ウォークラリーにて -巻神様の下僕様へのプレゼント-
いつもは乗らないバスに乗り、駅前で乗り換え。次は始発になるから、最初から座れるのがうれしい。
俺はバスに乗り二人掛けの窓際に座った。駅前からは隣に座ってくる人はいなかった。
次のバス停で何人かが乗り込んできた。俺の隣にはかわいい女の子が座った。その子は座る時に微笑んで軽く頭を下げてから座ったのだった。
偶然にもその子と俺の目的地は一緒だった。バスを降りて同じように降りた人達と一緒に歩いて行く。
辿り着いた先にはかなりの人数が集まっていた。
俺は邪魔にならないように隅の方に立っていた。周りの人たちを見ているとやはり何人かで参加している人達が多い。
というより一人で参加するもの好きは俺くらいなのかもしれない。
今居る場所はウォークラリーの出発点。最近運動不足の俺はこれに参加することにした。
いや、本当は会社で気になる人が、これに参加すると言っていたのを、小耳に挟んだんだ。俺は何も考えずに、参加することを決めたんだ。あわよくば、話すきっかくが出来ればという下心付きで。
そんな俺の目論見は彼女を見つけた所で、敗れてしまった。
「はあ~」
思わずため息が出た。そうだよな。なんで、彼女が友達(女)と参加すると思っていたんだろう。友達(男)と参加する可能性をなんで考えなかったのかな。
「「はあ~」」
もう一度盛大に溜め息を吐いた。
ん?
今、誰かと被らなかったか?
横を見たら、バスで一緒になった女の子がいた。女の子も目を丸くして俺を見ている。
その時主催者の挨拶が始まった。
注意事項などを聞いてから、それぞれ出発していく。俺も何となく流れに乗って歩き出した。
数人を挟んで前方に友達(男)に笑いかける彼女の姿が見えた。
「「はあ~」」
あっ! また被った。
隣にはあの子がいた。そうか、あのまま同じタイミングで歩き出したのか。
だけど、この子も一人みたいだし、盛大な溜め息の原因はなんだろう。
興味をひかれた俺は女の子に話し掛けることにした。
「君は一人で参加なの?」
「・・・そちらも一人で参加ですよね」
固い声で返事が返ってきた。少しとげとげしい言い方。女の子の視線は前方の一点を見すえていた。
「そうだけどさ・・・その、どうやら似た理由で参加したみたいだね」
「何のことですか」
固い声で、前を見据えたまま答える女の子。
「気になる人を追いかけてきたんじゃないの」
ボソリとそう言ったら、女の子の顔が真っ赤になった。
「な、な、なんで? わ、わ、わか「ちょっと落ち着こうか。俺も同じ理由だからさ」
頬をポリポリと掻きながらそう言ったら、パニックを起こしかけた女の子は動きを止めた。俺も一緒に立ち止まった。
「あの、立ち止まられると邪魔なんですけど」
後ろから来た人にそう言われて、俺達は「すみません」と謝ると歩き出した。
「えーと、あなたも気になる人を追いかけてきたのですか」
「まあ、そうだな」
しばらく無言で歩く俺達。
「その人のところに行かないの」
おずおずと訊いてくる女の子。
「行きたかったけど、仲良さそうに喋っていたからさ。行けないよな」
そう俺が答えたら、見上げていた女の子の目に涙が浮かんできた。
「お、おい」
やめてくれよ。ここで泣きだされたら、俺が泣かせたみたいじゃないか。
「そうだよね。仲良さそうに話していたら、行けないよね」
そのあと、俯いた女の子は黙り込んでしまったんだ。
終着点について流れ解散。俺は女の子と解散場所から少し離れた食事処にいた。昼ご飯を食べながら、お互いの淡い恋心について告白大会をした。
女の子も憧れて少しでも近づきたかったそうだけど、相手にされてなかったとか。
「こんなかわいい子に思われて、気がつかないバカ男のことなんか忘れちゃえ!」
なんて話しているうちに、女の子はモジモジし始めた。その様子に「ん?」となったけど、俺は慰めるのに必死で、周りが温かい目で見ていることに気がつかなかった。
そして連絡先を交換した俺達は頻繁に会うことになり、女の子が俺の彼女になったのだけど、あとからあの時のことを言われた俺は、恥ずかしさに赤面したんだ。
俺は慰めていたつもりだったけど、俺の言葉は口説き文句になっていたそうだ。周りの視線に居たたまれなくなって彼女はモジモジしていたとか。
ハハハッ。やっちまったい!
でも、隣で楽しそうに笑うかわいい彼女に、まあ、些細なことだよなと思う俺だった。
親しくなったのに、誕生日を聞くのが遅れてしまった。
おかげで、グググググッ、っとなりました。
訊いた時には過ぎていたから。
でも、私ルールで親しくなった時期と誕生日を確認して。
よし、書いちゃる!
なのに、最初に考えたネタだと書けなかった。
運転免許証の更新で出会う話。
多分、講習の建物が思い浮かばないせい。
なので、しばらく放置しました(笑)
他の企画作品を書き上げて、フッと降りてきました。
そこから一気に書き上げたのがこの作品。
おかげで、また1時間クオリティー。
でも、喜んでもらえたから良しとしよう。
ありがとうございました。