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その手が。  作者: 柚子餡
11/20

10話

また彩音視点に戻ります。よろしくお願いします。





 新学期2日目。


 手に持っているスマホの画面には『7:25』と表示されている。いつもは大体7時30~40分あたりで待ち合わせて登校している。

 昨日と同じ過ちを犯さないために、今朝は早めに起きて和葉との待ち合わせ場所にて待機する。昨日は新学期でクラス分けを確認したり、各個で必要教材を受け取ったりする時間も考慮して早めに登校することを決め、7時20分に待ち合わせて行こうということになっていたが…。私が日付をど忘れした上に寝坊をかましたお陰で和葉を30分も待たせてしまった。(ちなみに、ギリギリに登校したお陰か人も少なく、クラス分けの確認や教材の受け取りなどに時間がほとんど掛からなかった為間に合った)


 これを聞けば、如何に和葉と私が思い合っているのかが分かるだろう。そして、なんだかんだ私に毒を吐いたりする割には大事に思ってくれているというのが伝わるだろう。


 …え?思い合っていて大事に思っているのであれば、彩音()が来るのを待っているのではないかって?そこはほら、女王(和葉)様だから…。



 そんなこんなでスマホをいじりながらぼーっと待っていると、和葉が歩いてくるのが視界に入った私はスマホをポケットにしまい、顔をあげた。


「おはよう和葉!」


 両腕を伸ばして和葉を出迎える。


「おはよう。今日はいつにも増して早いじゃない」


 それを躱しながら挨拶を返してくる和葉。そして右腕を掴まれ、問答無用で制服の袖をたくし上げられた。昨日の今日で掴まれた痕が消えておらず、会って5秒と掛からずに目敏く和葉に見つかった。

 見た目だけは痛々しいその痕を見るなり、眉根を寄せて私の顔に向き直る。


「…なに、この痕は」


 ですよねー。


「あはははは…。…実は昨日和葉達を見送った後にお母さんから買い物を頼まれて…」



 歩きながら昨日のこと(腰が抜けた云々の恥ずかしい部分、もちろん青高男子との遣り取り全てを除外した話)を大まかに説明した。



「…なんでおろし金買うのにそんな所に行ってんのよ…。大体、そこの駅だったら駅ビルの中に台所用品だって売ってるでしょ?なんでわざわざそんな治安が悪い所に一人で突っ込んで行ったのよ…」


 呆れた視線と表情を向けられ…いや、その前に。和葉が私の心配をしてくれた…!!


「和葉…!そんなに私の心配してくれるなんt「話の腰を折らない」


「はい」


 被せ気味に真顔で注意された。



「…だって、その通りの先にあるお店なら良いおろし金が手に入るかと思って…。というか、あそこの道ってそんなに治安悪いって評判なの…?確かにいつもその店に一人で行くと店員のおじいさん夫妻に心配されはしていたけど、そういうことだったんだ…」


 なるほど、と納得していると、再び呆れた様な視線を向けられた。


「…で、結局おろし金はどうなったの?買って帰らなかったんでしょ?」



 そう、あのあと私は買い忘れたことを思い出しはしたが、そのまま帰った。


「実はあつ兄が買い物して帰るから何か買う物があればついでに買って来るってメールが来たから、お願いした…んだけど、お母さんのお眼鏡に叶わなかったみたいで、結局もう一度買いに行くことになっちゃったんだよね…どうしよう」


 『あつ兄』とは、大学に通うためにうちに居候している、従兄弟の『大森(おおもり) 篤紘(あつひろ)』のこと。本当の妹みたいに可愛がってくれていて、私も本当の兄の様に慕っている。


「あら、それはあつひろお兄さんも無駄足踏んで残念だったわね。…悪いけど、今日も弓道の稽古あるから付き合えないわ。原田君あたりにでも頼んでみたら?」


 和葉はあつ兄のことを某歌のお兄さんの様に呼んでいる。なんでもその姿がかぶって見えるらしい。特に私と居るときに。…私は幼児か。


「うん、そうしてみる」



 そんなこんなで話しながら移動していたらいつのまにか教室に着いていた。

 そして視界に入る、累と親しげに話す、昨日の、男子。


 教室の入り口で固まる私に気が付いた累が私達に声を掛ける。


「笹倉、八巻、おはよう」


 累の視線と声でこちらへ顔を向けた男子と視線が合う。なんで、ここに。いや、青高の制服着てたし、ここの生徒なのは分かっていたけれど、なんでこの教室にいるのか。



 いつまでも固まっている私を訝しんで視線をよこしてくる和葉と、私と件の男子とを交互に見る累。



「あぁ、昨日ぶり、笹倉 彩音」


 口角を少し上げて余裕そうな表情でそう告げる件の男子と。


「ど、どうして」


 困惑と若干の気まずさを含んだ声が出てしまう私。


 そしてそんな私達のやりとりを見ていた累の口から、もしかしてと思い始めていた言葉が紡がれた。


「あれ?2人とももしかして知り合いだった?ほら、こっちが昨日話したおれの幼馴染みの『長内 了』だよ」



 私の心穏やかな平穏な高校生活が、足音を立てながら高速で遠ざかっていった様な気がした。





和葉は和葉なりに彩音のことを大事思っています。

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