忘れていた日に・・・ -peco様へのプレゼントー
今日もこんな時間になってしまったか。時計を見ながら帰り支度をして会社を出た。
最終電車ではないけど、その2本前の電車もそれなりに混んでいた。吊革につかまりながら、溜め息が零れそうになる。
もう彼女とどれくらい会っていないのだろう。かれこれひと月。いや、それ以上か。
溜め息を吐きそうになり、慌てて口を押さえた。
彼女とのつき合いはもう4年になる。大学の3年の時に知り合って、つき合い始めたのが4年の時。そろそろプロポーズをしようかと思っていた頃なのに。なんで仕事がこんなに立て込むんだよ。
最寄り駅についてトボトボと歩いていく。住んでいるマンションに着いて、なんとはなしに上を見上げて・・・。
見えたものに目を擦った。そして、もう一度見て、俺はダッシュしてマンションの中に駆け込んだ。
エレベーターを待つのがもどかしくて、階段を2段飛ばしで駆け上がる。流石に少しきつくなった頃、住んでいる7階に辿りついた。そこの踊り場で少し息を整えて自分の部屋へと向かう。
ドアを開けようとしたら、鍵がかかっていた。あれは幻だったのかと思いながら、インターホンを押す。応えはない。
鞄のポケットから、もどかしく思いながら鍵を出してドアを開けた。
部屋の中は暗かった。一縷の望みを持ってリビングの扉を開けたけど、そこには誰もいなかった。
やはりあれは幻だったのかと、力が抜けた手から鞄が落ちた。
フワリ
と、背中に張り付くように抱きしめられた。
「おかえりなさい。お仕事疲れ様」
優しい声で告げられた言葉に、すぐに返事ができなかった。唇を舌で何度も湿らせて、やっと言葉を口にした。
「来ていたんだ」
「うん。このところずっと会えなかったからね。だから、会いに来ちゃった」
お腹にまわっている君の手をそっと包むように手を置いた。
「それにね、あなたのことだから忘れているでしょう」
「何を」
君の手が緩んで俺の手の中から逃げていった。その手が俺の背中を押すように歩を進ませる。
暗い部屋の中をテーブルのところまで来て、君がスマホのライトをつけた。見えたものに目が点になる。
「えっ?」
「やっぱり。忘れていたのね」
灯りの中にバースデーケーキと君の笑顔が見えた。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
俺は胸がいっぱいになって、君を抱きしめた。
「君のことを愛してる。だから結婚しよう」
本当はいろいろ考えていた。あんなシチュエーションやこんなところでプロポーズしようなどと。だけど、こんな不意打ちをされたら、今しかないと思ってしまったんだ。
「はい」
君の小さいけどはっきりとした返事に、俺はとびきりの笑顔を君に向けたんだ。そして。
「絶対幸せにするよ」
そう言って君に誓いのキスをしたんだ。
この方に贈る話を書く前に、書いていた人の分が遅れてしまい、その余波でこの方にも遅くなってしまいました。
だけど、この話は、パッと浮かんでササッと書き上げることができたのよ。
ご本人は・・・また自分を主人公と誤解をされたけど、違うのよ! 皆さん!
イメージは寄せているけど、主人公として書いてはいないからね。
でも、喜んで頂けて嬉しかったです。
ありがとうございました。