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あなたとの縁(えにし)にSSを ~ 短編集 ~  作者: 山之上 舞花
2021年 たこす様企画 プレゼントSS
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友人が所属する○○の○○が無茶ぶりしてきます! (アンリ様へのSS)

この作品はたこす様主催の『この作品の作者はだーれだ企画』において、私(山之上舞花)の作品を当ててくださった方へのプレゼントになります。


リクエストは『ええと、それでは私の投稿一覧に「どれほど季節がめぐろうとも、星が瞬こうとも」という詩を集めた連載があるのですが、その中からお好きな詩にインスピレーションを得て短い話を作ってもらうことは可能でしょうか??』でした。


「無理無理無理無理~、ぜぇったーい、むーりー!」


座る私を囲むようにしている人たちを睨みつけながら、私は声を張り上げたのだった。



同郷の友人であるサナから招集がかかったのは、鬱陶しい梅雨の時期だった。

同郷のもう一人の友人ユミと共に待ち合わせの茶店に着いたものの、店に入らずに引きずられるようにある場所へと連れていかれた。


そこには統一性のない服装をした男女が数名いた。そしてなんの説明もないままに、彼らの舞台稽古を見せられたのだ。


そう。サナは小さな劇団に所属する女優見習いだ。……いや、女優のタマゴと云うほうが正しいのかな?

サナは女優になるために上京してきたのだから、台詞がある役をもらえて、夢へと一歩近づいたのだろう。


だけど、こんな関係になるとは、故郷のプラットホームで会ったあの時には思いもしなかった。



私とサナ、そしてユミは高校が一緒だった。だけど親しい友人というわけではなかったの。

しいていうなら、私が3年間よくつるんでいた友人と部活が一緒だったのがサナで、もう一人同じようにつるんでいた友人(つまりこの二人と私は3年間同じクラスだったのよ)の、中学からの友人がユミだった。

つまりの友人の友人ということで、顔見知り程度の認識だったのよね、あの時までは。


私とユミは大学に進学するための上京で、サナは先ほどの理由での上京だった。そして、この時に誰も両親の付き添いがないのが共通点だったのね。

だからなのか、自然と挨拶から「同行者がいないのなら一緒に」という話の流れになった。


東京に着くまでに意気投合したのも、そして大学は違うけど近い大学に通うこと、なのに県人会でお世話になって入る寮が一緒だと判ったことなどが、ユミと私を急速に近づけたのだろう。

