表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手が。  作者: 柚子餡
2/20

1話

本日プロローグと合わせて2話目。よろしくお願いします。



「……懐かしい夢を見たなぁ…」


 カーテンの隙間から差し込む朝日を受けて目を覚まし、それを避けるように手をかざしてひとりごちた。



 懐かしい夢。昔、今から10年くらい前に母方の祖父のお墓参りに行き、父親や親戚の人で車を運転する人達が少し離れた場所にある駐車場に車を取りに行っている間、暇を持て余していた母や祖母、親戚のおばちゃん達は話し込んで盛り上がっていた。


 もちろん従兄弟達や私も暇だったワケで…。しばらくの間はじっとしていた。しかし子供の感覚で言うしばらくなんて大した時間でなく、すぐに飽きた。そして間の悪いことにじっとしていると思い話に花が咲きすぎて注意が薄くなったタイミングで、私は誰にも気付かれることなく蝶を追いかけフェードアウト。


 父親達が車を寄せてさあ帰ろうかとなった時に居なくなったことに気付いたらしい。そしてその少し後に『りょうくん』によってお寺に居た母親の元に無事帰還、『りょうくん』はそのまま走って帰って行った。(すごい勢いで走って行ってしまい、周囲の大人も慌てて追いかけたが見失っていた。足早すぎない?)


 母親に雷を落とされ従兄弟にちょこっと注意をされて慰められた。父親にはしばらくの間ウザいくらいに構われた。大体1か月間くらい。



 そんな事を思い出しながらしばらくぼうっとしていると、またふわふわとした感覚を覚えて微睡んでくる。




「…もうひと眠り…」


 二度寝を決め込もうと布団を口元まで引き寄せたその時。


 ーー『ブー、ブー』


 ベッド横に設置してある照明台に置いていたスマホから着信音(バイブ)が響く。…木製の台だから物凄く頭に響く。せっかく気持ちよく二度寝に移行しようとしていたところを邪魔された私は、仕方なくスマホに手を伸ばす。そしてその送信者の名前を確認して一気に覚醒した!



「…!!朝から和葉(かずは)からメッセージが来るなんて…!!今日は素晴らしい1日になりそうな予感…!いや、絶対なる!というかしてみせる!!」


 拳を握り締めながら天を仰ぎ、ニヤケつついそいそとメッセージに目を通す。



ー『今日から新学期なの忘れてるの?何時だと思ってんの?いい加減出てこいよ。あと30秒経っても姿が見えなかったら置いていくからね』



 画面には大好きな親友の不機嫌を隠そうともしない文面と、ジト目でキレたイラストの猫が鎮座していた。



「…え?」


 思考停止する私。



ーー『ブー』


 新たに着信を告げるスマートフォン。そして…



ー『タイムアウト』


 無情な一文。




「…?!…あれ!?今日登校日だった!?和葉待っててくれてたの!!?というか、今何時…?!」



 スマホの画面には『7:51』とデカデカと表示されていた。


 ちなみに学校までは最低でも30分は掛かるし、朝のホームルームは8時40分からである。結構いい時間だった。しかも今日は新学期なので新しいクラスや教室の場所も確認しなくてはならない。


「やばっ!!新学期早々遅刻する…!?」



 さっきまでのウキウキは消え去り、遅刻するかもしれない焦りと、親友にどうやって機嫌を直してもらうかを考えつつ急いで身支度を済ませ、声を掛けたのにと呆れる家族に挨拶もそこそこに家を飛び出した。

ちなみに大好きな親友は女の子です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