第4話
邪鬼
あの日に突如、日本中に発生した奴ら。
身長130センチから150センチ位ある、二足歩行の異形の奴ら。
日本中がパニックになり、自衛隊が緊急出動し迎撃にあたるも傷1つ付けられず多数の死者を積み重ねた奴ら。
いつも通りの日常を壊した奴ら。
俺の家族をバラバラにした奴ら。
「さて、先程話した緊急の場合についてだ。最重要事項だ。全員頭に叩き込む様に。」
近藤先生は、今までに無い真剣な表情になる。
「緊急の場合。すなわち邪鬼と呼ばれるモノに遭遇した場合だ。お前達も知っての通り、奴らは殴っても蹴っても傷付かない。実弾兵器も効かない存在だ。唯一の対抗策は、お前達の能力にかかっている。」
そう。
奴らは、打撃や物の投擲は勿論。銃撃などの実弾兵器が一切効かない。
唯一の対抗策は、奴らが現れたあの日を境に目覚めた俺達子供と、一部の大人が使う能力のみだ。
「もし邪鬼に遭遇した場合は、デバイスの電源を3回素早く押せ。緊急通話状態になり現在地がこちらに送信される仕組みになっている。そこからは状況判断しつつ指示を出す。いいか、邪鬼には絶対に1人で対応するな。大抵奴らは集団で現れる。1人で調子に乗って気付いたら囲まれてる、なんて事はよくある話だ。」
確かに、何度も聞いた話だ。
覚醒した一部の大人が、調子に乗ってそうなったニュースはよく報じられた。
1人で相手に出来るのは、おそらく父さん位だろう。
あ、熊子も一緒だろうから1人じゃないか。
いつも父さんの足元で尻尾をブンブン振っている飼い犬の事を思い出していたが、教室のドアを叩く音に気を取られた。
ー コンコン
「失礼します。近藤先生、E組の能力解析の時間です。移動をお願いします。」
「荒井先生、もうそんな時間ですか。わかりました。」
ストレートのミディアムヘア、深紅のVネックニットに黒のタイトスカート、それに白衣を羽織った女性は荒井先生というらしい。
とても女性的なスタイルだが、若い。
教師になったばかりだろうか?
「おー、男子の鼻の下が伸びてるぞー。荒井先生は綺麗だから仕方ないが、気を付け」
「…近藤先生?」
「全員起立!すぐに移動するぞ!」
…何だろう。今のやり取り。
「皆さん、初めまして。解析室の荒井です。よろしくね。今から解析室へ移動します。隣の校舎の2階ですので、着いてきて下さいね。」
「よし!全員行くぞ!遅れるなよ!」
「…近藤先生?」
「すみません!」
近藤先生、荒井先生に何したんだろう…。
不思議な空気を感じつつ、俺達は解析室へ移動する事となった。
能力解析か。
俺はどんな能力なんだろうか。
どんな能力であっても、きっと、父さんと比べられるんだろうな。
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