13話
ブックマークありがとうございます!サブタイトル『おろし金を求めて』(笑)後半戦、よろしくお願いします!
それからなんとか説明を(私が)して了を連れていた理由は分かってくれた。…そう、理由は。
「まぁ、駅からここに来る途中の道は最近物騒になっちまったからなぁ。前々から1人で来る度に心配してたんだ。それがいきなり男を連れて来るもんだから、いやぁ、長生きするもんだなぁ!」
「本当ねぇ。こんなに可愛らしいお嬢さんなんだもの。悪漢に襲われないか、とても心配ししてたのよ?でも、こんなに頼りになる男の子と一緒なんですもの!お隣の彼氏君とこれからもご贔屓にして頂戴ね?」
「…心配してくれてアリガトウゴザイマス。これからもここのお店を利用させてイタダキマス」
彼氏彼女の関係を否定しているのにその話だけは耳をすり抜けてしまうらしい。思わず半目になり片言になってしまうのは、もう突っ込む気持ちが折られて心が込めきれないからとか、そんなんじゃナイヨ…。
「で、今日はどうした?男を見せにわざわざ寄った訳じゃあないんだろう?」
はっ、そうだった。おじいさんの言葉で本日の目的を思い出した。
「実は、おろし金が折れてしまって、それを買いに来たんです。大根の水分が切りやすくて、ふわっとしたのと鬼おろし、両方できる様なおろし金がいいんですけど…」
「そうねぇ…これはどうかしら?受け皿が付いていて、普通のおろし板と鬼おろし板、薬味おろし板も付いているから幅広く使えるわよ?」
「そうですねぇ…」
彩音とおばあさんがおろし金を吟味している間、その様子を黙って見ていた了におじいさんが声をかけた。
「彩音ちゃんに付き合って来てくれて、ありがとうな。いつもいつも、あの子の母親と来る以外は1人で来ていたから、本当に心配してたんだ。…あの子はああ言っていたが、照れ隠しもあるんじゃないかと思ったよ。アンタは、彩音ちゃんのことどう思ってるんだい?」
真面目なトーンで話始めたかと思えば、ニマニマしながら出歯が目に余念がないおじいさんに、前半部分こそ目を見て話を聞いていた了だったが、流石に後半になって苦笑し、視線を彩音へと向けて口を開いた。
「…成り行きで俺がここに付き合うことになっただけで、彼女は他意なんてきっと何もないですよ。…俺は…まぁ、好ましくは思いますよ。じゃなきゃ、成り行きでだって付き合うこともしませんよ」
そう言う了の顔は真剣そのものだった。
「ほほおぅ…まぁ、頑張んな!わしは脈ありだと思うぞ?じゃなきゃ手なんか握らせてくれんだろうからな!」
茶目っ気たっぷりにウィンクしながら親指を立てて来るおじいさんに、少し苦笑を漏らしつつもその視線は真っ直ぐに彩音を捉え「頑張りますよ」と呟いた。
と、そんなことを丁度話し終えた了とおじいさんのもとにおろし金を買ってほくほく顔の彩音と優しい笑みを浮かべたおばあさんが戻ってきた。
「お待たせ!なかなか良い買い物ができたよ〜!おばあさんもありがとうございました!これならきっと母も満足してくれるはずです!」
「ふふふ、満足してもらえた様でよかったわ。彩音ちゃんのお母さんは、ずいぶんなこだわり屋さんだものねぇ。また今度、ここに来たときにそのおろし金の使い勝手がどうかお話聞かせて頂戴ね?」
「はいっ、もちろんです!あれ、長内君もおじいさんと話てたの?」
なんだかおじいさんの方が了にとても良い笑顔を向けていたので聞いてみたが。
「ん、まあ」
話す気はないみたいだった。
「ふーん。…まあ、いいや。じゃあ、お邪魔しました!また近いうちに来ますね!」
そう言って店の出口へと向かおうとすると、
「おう、また彼氏との来店を心待ちにしているよ!」
「そうねぇ、次もお2人での来店、お待ちしています」
親指を立ててニカっといい笑顔のおじいさんと、優しい笑顔で顔の横で軽く手を振るおばあさんに見送られた。
…最後までカップルと間違われたままだった。
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