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それはいつも通りの日常。
今日最後の授業が終わり、ホームルームが始まるまでの時間。
友人同士雑談したり、帰りの準備をしたりとそれぞれがしていると、突然教室にショッ○ーのコスプレをしたような奴らが入って来た。
そして、教卓の前に大きめのスクリーンとマイク、その横に台を置いて、すぐに教室から立ち去っていった。
何事かと呆然としていると、クラスの誰かが
「おい、ドアが開かねーぞ!?」
「うそ、窓も開かない!?なんで?!」
と教室中に響くような大声で叫んだ。
クラスは騒然、パニック状態となった。
別段ドアや窓にいつもと変わった様子はない。
ただ、どんなに力を込めて引いても叩いても、ビクともしない。
窓ガラスさえ、ただの壁を殴っているかのように感じることが、何か自分たちの手に負えない未知の力が働いているようで、一層恐怖心を駆り立てる。
〈ピンポンパンポーン〉
場にそぐわない機械音が聞こえ、クラス内が静寂に包まれる。
それと同時に、スクリーンに何かが映った。
[これからゲームを始めます]
"これからゲームを始めます"
その文字を見て、ぶるりと体が震える。
まさかーー
それは最近見た漫画の話。
ある日教室に閉じ込められ、ゲームをクリアしないと生き残れない。
コ○したり○ロされたりーー
ぶっ飛びすぎた想像だと自分でも思うが、一度考えてしまった嫌な想像は簡単には消えない。
スクリーンの画面が変わる。
ゴクリと自分が唾を飲む音がやけに耳に大きく聞こえた。
視線の先、スクリーンに映されたものはーーー
[クラス対抗カラオケ大会!!]
思わずズッコケそうになった。
変な想像をして、凄く緊張し自分がバカみたいだ。
恥ずかしすぎる。
漫画の読みすぎだって?
OK自覚済みだ。
でも、周りを見ると赤面してる奴らが結構いる。
なるほど・・・。
たぶん奴らは自分と同類だ。
(そうだよな!やっぱりそう思っちゃうよな!! )
そう心の中で激しく同意している間にも画面は変わる。
[ゲームクリア条件は、カラオケ採点で合計3000点以上を取ることです。
クリアすると、教室を出ることが出来きます。
一曲100点採点とします。
クラス内で曲を歌う代表者を選んでください。
代表者は、スクリーン横にあるマイクを使い、ステージ上で歌ってください。
歌う曲はこちらから指定させてもらえます。
その曲を歌える人がクラス内にいなかった場合、その曲をパスしてもいいです。
ただしパスした場合、教室から出るのに必要なポイントが50点プラスされます。
同じ人が連続で何曲歌っても構いません。]
ルールをみると、本当にただのカラオケ大会だ。
[ちなみに、最も早くゲームをクリアしたクラスの生徒は、なんと!次の定期テストの点数が、全教科プラス10点!!]
うお"いっーーー!!待て待てぃ!!
それってつまり、
それってつまり、
先生もグルなんかーいっ!!
っことだよな!?
いや、嬉しいけどさ。
・・・嬉しいけども!!!
[また、保護者の同意も得てるので門限は気にしなくてOKです!!存分にゲームを楽しみましょう!!」
ンなの気にしてねーーよ!!
ってか、親もグルなのかよ。
なんだよこれ。
[それではゲームスタート!!]
そして随分唐突に始まるのね!!
別にいいけどね!!
***
[第一曲目!!]
ジャジャン!!と効果音が鳴り、スクリーンに曲名が表示される。
『君にさよならを』
この曲は確か、最近流行りの恋愛ドラマ主題歌ではなかっただろうか。
「あ、私これなら歌えるかも。」
「俺も。」
クラス内でもチラホラとそんな声が聞こえる。
これで今回、パスの可能性は消えた。
さて、問題は誰が歌うかだ。
ここで「自分が歌う!!」と言える猛者は日本人には少ないのではないだろうか。
そんな発言をすれば、
(どれだけ自分の歌に自信があるのだろう?)
と思われるに決まっているし、万が一失敗したとしても、
「だから自信ないって言ったのに〜。」や「あー、やっぱダメだったかー。」などの言い訳が全く出来なくなってしまう。
そんなリスクを、誰が自ら負いたいと思うだろうか。
いたとしたら、そいつは相当なメンタルの持ち主か、
ただのバ ーー
「よーし、ここは俺が歌うぜーー!!」
・・・。
まあ、例えどんな奴でも、こういう場合はヒーロー以外の何者でもないが。
「まじかよ、お前!!」
「助かるよ、三村君!」
"俺歌うぜ!宣言"をたのは、うちのクラスのムードメーカー的存在の三村 忠(みむら ただし)
「俺、三村 忠様に任せろっ!!」
「おう、三村ーー!期待してないぞー!!」
「俺も期待してないぞー!」
「ちょ、おま、お前ら期待しろよーー!!」
「「「あははは」」」
三村は凄い奴だ。
みんな突然訳のわからないゲームに巻き込まれて、どこか不安そうだったのに(定期テストの点数云々についてはめっさ喜んでたけど)、その雰囲気を今の一言で明るくした。
〈ピンポンパンポーン〉
笑い声に混じって聞こえて来たチャイムの音に、みんなの視線が自然とスクリーンに向く。
[全クラス代表が決まりました。]
スクリーンにはそう表示されていた。
なるほど。
このスクリーンを見れば、どのクラスがどの曲を歌ったか、歌わなかったかがわかるということか。
一応どっかの紙にメモしておこう。
[それては、曲スタート!!]
***
三村の歌を聴いての結論だけ言おう。
普通に上手かった。
獲得点数は86点。
ずまずの高得点だと言える。
『君にさよならを』はしっとりとした曲調の失恋ソングだ。
正直、あのいつも明るい三村がここまで歌えるとは思ってなかったので驚いた。
おめでとう三村!!
今女子は、普段のお前と歌とのギャップにドキドキだ!!
明日からお前は(たぶん数日の間だけど)女子からモッテモテだろう!!
***
こうしてゲームは続いていく。
勢いで書きました。
他の連載小説も続き書かなきゃいけないとは思ってるんですけどね・・・。
新しい連載始めちゃいました。
でも、これはたぶん短いと思います。あと2話くらいで終わり?だと思います。