サナも住む予定のアパートが私たちの寮と、ほど近いこともわかったし。


大学が始まって落ち着いてから、度々三人で顔を合わせたのは、同郷の気安さからだったし。



「どう思った?」

「「はい?」」


稽古が終わっての開口一番の台詞に、私とユミは疑問で返したのは、悪くないと思う。いきなり説明も無しに、ただ稽古を見せられたんだから。


聞いてきた男性は怪訝な顔をしてサナのことを振り向いた。


「おい。まさかとは思うけど、何も説明せずに連れてきたのか」

「だってぇ、先入観がないほうがいいかと思ったんですもん」

「お前ってやつはー」


サナの返事に額に手を当ててため息を吐く男性。それから私たちのほうを見て頭を下げた。


「すまん。いきなりこんなものを見せられたって、訳がわからないよな。説明させてほしい」



男性の話を要約するとこうだ。今までこの劇団の舞台の脚本を書いていた人が、親戚の不幸で帰郷し、そこで事故に巻き込まれて身動きがとれない状況になってしまったそうだ。

そして、この劇団は小さいながらも固定客がつくくらいには一部で有名で、もうすぐ定期公演を行うそうだ。

この定期公演は毎年新作をやっているということで、脚本家の不在に困っているのであった。


そう。何をとち狂ったのか、サナが私をこの稽古場に連れてきたのは、舞台の脚本を書かせるためだというのだ。


……というわけで、冒頭の私の台詞になるのである。


「そんなことを言わずに話を聞いてくれ。脚本と云ってもこの詩をモチーフにして群像劇にしたいんだ。元があるからやりやすいだろ」

「そんなこと、あるわけないじゃないですか。ずぶの素人に何やらす気なんですか!」

「サナから聞いているんだぞ。君は高校の時に演劇部の脚本を書きあげたって。その舞台はその高校史上最高の盛り上がりだったってこともな」

「だから何? 学生の部活で称賛されたからって、プロで通用するなんて思うわけないじゃない!」

「そんなもん、やってみなけりゃわかんねえだろ。つべこべ言わずに、この詩を見てみろ」


ズイッと渡された紙には、次のような詩が書かれていた。


―・-・-・-


白でも黒でも、愛は愛



あなたを信じていました

どれほど取り繕うとも

硬派を気取ろうとも

口をつぐもうとも

あなたは感情豊かな人だと信じていました

頑なに信じていました


落ち込みやすくて

うたれ弱くて

だけど芯は強い人だと

激しい情熱を有する人だと

モノクロを好むあなたでも

わたしを一途に愛していると

盲目に信じていました


でも信じられなくなって

あなたの手を離してしまい――



ああ


白でも黒でも

愛は愛だったんですね


ようやく気づきました


白でも黒でも

愛は愛だったんですね


愛をささやかなくても

触れ合おうとしなくても

同じ時を過ごそうとしなくても

愛は愛だったんですね



教えてくれたらよかったのに



―・-・-・-


「はぁ~?」


思わず口から呆れた声が出たのは仕方がないと思うのよ。

どこをどうとったら、この詩から群像劇なんて言葉が出てくるのよ。


その気持ちのままに下から半眼で睨みつけた。


「どうしてこれから群像劇なんて発想になるわけ?」

「そう言うんならお前はどういった話が浮かんだんだよ」


挑発するような言い方に反射的に言い返した。


「発想力のないあんたに教えてあげる。これはタイトルにも愛という言葉が入っているでしょう。それなら恋愛に重点を置いた話にするべきよ。つまり登場人物すべてにスポットを当てるような群像劇じゃなくて、主役を決めて話を進めるように作った方がいいでしょう」

「へえ~。それなら、話の流れはどうするんだ?」

「そうねえ、舞台は……中世ヨーロッパにして、騎士と姫の恋物語を軸にした話にするかな」


簡単なプロットを頭の中で構築しながら答えたら、目の前の男はニンマリと嫌な笑い方をした。

マズイと思ったけど、もう遅かった。


「ほーら。たったこれだけで話の流れを思いついたんだろ。やっぱ、お前なら書けるんだよ」



結局、私は口説き落とされて脚本を書くことを了承することになった。

だけど、定期公演がもうすぐ行われるのは本当だけど、新作を公開するのは秋なのだそうだ。なので、脚本を用意するのに、ひと月ほど、猶予がもらえたのである。


ついでに……なぜかユミまで、この劇団に入りびたりとなった。私の脚本に興味を示したユミは、ついでに自分の欲望を叶えようとしたんだよね。

ユミは……コスプレーヤーだったのだ。好きなキャラクターになりきるために衣装を手作りしているんだって。

それで、中世ヨーロッパの衣装と聞いて、創作意欲を刺激されたとか。


ワイワイと衣装のことで盛り上がる劇団員を横目に見ながら、戻ってきたこの劇団の脚本家にダメ出しをされる私は……解せぬと、日々思うのだった。



書き上げるまで一年も経ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。


思ったよりも難産で一時頓挫しかけていたのですが、第二回だーれだ企画の開催に当たりやっば~となったのです。

改めて構築し直してこういう感じになりました。


私は「どれほど季節がめぐろうとも、星が瞬こうとも」の中の『86.白でも黒でも、愛は愛』を気に入ったので、すぐにプロットをたてました。


最初は三人の女性が公演のあとに落ち合って、公園のことをあーだこーだと言いあっていたら、気がつけば異世界に居た……だったんです。

今だと、なぜ書き進まなかったのか、わかります。


そうそう。アンリ様から詩の掲載の許可はいただいておりますので、違法転載ではございません。


この話を書かせてくださったアンリ様に感謝を!

ありがとうございました。

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