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その手が。  作者: 柚子餡
17/20

15話





 結局その後、了にお礼を言うことも出来ずに昼休みが終わり、放課後となってしまった。和葉はというと今日は別に用事があるらしくさっさと教室を出て帰ってしまった。一人トボトボと帰ろうとしていると累から声がかかる。


「笹倉、一人で帰るの?なら、駅まで一緒に帰ろうよ」


「…迎え、大丈夫?」


 今日は来てないの?そう思って聞いてしまうくらいにはお迎えが来る累。


「今のところは来たって連絡もないから大丈夫かな」


 苦笑してスマホを少し掲げる様にしてみせる累と、その隣には欠伸を噛み殺す了が居た。思わず了を見ていると目が合った。さっと視線を外して累に向き直る。不自然なのはいつものことなのでもう仕方ないということにする。うん、逸らしてしまったものは仕方ない!


「うん、じゃあ帰ろっか」


 未だに了からの視線を感じるが方向転換してサクサク廊下を進む。



 そんなこんなで校門に差し掛かり、累から「えっ」と声が洩れた。累の視線を辿って行くとそこには美魔女が2人、車の前に立っていた。言わずもがな累の祖母である。しかも2人。()の事について談笑しているらしく、会話の所々に「るーくん」と出ている。そして累が来た事に気付き、2人で早足気味に近づいて来た。


「おかえりなさい、累。八千代(やちよ)さんとお茶をしていたら、累に会いたくなってしまって、迎えに来てしまったわ」


 ゆったりと微笑んでそう告げる、上品な雰囲気な母方の祖母。累の色味は彼女に近い。


「累、学校お疲れ様。ここまで百合江(ゆりえ)さんとお話ししていて連絡をするのをすっかり忘れてしまっていたの。ごめんなさい」


 ちらりとこちらに視線を向けて、申し訳なさそうに眉尻を下げて謝罪をしている、淑やかな空気を纏う父方の祖母。

 ちなみに、母方の祖母の名前が『百合江』さんで父方の祖母が『八千代』さんである。孫大好きの筆頭2人で競うように累と過ごしているが、時々こうして共謀(?)して累を迎えに来ることもある。

 このような祖父母に囲まれて育ったからなのか、あまり自己主張をしない穏やかな女子力高め(私基準)な優男になったのかと思う。


 そして私がそんなことを思っていた時の()はというと。


「ははは…。ただいま…。…なんでこう、ある意味タイミングがいいんだろう…」


 乾いた笑いを浮かべて半ば諦めが混じったようにぼそりと呟いていた。


「ごめん、俺から誘っておいてあれなんだけど…」


 そしてこちらに向き直り、心底申し訳無さそうに謝ってきた。累の性格的に突っぱねる事ができないのである。もっともこの祖母達(2人)は累に突っぱねられてもきっと連れ帰るだろうが。


「気にしないで。また明日、学校でね!」


 私が笑ってそう言い、了も無言ではあったが頷いていると、


「まぁ、累、お友達と約束していたの?ごめんなさいね、そうとも知らずに来てしまって…」


 その様子を見ていた累の2人の祖母も申し訳なさそうに謝ってきた。


「でも、申し訳ないのだけれど、また今度、累とは過ごして頂戴ね?累、行きますよ」


 謝ってはくれるが一歩も引かない。案の定そのまま祖母2人に左右を固められ、車に乗り込まされて静かな嵐の様に去っていった。



「…累の祖母さん達、相変わらずの溺愛っぷりだな…。なんか進化してるし」


 累の乗った車を見送っていると、半笑いで呟くようにそう言う了。進化か…。


「私と和葉がいる時は大体あんな感じだよ?…もしかして、私と和葉、るいちゃんのお祖母さん達に警戒されてる?ただの友達で何もないんだけどなぁ…」


 まぁ、累の祖母達からしてみれば、可愛い孫に変な虫が寄り付いている様に見えているのかもしれない。


「…何もない、か」


「ん?なんて?」


 ぼそりと呟いた言葉がよく聞き取れなかった。もう一度聴き直すと、


「いや、前は俺なんかも一緒に連れて行かれたなって思い出して。まぁそれも、中学ん時の話だけど」


 へー、やっぱり男子で幼馴染みだと同じ友達でも差があるのね。ふむふむと納得していると了がジッとこちらに視線を向けていた。


「?なに?何かついてる??」


 この人なんでこっちこんなに見るんだろう?そんなに気にかかるモノが付いてるの?そう思って頬をペタペタ触ってみたり、肩を見てみる。何もついている様子はない。


「ん、いや、別に。ただ、今日もよく視線逸らされてたなって。そっちだって俺の事時々見てたでしょ?なに?」


 逆に質問されたよ。そうだ、昨日のお礼、どうしようとか思ってつい目で追ってしまっていた…!うわ、なんか恥ずかしい…!

 って、なんかちょっと笑ってない?目元とか、口元とか!若干ニヤついてるきがする…!なんかちょっとムカつく…!!


 でも、タイミングはいいかもしれない。昨日のお礼を言えるまたとないチャンスでは…。でも、なんかこの顔を見ていると素直に言うのが負けみたいに思ってしまう…!


「な、なんでないっ!か、帰るよっ!」



 もー!なんでもなくないじゃんっ!またタイミング逃したよ…。

 …これ、言える時って来るのかな…。







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