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心臓病のはじまり


 日記をつけていたのを、ほぼそのまま写したもの。

 いやあ、大変だった。この果報者め。

 このエッセイが誰の、何の役に立つのかは疑問です。




挿絵(By みてみん)



 2021年6月29日。私はこの日をきっと忘れない。

 すべては車いすに乗せられた時から始まった。母も私も唖然としていた。



挿絵(By みてみん)



 ――不整脈。心臓病の一種である。

 心臓は規則正しい電気的刺激とその伝導で働いているけれど、この刺激が乱れたり断線したりして、心臓が不規則に収縮する病気で、無症状の事もあるらしい。

 私は幸運だった。

 初めて脈拍が少ないと気がついたのは2月末だった。それまで肥満や高血圧で近所の愛田病院(仮称)の内科に通院していたのだけれど、日頃から朝と寝る前に血圧を測っていたのだ。その血圧計では一緒に脈拍数も測れるので、早く気がつく事ができたというわけである。次に症状が出たのは、とんで4月。血圧はともかく、脈が少ないのが気になり出してきていた。

 検診に来院した際、医者に相談したら循環器内科の方へと回してくれた。それが4月13日で、調べる為に心電図をとる事になった。さらに一日じゅう、心電図をとって詳しく調べる事になって、体にホルター心電図をつけて帰る事となった。

 ホルターは小型で時計表示があり、そこから出た線が何本か心臓まわりにテープでくっつけてあるのだけれど、これじゃまるで時限爆弾でも仕掛けられたみたいだな、と思った。翌日にホルターは返しに行ったけれど、結果は3日後。もっと詳しく調べるならば、大きな病院に行くかもと言われて、はぁそうなんですかと相槌を打った。胸痛はこれまでにもあったなーと、けれど一時的なものだと思っていた。




挿絵(By みてみん)



 4月16日、金曜日。

 結果を聞きにと愛田病院へ。説明してもらった通り心臓に、発する電気信号に対し反応が無い状態が時々ある……要するに、これが不整脈。より精密な検査を要するとの事で、大きな大学付属病院に予約をとって下さるがその返信に時間がかかるからという事で、明日にまた来院する。自力で行けるかなとか、自分のこれからの事とか、考え出したら悲しくなってしまって、途中に発送で寄った郵便局の駐車場で、しばらく泣いた。

 これは何の涙だったろうか……悲しいのか、悔しいのか、情けないのか、周りに迷惑かけるかもしれないからだろうか。忍び寄ってきている事に不安で、落ち着いて家に帰ってきてからはあまり何もやる気が無く。ただ時間を過ごしている、空気の様に。

 大きな病院――S医科大学病院。アクセスを調べる為にホームページを覗いた。すごい事がいっぱいに書かれていて圧倒されそうになりつつも、気にかかりそうな事に着目する。足が不自由になってきてもマズイのか……そうだったのか……。重くなれば切断か、怖い。最近だが、仕事で足の裏が痛いぞと靴が合わないせいかと底敷きひいたり、かかとや爪先に詰め物してみたりしていたっけ。

 手術ってどれくらい費用がかかるんだろうなとも思ったが、そこまでにしてパソコンを閉じた。


 4月17日、土曜日。

 雨が本降りだった。愛田病院へ行き、S医科大学病院に来院の予約を入れてもらう(返信をもらう)。27日なら行けるかなあと、予約票を受け取った。


 4月20日、火曜日。

 暑かった。朝は愛田病院へ。通院でもらっていた薬がきれるので来院する。帰宅してからしばらくして、愛田病院から電話がかかってきた。どうやらS医科大学病院から来てないと連絡があったみたいで。予約票を見直したら、予約日が20日だった。ガビーン……。完全に次週だと思っていた。

 どこでどう間違えたのか(日を決める時に看護師さんと相談で27日と言っていたのが原因か)、沈没した。謝るしかなかった。予約を取り直して、27日に来院となった。とほほである。もし今日だったら母に車で送ってもらえたのにと残念無念だった。27日は母は行けず、自力で行くしかない。


 4月25日、日曜日。

 朝と夜。また脈が40くらいだった。昨夜寝る時、気分が悪かったなと思い出した。テレビで聖火ランナーを眺めていて、母が次男である兄の事を語った。昔、小さかった頃に扁桃腺を切る手術をしたって聞いた事があった。喘息を持っていた。その聖火ランナーは病気を持っていたのだが、同じ病気にかかっていたらしい。懐かしそうに話す母、そして長男と姉である長女、兄妹の分を全部次男である兄が引き受けてくれたんだと言った。母には心配をかけているけれど……。

 不整脈と聞いて悲しくて落ち込んだけれど、今はちょっと元気が出てきて毎日を過ごしている。早く明後日になれと待ち望んでいる。130歳まで死なないぞ俺は、と。


 4月27日、火曜日。

 緊張で、頭の中が一杯だ。早め早め、と家を出て、電車とバスを使ってS医科大学病院へ。さ迷いながらも辿り着く。そして受付を済まし、検査がまず3つ。採血、心電図、レントゲンだ。担当になったO山先生は、優しそうでよかった、先週、堂々とすっぽかしたというのに……。忙しそうだった。

