課の親睦会にて -サフト様へのプレゼントー
手を伸ばしてブドウの房に触れる。ハサミを使って切る。途端にズシリと重みが手に伝わった。
私がいるのはブドウ園。別にここで働いているわけではない。だってここは観光ブドウ園だから。
会社の仲の良い同僚に誘われてここにやってきたけど、来るんじゃなかったかな。家族で来ている人が二人。恋人と参加している人は三人。私だけが一人で参加なの。さっきから課長の娘ちゃんに気を使われている?
課長の娘ちゃんは御年5歳のおしゃまなお嬢様。一人の私に話しかけてくれて、一緒にブドウ狩りをしている。いや、ていのいい踏み台か?
さっきから娘ちゃんを持ち上げて、あっちのブドウ、こっちのブドウと移動をしている。中々気に入ったものに当たらないのか、何度も抱き上げて腕がプルプルしてきた。
それをやっと課長が引き取りに来て、自分の分のブドウを取り始めたところだった。もう、みんなは自分の分を採り終わって、計量に移っている。
少し焦りながらも、先程果樹園の方が説明してくれた、美味しそうなブドウを選別しながら採っていた。
「それより、こちらの方が良い感じですよ」
突然声を掛けられてビクリとした。見ると、主任の弟と紹介された人がそばのブドウを指さしていた。確かに私が持つものよりもおいしそうに見えた。
「えーと、いいのですか。私に譲ってしまって」
「ええ。もう、甥がいっぱい採りましたから」
私はそばにいってそのブドウを採らせてもらった。これで渡された籠にいっぱいになった。
「主任と一緒にいなくていいのですか」
「さっきまで君と同じで散々甥の面倒をみさせられたからね。いい加減子守りから解放してもらったんだよ」
そう云えば彼も主任の息子さん、御年5歳を抱き上げていたのを見かけたなと思った。
「君は彼氏と参加しなかったんだね」
唐突にそんなことを言われて目が丸くなる。
「彼氏なんていませんけど」
(いたら、私も二人で参加するもの)
と、カップルの方を見ながらそう言った。
「本当に?」
「本当にいません」
疑うようにいう弟さんのことを睨むように見やる。
(こちとら今まで彼氏なんぞいたことはないわい!)
と、心の中で悪態をつきながら。
弟さんは少し目を瞠った後、微笑んできた。
「そうか~、周りの男は見る目がないね。こんな美人を口説き落とせないなんて」
「・・・はっ?」
「君の彼氏に立候補してもいいかな」
ニッコリ笑った中に不穏な気配を感じて、私は軽く目を眇めた。
「結構です。お断りします」
「ええ~、なんでさ。自分で言うのもなんだけど、俺ってお買い得よ」
軽い言葉に私はもっと目を細めて冷たい視線を向けた。
(遊び人もチャラ男もお断りだい!)
と、視線に込めながら弟さんを見る。
「遊びで付き合うつもりはないから」
そう言って踵を返し、計量しているところに向かった。弟さんもプラプラとついてくる。
(って、当たり前か。みんなはそこにいるのだものね)
そうしたら。
「じゃあ本気ならいいんだね」
と、みんながいる所で言われた。みんなの視線が私達に集中した。
「お断りします」
「その、断る前にもっと知りあおうよ」
「知り合ってどうするんですか」
「知ってもらってつき合うに決まっているだろ」
「知ってつき合わないということもありますよね」
「君は強情だな」
「強情じゃないです。慎重なだけです」
「物は言い様だな」
気がつくとこの小旅行の間に彼と言い合いをし続けたのでした。
そのあと、事あるごとに私の前に姿を現しては、食事だ、映画だ、レジャーだと連れ出す彼。根負けした私がおつき合いをOKするまでにどれだけかかったのかは、また、別の話。
彼女もかなり親しくさせていただいている方。
彼女自身のイメージイラストを送ったら、彼女からもお返しに頂いてしまったの。
それで、誕生日がかなり過ぎていたけど・・・いたけど・・・いたけど・・・(エコーww
よし、送ろう!
と、書き上げたのがこれ。
イラストの赤い花が、なんかの実に見えていたのよ。
そこから、出て来たのがブドウ狩り!
秋だから、梨狩りでもよかったのだけど、ブドウの方が好きだったからブドウにしました。
ありがとうございました。