第3話
担任の近藤先生に一喝された生徒達は、揃って素晴らしく背筋をピンッと伸ばし座っている。
「まあ、そう固くなるな。当たり前の事を当たり前にやれれば、それで良い。まずは簡単に本校の説明をしよう。その前に、一番前の席の生徒は、これを持って自分の後ろの者へ配ってくれ。」
段ボールに入れられた小さな箱を、一番前の席の生徒が取りに行き、後ろの席へ配っていく。
「全員渡ったか?箱を開けろ。中に入っているスマートフォンは、お前達が本校で使用するデバイスだ。起動すると本校全体の見取り図が出てくる。今から説明するので、それを確認しながら聞く様に。」
デバイスを起動すると、「ようこそ、国能へ」と表示され、学校全体の見取り図が出てくる。
「校門を入った左側に先程の体育館。体育館のさらに左側にはグラウンドがある。そして、正面と右側の3階建ての建物が校舎だ。今いる教室は右側の3階だな。そして校舎の奥にある5階建ての建物が6棟並んでいるな?そこがお前達の寮となる。寮棟と校舎の間にある2階建ては、食堂と浴場だ。ざっと説明したが、ここまで質問がある者はいるか?」
はい!と、女子の1人が手を挙げる。
「寮はどのように分けられているんですか?」
「寮は男女別、学年別になっている。正面から見て左側が女子寮、右側が男子寮だ。学年は手前から1年、2年、3年となる。3年はまだいないので、今は全室空きだな。基本2人の相部屋だ。当たり前だが、異性の寮への侵入は禁止。守れない者は厳罰処分になるので、心しておく様に。」
それはそうだな。
先程の一喝で、厳罰処分が如何なるものなのか、想像もしたくない。
「他に質問はあるか?」
質問です!と男子が挙手する。
「食堂と浴場、と言いましたが、寮に浴室はありませんか?」
「寮には各部屋にシャワールームが付いている。基本的には湯に浸かり体を休める事を推奨しているので、何か特別事情が無ければ出来るだけ浴場を使用する方が良いだろう。他に質問はあるか?無ければ次に移るぞ。デバイスをホームに戻してくれ。」
デバイスのホームをタップすると「学生IDを入力して下さい」と出ている。
「そこに学生ID、入学前に発送してある学生証に記載されているIDを入力してくれ。入力すると、各々の基本データがダウンロードされる。使用時に脈拍などの管理も行われ、身体データを元に普段の健康管理にも使われているので、寝不足などの不調がある場合は警告が出る様になっている。」
画面を確認すると、身長や体重などの身体データ、持病がある場合の現在の症状、能力に関しての事などが表示されている。
「能力については後程説明する。そのデバイスは基本常に身に付けておく様に。ちなみに、校外との通話やメールなどの連絡は出来ない様になっている。機密保持の為だ。家族と連絡が取りたいものは、担任の俺が対応する。校内の生徒同士、教師との連絡は可能だ。緊急の場合は各クラスの担任へ繋がる様になっている。忘れるなよ。」
緊急の場合。
それは、半透明のあいつら。
邪鬼に襲われた場合を意味する。
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