 申し訳なさとで上手く話せた自信が無いが、何とか話を頭に入れた。検査を沢山としてみて、総合的にどうするかを検討する……心臓に足の付け根から管みたいなのを入れて焼却をするカテーテルっていう手術とか、説明される。考えたくないけれど耐える。嫌な事ばっかりが浮かんでくる。そして今日から一日ずっと、前につけた様なホルター心電図をつけて帰る事となった。前のは防水だが、これはそうではないらしい、つまり風呂無しか。明日も返しに来ないといけないが、母に送ってもらえるなと同時に、会社に言ってお休み頂かねばと思い、その足で会社へと向かった。向かう途中、やはり動揺してたのか、バスが終点の駅に着いて待機所みたいな所に移動しても私は気がつかずにボケッとしていた。運転手さんも気がついてくれなかった、ぐすん。

 会社に行って、不整脈の事を相談して伝えた。重い空気がのしかかる。

 会社というが、働いているのはお菓子を作る工場だ。機械で作ったり手で作ったり包装したり、終わったら鉄板を洗ったり床とか掃除したり。新型コロナのせいがあって生産に波があるが、基本、みんないい人達ばかりだ。近所だし勤めてもうすぐで4年になるのかなと。仕事が好きだし、病気のせいで辞めたくない。自分の手術の事よりも、仕事を辞める事の方が、嫌で嫌で、辛かった。


「ハッピーバースデー!! じゃなかったっけ?(笑)おめでとう。げんきー?」

「今日やわぁ! 私もみんなも元気にしてるよぉ。ちょいと風邪気味だけど。そっちは?」

「夏ぽくなってきたなぁ~。元気よぉー。お大事にやで! まったなー」

「ありがとう。またお話ししよね。おやすみぃ」


 遠くに住んでいる高校の同級生のN美に、誕生日のお祝いメールを送った。4月27日なので、「し・に・な」と覚えてくれと言われた事が、いまだ忘れられていない。この時まだ、病気の事は言わなかった。


 4月28日、水曜日。

 来院予定時間よりも1時間以上に早く着いてしまい、適当に時間をつぶす。ホルターを外して、次回は5月10日の来院予定だ。検査をして、ついに手術なのかな……と、時々感じる胸のしめつけ、気のせいなのか、そうでもないのか。明日も無事に過ごせます様にと、祈った。


 5月6日、木曜日。

 朝起きたら、違和感があった。血圧を測れば、脈拍数が44。2回測ってもだ。仕事に行くのに車に乗る時にも、軽くめまい。外に出て動いたせいだろうか。着いてからも、歩きながら息切れしそうだった。急がずに、ゆっくりと階段を上り、幸いにも何とも無かった。どうして今日はこんなのなんだろうか、急にやってきて。仕事の日なのに、昨日までは安定していたのに!

 憤慨だったが、工場では環境整備といって、お掃除の時間だった。社内販売でハムたまごクロワッサンを買って家で美味しく食べた。現場ではボールペンが無くなったと大騒ぎ。犯人がグループ長補佐で、みんなから反省文をレポートに書けと怒られて、笑いあった。

 ほんと、楽しいねここは。退屈しない。今日を楽しく過ごせて、ありがとう。

 夜の血圧が低かった。明日は、大丈夫なのだろうか……。


 5月7日、金曜日。

 仕事連日だった。今日も外出たら息切れしそうで、苦しい。脈拍も40台だ、……だよな。でも今日は、ずっと一日が辛かった。夕方にはマシにはなってきていたが、立ちっぱなしで作業していると、足が辛くなってくる。18時上がりで辺りが静かになってくる。ひたすら、ゼリーを包んでいた。


 5月10日、月曜日。

 S医科大学病院へ行った。心電図、超音波、トレッドミル検査を受けた。トレッドミル検査とは、心電図と血圧計を着けて、動くベルトの上を限界まで歩いたり走ったりする運動の検査である。これが私は5分と持たず、「せ、先生、止めてくださ~い……」と、苦しく泣きそうになってやめたという。

 かなりのヘタレっぷりに恥ながらも、後の先生の説明で分かる事だが、運動の検査が終わって、次の診察時間には余裕で間に合ったのだが、一向に呼ばれないので受付で聞いてみると、どうやら受付をしないといけなかったそうで、遅くはなったが診察をした。

 先生の話によると、私は不整脈の3つのパターンが考えられて、ペースメーカーはまだ先に置いておくとして、心臓に悪さしているのをやっつけたいわけで、カテーテルの手術をする前に検査をしておこうと、CT検査を6月8日にする事になった、という。それには造影剤を注射して使い、その前には心電図検査と採血をする。そして、検査入院をするなら次週――15から18日になるだろう、と予定を言われた。

