太郎にハマっていたが(微妙にリアルなハムスターよりも二次元の方が好みではある)、丸くて可愛い。私よりも兄の方が好きでないのかとツッコミつつ、さっきまでグッサリとやられた後なものだから、また泣き出しそうなのを堪えた。

 今日は、メンタルの浮き沈みが激しい。嬉しかった、ありがとう。

 入院で家に帰れずそのままで放っておかれたバームクーヘンがあった。先月に買った、働いている先で作っているお菓子で、やっと食べられた。外側の砂糖が甘いが、生地が美味しい。バームクーヘンは作っている所を窓越しに見る機会があるので、〇〇さん達が作ったんだろうなあと想像しながら美味しく食べる。

 仕事に関しては、会社にとって、受け入れて続けていけるものか。先が分からなくて嫌だ、本当に、悩むのが嫌だった。




挿絵(By みてみん)





 梅雨明けし、暑い日が始まっていた。

 仕事は、会社から連絡がきて相談の上、続けていける事となって、安心した。

 体の方は、まだ普通には歩けてないけれど、徐々に慣らしていく。しょっちゅうなっていた息切れはもう無いし、何よりペースメーカーのおかげで安心できてよかった。かといって心臓病には怖くて重い病気がまだまだあるから、決して油断せず、規則正しい生活を守る事は絶対である。

 心房細動の本などを読んでいく。難しかったが、心臓病にいいのはポリアミンだったと書いてあった。多く含まれているのは貝類、キノコ類、大豆、納豆、小豆など。よく地中海料理がいいと聞くが、その中でも効いていたのが意外や意外、ポリアミンだったそうだ。きっと海鮮、和食が健康にいいのは何か、分かる。



 7月18日、日曜日。

 姉からの不在通知が受取箱に入っていた。なので届けてもらい、開けたら、ユニクロのルームパンツと、姪っ子達からの箱が入っていた。




挿絵(By みてみん)




 折り紙で作った動物とかハート、お手紙が入っていた。お誕生日おめでとう、入院中に贈れなかったから、よかったらもらってねと、そんな意味で書いていた。心臓を撃ち抜かれた想いだった。

 一生大事にしようと誓う。


 8月になって、夏休みに姉達が来たら、キッチンカーで来るケーキ屋さんに行って、一緒にお菓子を食べたいな。体のためにあんまり食べられないけれど、まあいいか。

 毎日、健康を気にしながら生活してて、退院してから手首に白い粉が出ると悩んでみたり(垢か?)、

 傷口の傍に、また、あざができてしまって「安静」と言う言葉を胸に1日寝て過ごしてみたり、

 便秘したり、暑くてバテたり、生活ってこんなにも大変だったっけって思うけれど。

 ペースメーカーのぺー子ちゃんは、規則正しく私の心臓を守ってくれています。

 かつて友達が言っていた言葉は、正確には忘れたけれど、以下、後で心にずっと残る事になりました。いずれ電池が切れて、ペースメーカーは植え込んだら取り出せなくてそのままになってしまい、新しく植え込んでいくのだけれども。医療技術や機器が進化、開発されて電池がもっと長持ちするか、永久的に持つようになったら、それはいいね。

 違う治療が、新しくできるかもしれない、未来なら。友達は、未来なら――と。

 読んでいた本の中に、心臓か肺からのエネルギーに変えて自家発電式になる電池ができるかお試し中であると書いてあった。イメージはできる。そんな事できたらいいな、と感動する。

 生きていく私に言えるのは、ひとつだけなのかもしれない。

 みんな、ありがとう。





挿絵(By みてみん)






 ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

 人間は必ず、心臓が止まって死ぬよなあと気がついた。脳死が死かは、置いといて。

 胸に手をおいて寝ようとしても、手が届かないという。

 エッセイはいつか書きたいなとは思っていたので、機会があって良かったです。

 生きていく事を、頑張りましょう。


 またエッセイを書くかもしれません。

 ではでは。




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― 新着の感想 ―
[良い点] おはようございます。 無事手術も終わり、そして退院おめでとうございます。 大変な中、ユーモアを忘れず過ごされ、書かれた文章にあゆみかん様の強さを感じました。 読ませていただき、本当に…
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