好きな作家仲間との出会い -斎藤秋様へのプレゼントー
仕事帰りに本屋に寄った。今日は待ちに待った、大好きな作家さんの新刊の発売日だったからだ。
なのに、1軒目の本屋にはなかった。調べてもらうと入荷していないとのこと。数日待ってもらえば、お取り寄せすると言われた。でも、すぐに欲しい私はその店を後にした。
2軒目は2冊入ったけど、売れてしまったと言っていた。
3軒目。ここも入荷していないとのこと。
4軒目。あった! と思ったら目の前で買われてしまった。・・・うん。他にもファンの人がいて良かったと思おう。
5軒目。ここを逃すともう、本日中には買えないことになる。急ぎ足で新刊が置いてあるところに行った。
・・・やった。あった!
私が手を伸ばしたら、横からも手が伸びてきた。本の上で手が重なった。
「あっ・・・」
その手の持ち主の男の人、は慌てて手を引っ込めた。そして小さな声で「どうぞ」と言った。どこかで見たような人だと思いながら「ありがとうございます」と返した。
私はその本を手に持ってレジに行った。すぐに会計を済ませて、ホッと息を吐き出した。
本屋を出て急いで帰ろうと歩き出した。
「あの~、すみません」
後ろから声が追いかけてきた。振り向くとさっき本のところで会った男の人だった。
「なんでしょうか」
立ち止まって男の人のことを見たら、男の人は困惑した顔をしていた。
「あのですね、その本・・・」
と、私が抱えている本を指さしてきた。「どうぞ」と言ったのに実は欲しかったという話なのだろうか。
「その作者が好きなのですか」
「もちろん!」
続いた言葉に私は思いっ切り力を込めて返事をした。そうしたら男の人は目を丸くしてフリーズしたのでした。
私と彼は場所を移動してファミレスにいた。彼もあの作者のファンだそうだ。コアなファンなのか、彼の知識は相当なものがあった。ここまで作品のことを語りあえる友人はリアルにはいない。
私達は時間を忘れて彼の作者の作品について語りあった。
一通りしゃべって満足したので店内を見回したら、時計が目に入った。
「あっ、うそ」
「何が?」
彼は私の呟きに問いかけてきた。私は時計を指さして言った。
「こんなに時間が経っているとは思わなくて」
彼も時計を見て言った。
「もう、終電でちゃったね。ところで家はどこ」
「この駅の向こう側よ」
「そうか。・・・残念」
彼の言葉の意味がわからなくて、彼のことをじっと見つめた。
「家が遠ければお持ち帰りしようと思ったのに」
穏やかに微笑んでそう言われたので、私は彼の冗談だと思った。
「ま~たまた~。私なんかお持ち帰りしても楽しめないでしょ」
私が軽く返したら、彼の表情は真顔に変わった。
「本気だと言ったら?」
その表情に何も返せなくて、私はただじっと彼の顔を見つめた。
「もし、君につき合っている人がいないなら、俺とつき合うことを考えてくれないかな」
これが彼と私の出会いでした。
斎藤秋さまはレビューをたくさん書かれています。
レビューを書くということは、たくさんの作品を読まれていることでもあります。
・・・
ということで、安直にも本屋での出会いの話になりました。
裏話的なことをすこし。
この作品は書いていて話が少し膨らみました。
4軒目で本を買っていった人。それが彼です。
5軒目で同じ本に手を伸ばしたのは・・・読む用と保存用と2冊欲しかったから。
もしくは実はその本の作者だった。
どちらでも、話が膨らみそうですよね。
それと、この話は短めのお話です。もう少し長くしたかったですね。
ありがとうございました。