 仕事の日、シフトを調整しないとだな。

 手術、ほんまにするのかな。

 診察を終えて帰る頃には、もう17時をまわっていた。


 5月11日、火曜日。

 愛田病院、内科の方で、いつものお薬をもらいに行った。かかりつけのH先生に、精密な検査をいっぱい受けてる最中です~と伝えた。あまり細かい事は伝えていない。


 5月12日、水曜日。

 昼から、図書館へ行く。不整脈に関する本を6冊ほど借りてくる。

 夕方に買い物に行ったが、間違って他人の車のドアを開けてしまう。病気のせいだろうか(多分違う)。

 仕事が明日は休業になった。もう今月は早くも出勤日が無い、残り半月余りをどう過ごそうかと悩むが、正直ちょっとホッとしている、病気のせいで。


 5月17日、月曜日。

 朝も夜も、脈拍数が30台だった。昨日の晩もそれぐらいだった。階段を上ったりすると立ちくらみがする。朝は蒸し暑かったし、汗をかいていた。生理2日目で、こうなると来月の仕事が大丈夫かなと心配になってくる。


 5月21日、金曜日。

 体が安定しなかった。今週はずっと脈拍が少ないままで、上がってもせいぜい50ちょっと。体が思うままに動かせず、そのせいか体重が2キロ増えた、悲しい。


 5月25日、火曜日。

 昨日までは脈拍数40台が続き、体温が朝は低めで、血圧が高いというのが気になった。軽く立ちくらみがあり、頭痛もした。トイレをよく行くし、朝から眠かった。それが昨日で、今日は調子がまあまあ良かった。

 愛田病院に行き、ここ一週間の不調を相談してみると、循環器内科に回され、血圧が朝高めだから降圧薬を眠る前に飲んでみる事になった。病院で測った血圧が160で、2~3日前からだ。とほほだ。

 夜、アムロジピンを飲む。アムロいきます! と声を出した。


 この頃から、本で心臓病にカフェインは良くないと知り、カフェインを断つ事にした。


 6月8日、火曜日。

 S医科大学病院へ行く。心電図検査と採血を受け、診察の予定が後回しになったので先にCT検査を受けた。心電図は着いてからすぐ少々いつもより力が抜けず時間がかかったが、採血は腕の縛りが緩かったせいか血管が見つけられず別の人に交代して終わったという。

 CT検査は投影剤を注射され、注入された時は体の中にぬるいものが入っていくのを感じた。貴重な体験だったと思った。

 診察だが、どうやら肝臓あたりで異常値が見つかったらしい。炎症ができてる状態らしく、これを治さないとと言われた。おそらく原因で疑わしいのは新しく飲み始めたアムロジピン。薬を一旦やめて、愛田病院でエコー検査してきてと言われた、ごーん……。

 この日の帰り、買い物行ったら100円ケーキのバイキングをしていた。何で今日なのと心で泣いた。


 6月15日、火曜日。

 愛田病院へ行き顛末を話すと、検査をする事になって、今日は採血のみ。結果は来週になるし、エコー検査は明日にする事となった。心臓の次は肝臓かぁ……と溜息が出る。夜ご飯は消化によいものを21時までに食べ、明日は朝食抜きで排尿も我慢せよとの事。夜ご飯はチキンカツと天ぷらだった。母ちゃん……。


 6月16日、水曜日。

 朝のトイレを我慢するのが無理で1回だけ行った。愛田病院に来院し、内臓エコー検査をした。どうやらポリープができてるという事で、すぐに治療って事でもないらしく、でもサポートはした方がいいと。

 来週に採血の結果を聞きにまた来院するので、そこで決着がつく。ポリープかぁ、とゲンナリした。

 マスクを作っていると、胸痛がするのであまり長時間できなくなってきた。


 6月19日、土曜日。

 また朝の薬を飲み忘れた。忘れ防止に箱を作って入れてテーブルの上に置いた。雨のせいか昨日から頭痛がする。夜の体温が35.1℃って低すぎないかとガン見する。朝はだるく、疲れやすかった。


 6月20日、日曜日。

 左半身が痺れる、だるさを感じた。朝はいいが、夜は血圧が高めで脈が30台、夜中にトイレ3回も行った。どうなってる体。


 6月22日、火曜日。

 愛田病院にて先週の検査結果を聞きに行く。肝血管腫と胆のうにポリープができているとの事だった。このポリープは1センチが基準らしく超えると手術かも、らしい。私はまだ7ミリくらいなのでセーフだが、半年後にまたエコー受けにおいでと言われてこの件は区切りがついた。半年後って忘れそうだなとスケジュール帳にしっかりとメモをとった。


 6月26日、土曜日。

 昨日までは3連勤で頑張って働いていた。疲れが出たのか朝から不調気味である。夜は脈が34と、寝ていたら息苦しさがあった。明日は草刈り無理かな。


 6月28日、日曜日。

 今日も不調である。体が重い、脈が31……もう30台も切りそうだなと危機感の様なもので不安だった。明日はS医科大学病院に行くので、早く行きたいと思った。動悸を遅く感じた。寝てる時にちゃんと呼吸できているのか、……怖かった。





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