相席の行方? -宮里蒔灯様へプレゼントー
今日は仕事の用事で買い物に出ることになった。まずはデパートや専門店で予約注文をした。何件も回らなくてはならなくて、移動、移動で疲れてきた。
お昼をかなり過ぎた時間。あとは持って帰るものを買うだけになり、昼食を取ろうと目についたお店に入った。
お店はレトロな感じの喫茶店。今日のランチが掛かれた黒板には、もう1種類の献立名しかない。それを注文して、私は手帳を開いた。張り付けてあったポストイットと注文書を一枚一枚確認しながら、注文が済んだものを別のノートに張り付けていく。
(ついでにって、頼み過ぎよ。本当に課長ってばいいように使ってくれるんだから)
自分の班以外の注文まで頼まれたのだ。おかげで回る店が増えてしまった。
確認を終えてノートをしまった。次は手帳に残ったメモを見て、買って帰るものの確認をしていたら、そばに人が来た。料理が来たのかと顔をあげたら、店員さんが困ったような顔で立っていた。
「お客様、申し訳ございませんが、相席をお願いしてもよろしいでしょうか」
店内を見回すと、さっきはいなかった背広の群れが見えた。店員が言うように席は埋まっていた。私は空いていたからと4人掛けの席に案内をされたのだ。もちろん一人だから、隣も向かいも空いている。
「いいですよ」
「すみません。よろしくお願いします」
店員が離れて店の入り口に向かった。私は手帳をしまい、コップを持って水を一口飲んだ。案内されてきたのは背広を腕にかけてバックを持ったサラリーマン。くせ毛なのか少しウェーブのある長めの前髪が目にかかっていて、表情がわかりにくい男の人だった。
「こちらになります。すぐにお水をお持ちしますね」
店員が行ってしまうと「失礼します」と小声で言って向かいの席に座った。
店員がお水を持ってきたのと、他の店員が私の料理を持ってきたのとが一緒になった。その料理を見て男の人が言った。
「すみません。これってまだありますか」
店員は黒板を見た。丁度他の店員がメニューを消しているのが見えた。
「申し訳ございません。こちらのランチメニューは売り切れとなりました。お食事はこちらの中からお選びいただきいと思います」
店員がテーブルに置いてあったメニューを開いて、男の人に差し出した。
「そうですか。・・・じゃあ、これを」
「ランチセットにしていただけますと、ミニサラダと飲み物とミニデザートがつきます」
「じゃあ、ランチセットでお願いします」
私はその会話を聞きながら、カトラリーの中からスプーンとナイフとフォークを取り出した。まずはスプーンでスープをすくって飲んだ。
ゴクリ
んっ、と向かいを見ると、男の人が私が飲んでいるスープを凝視している。私の視線に気がついた男の人は気まずげに視線を逸らした。もう一口スープを飲んだら、また向かいから、ゴクリと音が聞こえた。
・・・これは、もしかしなくても、このランチについたスープが飲みたかったみたいだ。さっき彼がランチセットにしたものには、スープがついていなかったから、多分本日のランチにつく特別品なのだろう。
もう一度スプーンをカップに入れたら、彼の羨ましそうな顔が目に入った。私は溜め息を吐き出すとスプーンを置いてカップを男の人の方においた。
「あの?」
「食べ掛けで申し訳ないのですけど、もしよかったらどうぞ」
「えっ、でも・・・これはあなたのもので」
「そんな顔で見られていたら、美味しく食べられませんから」
男の人はしばらくためらったあと、「いただきます」といって、カトラリーからスプーンを取ってスープを飲んだ。その顔がほっこりと緩んだ。
彼の料理も来て黙々と二人で食べた。デザートがきて、私のはチーズケーキ彼のはミニアイスが二つ乗っていた。
「もしよろしければこれを食べませんか」
彼はアイスのお皿を私に寄こそうとした。私はそれをとどめると、ミニアイスを半分ぐらいずつを取って自分のチーズケーキのお皿に載せた。
「全部食べたらカロリーが心配だから」
とニッコリ笑ってそう言ったら、彼は一瞬キョトンとしてから、笑い出した。
「こんなに小さいのにカロリーを気にするなんて~」
「それが乙女ですから」
私は真顔でそう言ってから、ニヤリと笑ってみせた。
会計を済ませる時に領収書をもらう。実はこの昼食は会社持ちだったりするのだ。
彼も同じようにして店の外に出てきた。私は軽く会釈して離れようとしたら、腕を掴まれた。
「待って。その、もしよかったら連絡先を教えてくれないかな」
これが彼と私の出会いでした。
かわいい妹分の蒔灯。
私の中では2番目に妹にした人(笑)
いつも控えめに私の事を心配をしてくれるのね。
そんな妹分にはどんな話にしようかと、少し迷ったの。
そう云えば仕事で外に出た時にランチが・・・と、活報に書いていたことがあったなと思い、そこから一気に書き上げたのよ。
こんな話で良かったのかなと思ったけど、喜んでもらえました。
ありがとうございました。