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3

完結!!


ご期待の無双には応えられていないかもです。

「あの・・・」


騒音の中、やけにその声はクラス中に通って聞こえた。


全員が声の主を見やって、驚いた。

その人物があまりにも意外な人物だったからだ。


ーー 田中 真由。


彼女は年中マスクをしている。

いつでもマスクをしている彼女は、まるで他人との線引きをしているようで、 みんなは"話しかけづらい人"という印象を抱いている。

そして、滅多に自分から話しかけることをしない。

授業で当てられた問題を答える時に、聞くか聞かないかくらいだ。


だから、


「私、その曲歌えます。」


まさかこんなことを言うなんて誰が思うだろうか・・・。



***



教室が静かだ。

居心地が悪いくらいに・・・。

みんな田中が言い出したことに驚きを露わにしている。

そして、戸惑っているのだ。

普段全然話さない田中が、「自分が歌う」と言い出したことに。



「・・・田中はこれ歌えるのか?」


この沈黙を破ったのは、流石と言うべきか三村だ。


「はい。」


田中はしっかりと返事を返す。


「そうか。・・・じゃあ、お願いしようかな!みんなも良いだろ!」


三村はクラスのみんなに聞こえるように言う。


「・・・っああ、よろしく頼むよ、田中さん。」


「田中さん、ありがとう。」


みんなの反応は、本当に歌えるのか半信半疑といったところだろうか。

しかし、他に歌える人がいないのだから、ここは頷くしかない。


田中がマイクを手に取り、ステージへと上がった。


〈ピンポンパンポーン〉


[代表者が決まりました。代表者が選出されたのは、あなた方のクラスだけです。]



[それでは、曲スタート!!]



***



流れ始めた前奏を聴くクラスのみんなに緊張が走る。

不安なのだ、きっと。

みんなどこか、田中への不信感をぬぐいきれずにいる。


一方で田中は緊張した様子が見れない。

クラス内の雰囲気から、何となく自分が期待されていないことを感じ取っているはずだ。

なのにむしろ、落ち着いているように見える。


流れるように自然な動きで、田中がマイクを自分の口元へと持っていく。


そしてーーーー


「 〜〜♪ 」


彼女の口から、透き通った綺麗な声が響く。

どこか柔らかく、それでいて芯のある歌声だ。


クラスのみんなが目を見張る。


「・・・う、わぁ・・・」


みんな声の出し方を忘れたかのように、彼女の歌に聞き惚れる。

先ほどまでの田中への不信感なんか、きっともう、頭の中には無いのだろう。


彼女は一瞬にして、ここにいる全員の心を自分に引きつけたのだ。



彼女の歌を聴いて、心の中で綺麗な発声と発音だと感心する。

デタラメじゃない。

訓練された歌い方だ。



「 〜〜♪ 」


歌われているのは英語の歌詞だ。だからきっと、みんな歌詞の意味はわかっていない。

しかし、わかるのだ。伝わってくるのだ。

この歌に込められた思いが、何を伝えたいのかが。



***



曲が終わる。

あっという間だった。


しかし、誰も言葉を発さない。

否、発せない。


みんな言葉を探しているのだ。


そしてそのまま誰も何も言えないままでいると、スクリーンに点数が表示される。



[98点]



おお、すごい高得点だ。



「・・・すご・・・。」


「98って・・・初めて見た。」


ポツリとそう呟く声聞こえた。

そしてーーー


「す、凄いね!!田中さん!!」


という1人の声によって、


「本当!!凄いな田中!!」


「ヤバかったーー!!」


「鳥肌ぶわーってなったよー。」


みんな口々に田中を褒め始めた。

田中はそれに戸惑うように胸の前で手をワタワタとさせ、


「全然、そんなことないです・・・」


と言う。

しかし、あの歌声を聴いた後じゃ誰もその言葉に納得しない。


「謙遜はなしだよ、田中さん!」


「私、聞き惚れちゃったよ。」


「純粋にすげー。」


これほどかというくらい、田中を褒めちぎっている。

そう強く言われて、田中はさらに困った様子だった。

だが、ここでまた自分がそれを否定したら更に褒められるということに気づいたのだろう。


みんなの方を向き、


「・・・ありがとうございます/// 」


と照れながら言った。


正直に言おう。

その時の田中はとても可愛かった。


そしてそう思ったのは、自分だけではないらしい。


「な、なあ、今の田中さんすっげー可愛かったんだけど!!」


「なーー!あれ反則だよな!」


近くの男子の会話が聞こえてくる。

チッ。



あ、思わず舌打ちをしてしまったではないか。



女子はというと、


「ねえ、田中さん、次の曲も歌ってよ!」


「賛成ー!!私凄く聴きたいな〜、田中さんの歌!」


グイグイと田中をステージへと上げている。


「田中さん、次の曲も歌える?」


「え?ああ、歌える、けど・・・?」


「わーい!じゃあ、歌ってほしいなぁ。」



・・・女子の強引さってすげー怖いよね。




***



そこからクリアするまでの曲を田中が全部歌った。

田中の独壇場だ。

最中田中コールは止まなかった。


いくらルール上問題がなくても、やりすぎだっていうのはわかっている。


ただ、これに関しては田中も悪いんだ!!


だって田中、なんでも歌えるんだもん。

それこそ、昭和の曲から今流行りの曲。マイナーなものからメジャーな曲まで。

それに加えて、洋楽もいけるし、どんな音域でも綺麗に歌いこなす。


特に女性アイドルグループのアニメ主題歌とか。

2次元を愛する者たちが、自分たちも気づかぬ間に合いの手とか入れるくらいには可愛い歌声だった。



***



ゲームの結果だけをいうと、うちのクラスが1位になった。

みんな喜んでた。

というか、みんなの喜び様に教師た陣は引いていた。


そもそもこのゲームは、毎年恒例のものらしい。

生徒を驚かせるために、学校案内のパンフレットには載せないし、これを経験した生徒たちも何も言わない。


教室のドアが開かなかったのは、単に鍵をかけたのと、窓が開かなかったのは、そのゲームのために数日前から厚手のガラスに変えていたからだという。

視覚のトラックを用いて、それに気づかせない様にされていたらしい。(それ以上は聞かないで!)



他のクラスとの勝負は後半、うちのクラスが断トツだった様で、2番目に教室から出られたクラスとは、1時間くらい差があったのだと後で知った。


田中が無双してたもんなぁ。

なんか、申し訳ない。



まあ、ゲームクリアお疲れ様でしたーー!!



***


この後



田中がマスク外して、ちゃんと見れば超絶美人だったり、


田中が歌っているところをクラスの誰かがネットに上げたことから、田中が世間から注目を浴びるようになったり、


実は田中と"俺"が付き合っていたり、



とか色々あるけど、そういうのはまた別のお話。

お楽しみいただけたでしょうか。

ご期待に添えない終わり方だったかもしれませんが、ご納得頂けたら幸いです。


この物語の視点は、あくまでもモブ視点です。

希望があれば、田中さん視点やクラスメイト視点、その後の話なども書きたいと思います。


疑問に思うことがあれば、ぜひ感想に書いていただけると嬉しいです。


個人的には初めてシリーズ物を完結することができたので、満足しています。


読みにくいところもたくさんあったかと思いますが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


また、感想など本当に嬉しかったです。

感想来た時泣きました。嬉しすぎて。


他の作品の方もよろしくお願いします。

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