第1話
あれから3年。
日本が不安に包まれたあの日から、3年がたった。
世界はいつも通り。
日本だけに起こった災害らしい。
あれから少しずつ、少しずつだけど、色々な事が日々解明され、それに対しての対抗策が日々検証されていた。
あの日現れたモノの、正体は不明。
どこから現れたのかも不明。
不明だらけだけれども、唯一解っていることは、あの日に目覚めた14歳~17歳の子供達と1部の大人。
1部の大人の目覚めた条件に関しては不明。
不明だらけの不安な3年間。
それでも、あれに抵抗する手段として、国をあげて発足したのは「能力解析プロジェクト」なるもの。
能力の解析を続け、それの発生条件、成長条件、それに伴う組織・施設の運営。
脳科学者、スポーツ学者、臨床心理学者、教育機関、数々の医療専門学者。
何分、覚醒した人間の9割が14歳~17歳という事もあり、急ピッチで進められたそれは、対象者を隔離しつつ、管理、観察、研究を続ける毎日だった。
今日から俺が通う【国立能力者支援高等学校】
通称【国能】は、あの日能力に目覚めた少年少女の育成、補助を担う特別機関であり、突如現れたモノに対しての戦力と基礎学力を補う機関。
千葉県成田市の新東京国際空港に併設された、この国能。
空港建設当時から続いている三里塚闘争に関わる人間は当然、建設が完了した今も反対のデモを続けている。
そうした中でも、日本中から覚醒の兆しが認められた子供達が、本日第2期生として集う。
そして俺、三門誠も2期生として、本日入学する事となる。
今日この日まで、毎日父親と比べられる日々が続いた。
比べたくなる気持ちもわかる。
あの日を境に、父親とうちの飼い犬は、日本国内の最強戦力となった。
その背景に何があったのかは、世間は知らないだろう。
知らなくて当然だろう。
父さんが、それを望んだのだから。
みんな、何も、知らないくせに。
「そこの入学生、ちょっといいか?」
振り向くと、自分と同じ制服を着た身長180センチはあるだろう短髪の男がいた。
「何ですか?」
「いやいや、俺も同じ入学生だから。それより国能ってここで合っているか?」
「ああ、ここで合ってるよ。」
「そうか!どこに何があるのか全くわからなかったから、助かったよ。ありがとう!俺は入学生の佐久間亮ってんだ!よろしくな!」
笑顔が眩しい男だな…。
「佐久間君か。よろしく。俺は」
『お知らせします。入学生の皆さんは、体育館へお集まり下さい。繰り返します…』
「お、体育館か…あれっぽいな!よし、行こうぜ!」
校内アナウンスが流れると、佐久間君がハイテンションで走り出した。
…まぁ、クラスがまだわからないなら、名乗らない方が都合が良かったか。
きっと。どうせ。反応はわかりきっているのだから。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。