第7話
俺が倒れている間に、今日はひとまず解散となったらしい。
教室に戻ると、迷彩服にコンバットブーツ姿の近藤先生がいた。
「三門、体調はどうだ?」
「近藤先生、大丈夫です。ご心配おかけしました。」
「何、異常が無ければなによりだ。大変だったな。今日はこれで解散にした。寮に案内しよう。動けるか?」
待っていてくれたのか。
先生も忙しいだろうに、申し訳ないな。
「大丈夫です。すみません、ありがとうございます。」
「まぁ、荒井先生がいたからな。彼女が診てくれたなら安心だ。」
「荒井先生って、そんなにすごい人なんですか?」
「すごいなんてもんじゃないぞ。あんなに優秀な人はまずいないだろう。彼女の実家は医師一家でな、高校生の頃には既に医大卒の資格を取得出来る知識力で、3年前に始まった能力解析プロジェクトを1から構築したのは彼女だからな。」
荒井先生、そんなにすごい人だったのか…。
「移動しながら話すか。彼女は全国から集めた脳科学者や臨床心理学者や各分野のエキスパートと呼ばれる医師達とチームを組み、能力や邪鬼の解析、対抗策などを担当している中心人物だ。歳もまだ2」
「近藤先生?私の歳がどうかしましたか?」
「はい!近藤です!なんでもございません!すみませんでした!!」
荒井先生、いつの間にいたんだよ…。
近藤先生、とても素晴らしい敬礼だと思います。
「まったく…三門君、近藤先生はすぐデリカシーの無い事言うから、授業以外はまともに聞いちゃダメだからね。もし私の話とかしてたら、後でちゃんと教えてね?」
「いや、さすがに近藤先生にそんな失礼な事は…」
「約束してくれる?」
荒井先生。
超良い匂いで、めっちゃ可愛くそんな上目遣いで言われたら…あ、だめ。威圧感半端無い。
能力かよ、これ。
変な汗出てきた。
「はい!約束します!」
「んふふ~、三門君はいい子ね。いい子いい子。」
頭を撫でてくる手も、小さくて柔らかい。
汗止まんないけど。
「じゃ、またね。近藤先生、余計な事言ったらダメですからね?」
「畏まりました!生徒の案内に集中させていただきます!!三門!行くぞ!」
「は、はい。荒井先生、失礼します。」
笑顔で手を振る荒井先生は、目が笑ってなかった。
それにしても、近藤先生、本当何したんだよ…。
「近藤先生、あの…」
「聞くな!」
「ウィッス」
案内してもらった寮は、新築したばかりだからか、とても綺麗な建物だった。
床はPタイルが張られ、クロスが綺麗に張られた天井と足元の壁に埋め込まれたLED照明。
各部屋は65㎡程の広さ。
2人部屋とはいえ、広いな。
急ピッチで建設されたとは思えない造りに、日本の建築技術の高さを思い知らされる。
「202…202…ここか。」
同室の生徒が先にいると思い、一応ノックする。
ー コンコン
反応がない。
「…いないのかな?入りまーす…」
ドアを開けると、部屋の両端にベッドがそれぞれ置いてあり、片方には制服のまま寝ている奴がいた。
「起こしちゃまずいよな…。」
寝ているのをわざわざ起こすのも悪いと思い、静かに荷物を置く。
荷物といっても最低限の着替え位で、大したものは入ってないのだけれど。
「(とりあえず着替えて食堂に行くか。)」
今まで気にしていなかったけど、自分が空腹だと意識するとダメだな。
食堂に行く前に着替えをしていると、さっきまで寝てたはずの生徒に声をかけられた。
「おい。」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「誰だお前。」
うわ、初対面でこれかよ。
「起こしてごめん。俺は、E組の三門誠。」
「あぁ、同室のか。C組、一条雅也。」
「一条君か。今日からよろしくね。」
「あぁ、雅也でいい。俺は寝る。」
えぇ…
まぁ、きっと眠いんだろう。
そっとしておこう。
「わかった。雅也、起こしてごめんね。俺は食堂に行ってくるよ。おやすみ。」
「……………」
おやすみ3秒かよ…
また雅也を起こさない様に、食堂に向かおう。
お腹すいた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。