いつもの休日? ー古川アモロ様へのプレゼント
プカ~
口から吐き出した煙は、普通に煙だった。
……
いや、何言ってんの、俺。
たまたま思い出したからやってみようと思っただけだけど、そう簡単に出来るものじゃないだろう。
試していたのは、煙を輪っかに吐き出すやつ。
煙草を吸うようになって十何年。今までそんなことをやってみようと思ったことはなかった。
だけどあまりにも暇でヒマで、煙草を吸っているんなら試してみっかと、思っただけさ。
「あ~、本当にいい天気だな~」
ぼやくような声が口から洩れた。
視界に入る景色は古びた小さな社がある神社の木々越しの空。見事に雲一つない晴天だな。
休日の今日は珍しくなんにも用事がない。
そんな日は煙草と財布とスマホを持って、ぷらりと散歩に出るのが常だったりする。
その常のとおりに家を出て、たまにパシャリとスマホのカメラで写真を撮りながら、やってきたのが近所の神社だった。
煙草と一緒に持ち歩く携帯灰皿に灰を落としながら、また暇だなー、と思う。
あー、ヒマだ。ひまだ。暇だー!
なんか面白いことよ、起これ!
ネタよ、俺に、降ってこい!
……
なんて、そんなことがあるわきゃないか。
神社について三本目の煙草に火をつけて煙を吐き出した時、「ん?」と俺は思った。先ほどから何度か姿を見ている女性が、また通ったのだ。それもかなり大きく首を振りながら。いや、違うか。体ごとあっちこっちと向いているものな。
しばらく見ていると、女性は右手に紙を持ち、左手にはスマホを持って、それを見ながらキョロキョロと見回していた。
これはあれだな。目的地に辿り着けないという、あれ。
……迷子なのだろう。
興味をひかれた俺は、座っていた石から立ち上がり、女性へと近づいた。
「どうかしたんですか」
「えっ? ええっ!」
何故か、女性に盛大に驚かれてしまった。どうやら木陰にいた俺に気がついていなかったみたいだ。
近づいた俺は彼女が手に持っている紙を覗き込んだ。
「あ、あの」
「もしかして家を探しているの?」
女性は焦ったように手を胸元に当て、紙とスマホを見えないようにした。けど、紙に書いてあった地図らしきものはばっちり見えたから、聞いてみた。
「あっ、は、はい。その、書いてくれた地図がわかりにくくて」
「住所は?」
「それが、番地を入れても出てこなくて……」
女性は困ったように眉尻を下げて、おずおずと紙を俺に見えるように差し出した。それを受けとり地図をよーく見た。
うん、わかりにくいな、これ。
「相手に電話して迎えに来てもらうことはできないの?」
「それが、何度もかけているのですけど、電源が落ちているのか繋がらなくて……」
あー、それは、まあ、よくあることだよな。
「それじゃあ、自力で行くか、相手が気がついて連絡くれるのを待つしかないわけか。だけど、この地図の神社がこれなら、たぶんあっちのほうだな」
「本当ですか」
女性は縋りつくような目を俺に向けてきた。
……いったいどれくらい迷っていたんだ?
そう俺が思うぐらいに必死な目をしていた。
女性は俺が指さした方を見て、地図を見なおして顔を上げると、途方に暮れた表情を向けてきた。
「辿り着ける気がしないのですけど……」
「だろうな」
女性の呟きに俺は頷いて肯定してしまった。この先に何度か向かった彼女は、結局わからなくて戻ってきたんだものな。神社に。
「住所を教えてくれないか。わかるところまで送ってやるよ」
「ご迷惑ではないですか」
「迷惑じゃねえよ。それにこの先にうちがあるからよ」
「ええっと、そういうことでしたら」
恐縮しながら言った番地は……たぶん俺んちのそばだろう。だけど聞き覚えがないから、最近できた分譲住宅のどれかだな。あそこらへんは区画整理が行われて、番地が改めてつけられていたからだ。
歩きながら話をしたら、目当ての相手は最近引っ越して住みだしたそうだった。それならあの地図も仕方がないかと思った。
……
そう思った俺は馬鹿だった。
辿り着いた先は、知り合い……どころか、小学校から一緒にヤンチャしたやつの家だった。彼女は奥さんの友人なんだと。
「というか、お前ここに何年住んでんだよ。もう少しまともな地図書けよ!」
「そういったってな、細かいところなんか覚えているかよ!」
「これなら小学生のほうがわかる地図を描けるわ!」
「う、うるせぇよ。俺だって、俺だってなー!」
やつは目に涙をためて黙った。
「ちょっと、うちの人をいじめないでくれる」
「おう、どっちかっていうと、俺はお前にこそ文句がある」
「な、なによ」
「人を招くんだったら、連絡が取れるようにしとけよ」
「仕方ないじゃない。まさか電源が落ちてるなんて思わないでしょ」
奥さんも自分が悪かったと思っているのからか、目が少し泳いだけどすぐにキッと睨みつけて文句を言ってきた。それになぜかプチッと切れた俺は容赦のない口撃を繰り広げた。
フッ
やらかした自覚があるやつらは、だんだんとおとなしくなっていったけどな。
そんなギャーギャーと言い合う俺たちのことを、彼女は目を丸くして見ていたのだった。
古川アモロさんのことを知ったのは、ある方の活動報告のコメントから。
とても面白そうな人だなと思い、しばらくは活動報告を覗きに行っていました。
そして、あちこちの文フリに行っていると知り、東京で行われる文フリなら私も行けそうだなとなり、行くことを決めました。
そしてそして、見事に会うことができました。
それが2018年の11月のことでした。
いやー、活報通りの楽しい方でした。
それに、アモロさんのおかげで他にも何人かの方と、お会いすることができましたね。
昨年(2019年)の文フリ東京でもお会いすることができて、しっかりお土産をゲットできたことは僥倖でした。
誕生日を過ぎてしまいましたが、お届けできて良かったです。
喜んでいただけました。
……
いや、本当はビクビクものでした(苦笑)
こういう恋愛モドキの話はアモロさんの好みではないのかもしれないと思ったりしたのでね。
本当によかった~ε-(´∀`*)ホッ
ありがとうございました。




