後日談 魔道具屋にて(レオランド視点)
「おい。いつまで張り付いている」
ショーケースに顔を近づけながら、魔道具を凝視するルナセーラに、レオランドは睨んだ。
魔道具屋に入った途端、ルナセーラは上下左右のあらゆる方向から魔道具を眺め回し始めた。
「……待って、もう少しじっくりと見させて」
レオランドの返事を聞くことなく、魔道具に視線を戻す。
「防御の魔法のかかったペンダント……。こんなのが入荷しているのかぁ」
呟いたルナセーラの瞳の輝きが増したのを見て、レオランドは呆れたように息を吐いた。
ルナセーラの気が済んだところで、魔道具屋を後にした。
「すごく満足。連れてきてくれてありがとう」
「……どういたしまして」
ルナセーラの満面の笑みが効いたようで、毒の一つでも言おうとしていたのが消えた。
レオランドは、音の外れた鼻歌を歌い始めたルナセーラに問いかける。
「何か気に入るものはあった?」
「いっぱい。魔法学院では、絶対にお目にかかれないものも見られて大満足!」
ルナセーラは両手を広げて力説をし始めた。
(そういえば、セドリフも魔道具が好きだったな)
楽しげに魔道具の効用を説明してくれたセドリフ。
視界がぶれて、セドリフとルナセーラの姿が重なっていく。
「──レオランド、ちゃんと話聞いてる?」
ルナセーラは頬を膨らませて、レオランドを覗き込んだ。緑の瞳が少し怒ったような光を帯びている。
セドリフの紫色の瞳とは違う。
「あ、あぁ。聞いているよ」
(疲れているようだな……)
目を擦り、気のせいだったと感じたレオランドだった。