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おまけ② 誕生日プレゼント

感想欄で書いたお話を加筆修正しております。


 レオランドから渡したいものがあると言われて、魔法学院の授業後にルナセーラは公園のベンチで本を読みながら待っていた。


(渡したいものって何だろう)


 想像はできなかったが、「もらえるものなら、もらっておこう」と決して裕福ではない生活環境から楽観的に考えていた。


「ルナセーラ、待たせたな」

「レオランド。それほど待ってはいないですよ」

「……渡したいものは、これだ」


 レオランドが握り拳を目の前に差し出してきて、ルナセーラは反射的に両手で受け皿を作る。

 受け取ったのは、花の形をした銀のチャーム。上部には穴を通す輪が付いている。


(これは、ただのチャームじゃない)


 魔力がにじみ出ていることがわかる。


「魔道具だ。アイテムを五つまでなら収納できる」

「本当? とっても欲しかったんだ!」

「今日、ルナセーラの誕生日だろう。」


 呼び出された時点で、誕生日の贈り物かもしれないと期待していたが、忙しい合間を縫って直接渡してくれたことが嬉しい。ましてや、ずっと欲しかった魔道具だ。


「ありがとう。大切にする。アイテムって鞄だけでも入れられるのかな」

「──いや、鞄と中身は別のアイテムとして区別される」


 ルナセーラは斜めがけの布の鞄を魔道具の中に収納しようとしたが、バチッと光で遮られた。鞄の中には、魔道書や筆記用具等で五つ以上はアイテムが入っている。


「本当だ。数で制限がかけられるみたい」


「もっと値段の高いものだと収納できる数も増えるが、これは五つまでだ。大きい魔道書は入れられる」


 ルナセーラは鞄の中から、幅を取っていた魔道書を取り出して魔道具に近づける。魔道具と接触した部分は白い光が現れて、みるみるうちに形を消した。


「これで収納されたんだよね」


「そうだ。チャームの花びらの色が銀から金に変わっただろう。それに一回触れると内容が表示されて、二回連続で触れると取り出せる」


「へえ。便利だね」


 ルナセーラは感心して、チャームを覗き込んだ。上下左右に傾けて、穴が開くほど見つめる。

 前世のセドリフの時代では開発されていなかった魔道具だ。日々、進歩しているということか。


「興味を持ったものをじっくり見回すのは、あいつを思い出すな」


 ルナセーラは聞かなくても答えがわかったが、あえて問いかけることにした。


「……あいつって?」

「旧友だったセドリフのことだ」


 レオランドは過去を思い出したのか、柔和な笑みを浮かべる。

 過去の自分なのに、無意識に嫉妬心が芽生えていた。


「レオランドって、よくセドリフのことを思い出すじゃない。実はセドリフのことが好きだったんじゃないの?」


 友人の死を悼んで夢に毎回登場させるような思いの深さだったのだ。ルナセーラがレオランドの男色──恋愛対象が男だと疑うのには無理はなかった。


「いや、違う。あいつは周囲を巻き込んで中心にいるような奴で、それでもセドリフを嫌いになる人はいなかった」


「そ、そうなんだ……」


 ルナセーラは自分の噂話をされているようでドキドキしてしまう。いや、自分の噂話で間違いないのだが。


(周囲を巻き込んで中心にいるって、トラブルメーカーじゃないですか!)


「君は、俺を見ても物怖じしないところに、興味をそそられたんだ」


 美形な顔がずいと近づいてくる。

 ルナセーラは小さく叫び声を上げそうになった。


「レ、レオランド。ちょっと近くありませんか?」

「そうか? ご家族公認の仲だというのに?」


 そうだった。ルナセーラがうっかり認めてからは、レオランドの婚約者としての立場が定着してしまったのだ。

 背中に冷や汗が流れ落ちる。


(ま、待って! 心の準備ができていないの!)


 レオランドの長い睫毛が細められて、睫毛の一本一本が見えるくらい顔が近づいてくる。

 しばしの間。

 レオランドの唇にあたったのは、柔らかい感触ではなく、硬い魔導書だった。


「どうしてこんなことをする」


 レオランドの低い声に、ルナセーラは顔を防御していた魔導書を鼻まで下ろして、伺うように見た。レオランドの瞳に宿った、強い光を見てビクッとする。


(やってしまった)


 ルナセーラはバツが悪くなった。

 唇を奪われると思ったルナセーラは、咄嗟に魔道具から魔道書を取り出して顔を隠したのだ。

 この魔道具が、レオランドからの誕生日の贈り物というのが悪い。


「ルナセーラが喜ぶと思って贈ったのにな。こんな使われ方されるなら買わなければよかった」


 レオランドはツーンとした表情になった。綺麗な顔をしているだけに、気のせいか冷気が漂う。

 もう、逆らえない。


「レオランド。ど、どうぞ」


 覚悟を決めて、目を閉じる。

 数秒経ってもキスは降ってこない。

 疑問に思って、そっと目を開ける。


「キスしてくれると思ったのか? また今度な」


 レオランドは高等技術「おあずけ」を繰り出してきた。


(期待してしまった自分が恥ずかしい……!)


 ルナセーラは耳まで真っ赤になる。

 レオランドはルナセーラの可愛さに釘付けになったが、反応を楽しむかのようにじっと見つめた。


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