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心の価値は  作者: 犬好きのおじさん
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第5話

案内された部屋は、様々な器具とベッドが並んでいる。

病室みたいだな。



「ここで能力解析を行います。5人ずつの解析となりますので、呼ばれた順に来て下さい。解析には血液検査と脳波測定。それと、皆さんに協力したいのは、自分が能力をどう使いたいかをイメージしていただく事になります。ただし、想像通りの結果にならない可能性は高いので、あまり結果に一喜一憂しないで下さい。大切な事は、どんな能力かではなく、能力をどう使うかですから。」




荒井先生はそう言うと、解析準備に取り掛かる。

曖昧だな。

イメージはするが、その通りにはならないって事か。

ただ、なんとなく理解は出来る。

能力と精神が関係しているのは。

何より、父さんを見てきたから。



「ワクワクするなぁ。俺、どんな能力なんだろ?」



佐久間君。ワクワクする気持ちはわかる。

俺も何も知らなければ、同じ反応だっただろう。



「それでは次の5人、お願いします。」



荒井先生に呼ばれると、俺も別へ向かう。

採血、血圧測定が終わると、ベッドへ横になり脳波測定に移る。



「ここで、先程お話したイメージです。あなた達は今、丸腰の状態で邪鬼に囲まれ、絶対絶命です。一緒にいるのは、何があっても守りたい存在。そういう方がいなければ、1人で邪鬼に囲まれている状況です。数秒後には360度から迫り来る邪鬼の触手によって絶命するでしょう。ただし、あなた達はやられるわけにはいかない。夢もある。守りたいものもある。ここで終わるわけにはいかない。あんな奴らに好き勝手されてなるものか。さぁイメージして下さい。あなた達が想像する絶対絶命のピンチを切り抜ける最強の一手を!」





俺はみんなとは違うんだろう。

仕方がない。

父さんを見てしまっているのだから。

だからこそ、違う想像をするのかも知れない。

最強の一手?

そんなの父さん以外いないだろう。

当たり前だ。

あんなに圧倒的に、しかも一瞬で数10体、数100体を捻り潰す力を見ているのだから。

それと同時に、みんなは知らない。

能力を使った父さんが、その後どうなるのか。

何も知らないくせに。

確かに最強かもしれない。

圧倒的だ。




その能力の使用に副作用さえ無ければ。












父さんが邪鬼を倒すのは、まさしく一瞬。

発動すれば、邪鬼はもれなく捻り殺される。

圧倒的すぎる。

これだけ見れば、父さん1人でどうにか出来るだろう。

あの副作用は、正直、見るに耐えない。





「パパ!だめ!あたし頑張るから!」

「うるせぇな熊子、熊みてぇな顔しやがって。」

「犬だよ!!!!」

「大丈夫だ。ちょっと待ってろ。」

「でも!!パパ!!壊れちゃうよ!!」

「だから犬みてぇな顔するなよ。大丈夫だ。お座りして待ってろ。大丈夫。大丈夫だ。」

「犬だよ!!!ダメだよ!!!待って!!!あたしが!!!」

「お座り!!!!!!」

「…っ」

「…待ってなさい。帰ったら飯食おうな。」



父さんはいつも自分勝手だった。

家族の心配を分かってくれない人だった。

自分が身を切る方法ばかりしか、実行しない人だった。

知ってた。

知ってたはずだった。

でも俺は知らなかった。

まさか、ここまで自分勝手とは。




「…開門」

父さんが言うと同時に、どす黒いもやの様なものが大量に父さんに流れ込む。

「あっ…あっあっあっ…あっ…あああああああああああああああああああああ」

いやいや、なんだこれ。

父さん何やってんだよ。

当時、何も知らない俺は、あまりの衝撃に何も言えず動けないでいた。



「パパ!!ダメ!!…っ!!!」

熊子は知ってんだろう。

そりゃそうか。

あの時からずっと一緒だもんな。

今でこそ冷静に思い出しているが、当時は考える事すら出来ない衝撃で、棒立ちになっていた。



『『『コルコルコルコルコルコルコルコルコルコルコルコルコルコルコルコル…』』』



「…永続螺旋。」



ギュルギュルギュルギュル…

ギチチチチチ…

パァアンッッッッッッ!!!!!



気付けば邪鬼は跡形もなく弾け飛んでいた。

…すげぇ。圧倒的すぎるだろ。

俺はかなり興奮していた。

発動時の父さんの状態など忘れて。

愚かにも興奮してしまった。




「…パパ。あたし見える?」

「…あっ…あっあっあっ、あっ…」

「パパ…。今日はもう休もうね。あたし、お布団かけてあげるから…。」

「…ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」

「パパ、大丈夫。ありがとう。いつも、ありがとう。あたし見てるよ。」

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「パパ帰ろ。あたし熊みたいかもだけど犬だからね。パパ。パパ。パパ…」










俺にとっての最強の一手は父さんだ。

でも、あの力はあまりにも、あまりにも…

俺はいつか父さんを越えたい。

あれを見るまでは、そう思っていた。


俺が望むのは、あんな副作用の無い力。

最強だなんだ言われている人の苦しみを助ける力。

だってあんなの見てられないじゃないか。







俺が望むのは、あんな副作用に抗う為の、盾だ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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