営業部のエースは伊達じゃない? -紅葉くれは様へのプレゼントー
ハア~
溜め息を吐くと幸せが逃げるというけど、もうそんなことはどうでもいい気分だ。
疲れた。
本当に疲れた。
今週は後輩の大ポカのおかげで月曜からずっと残業だ。
金曜の今日、終電ギリギリまで粘ってやっと休日出勤を免れることが出来るように、仕事を終わらせてきた。
お腹もすいたけど、睡眠不足で眠気の方が勝っている。混んでいる電車のつり革につかまりながら、くっつきそうになる瞼を、なんとか開けておこうと努力する。
ガクリと体が落ちそうになったのを、肩をつかまれて誰かに支えられた。
「あっ・・・すみません」
顔を見たら見知った顔だった。
「大丈夫か」
真顔で言ったその男は同じ会社で課は違う人。一つ上の先輩で、仕事もできるかっこいい人。今まで電車で会ったことがなかったけど、同じ路線だったのだと回らない頭で思う。
「今週はずっと残業だったのだろう。お疲れさま」
私の肩をつかんで自分の方に寄りかからせるように支えられて、申し訳なく思いながら私は返答をした。
「はい。先輩も知っていたのですね」
「噂・・・というより、実情を見ていたからな。他の奴が手伝えればよかったが、知らない奴が手を出しても仕事を増やすだけだろ。今回は歯がゆかったよ」
そうか、会社内で知らない人はいないのか。・・・じゃあ、あの事態を引き起こしておきながら、欠勤した後輩はもう終わりだろう。
などと考えながら目を閉じかけた。
「おい。ここで寝るな。眠いのはわかるが、もう少し頑張れ。降りる駅はどこだ」
「私の・・・降りる駅は○○です」
グラグラとする頭でなんとか答える。
「それじゃあ俺の方が近いか」
何事か呟いている先輩の、私の肩をつかむ手に力が入った。
「降りるぞ」
先輩に連れられて電車を降り、なんとか改札を抜ける。歩いている間、先輩がいろいろ話し掛けていたけど、頭が回らずになんと答えたのかよくわからない。
部屋の前につきにドアが開いて、帰れたことにホッとしたのは覚えている。
目を覚ました私は、覗き込んでいる男の人の顔を見て固まった。
見知らぬ部屋に見知った男。
あのままお持ち帰りをされてしまったのかと、泣きたくなった。
「よく寝ていたな。もうすぐ昼になるぞ。起きれるなら起きて来い」
そう言って先輩は部屋を出て行った。そろそろと身体を起こして、スーツの上着とスカートは脱がされていたけど、しわだらけのシャツとストッキングでさえ脱がされていないことに、何もなかったのだとホッとした。
そして失礼なことを考えたと反省しながらスカートを身に着けた。
部屋を出てリビングに行くと、先輩はニッコリと笑ってきた。
「お腹がすいただろう。大したものはないけど、食べてくれ」
先に洗面所を借りてから、食事をいただいた。美味しいご飯に疲れもとれて行くようだ。
食器を洗わせてもらおうと思ったのに、先輩がすべて片付けてしまった。
食後のコーヒーまで用意してくれて申し訳なく思った。
「すみません。ご迷惑をおかけしました」
「迷惑じゃないよ。それより、昨夜言っていたことは本当か」
ニッコリ笑顔で言われたけど、覚えていないから素直にそう答えた。そうしたら、彼の笑みが深くなった。
「じゃあ、本当のことなんだな。恋人はいないというのは」
「はい。そうです。けど?」
本当のことだから頷きながら肯定して、疑問が語尾に出た。
「それじゃあ、俺とつき合おう」
「・・・はっ?」
「いや、つき合うだけじゃなくて、その先のことも考えてくれ」
「・・・えっ?」
「もういっそ籍を先に入れるか?」
「はあぁ~?」
『そう云えば電光石火の営業部のエースだった』なと、思い出したのは、先輩に口説かれて交際どころか、結婚をする約束をしたところででした。
アア~!
彼女も私の中では付き合いが長い方。
もちろん彼女の作品のファンで、私から交際を迫りました(笑)
で、誕生日を聞いたら過ぎていました(T_T)
・・・
やっぱり書くっきゃないっしょ!
と、書いて送りました。
なんか、モロ好みの話だったようで、かっぽうにてテンション高めで紹介されていました(笑)
ありがとうございました。