××を追いかけて -小鳩小鈴様へのプレゼントー
SSを書くきっかけになりました。
「あら?」
友達につき合ってのショッピングからの帰り道。見たことがある縞模様が目の端をかすめた気がした。そちらを見た私は、やっぱり見間違いではなかったと思った。
視線の先にはブルーグレイの地色に黒の縞模様のアメショーが歩いている。いや、本当はアメショーなのかわからない。
この猫は私が住むアパートの隣の家のところでよく見る猫だ。門のそばの塀の上にいつもいて、私が朝出掛ける時によく見かけていた。
猫はそんな私に気がつかずにそのまま歩いて行く。この時何故か私の好奇心が刺激された。つい猫の後を追いかけてしまったのだ。
狭い路地を抜けて歩いて行く姿を追ううちに、なんだか楽しくなってきた。そういえば、アニメにあったよね。電車に乗る猫を追いかけて知らない街を歩く話。
そんなことを思いながらついていったら・・・。
ひらけたところに出たと思ったら、うちのアパートの裏の空き地だった。ここは前にマンションを建設する予定だったそうだけど、いろいろあって立ち消えになり、ここ数年空き地のまま。手入れもされていないから、草だらけだ。
猫は草むらに入ったら身を低くした。離れたまま見ていると、どうやら雀を狙っているようだ。私も息を殺し、じっと猫の様子を伺った。
猫がサッと動いた。
バサバサバサ
間一髪雀は飛んで逃げていった。猫は残念そうに見送っていた。
「うふふっ」
つい、笑い声が漏れてでた。
「そんなに面白いものが見れますか?」
突然耳元に聞こえた男の人の声にビクリとした。後ろにいたのは20代前半位の男の人。私の肩越しに空き地を覗いている。
「ああ、ここにいたのか」
そう呟くと男の人は空き地に二歩足を進めた。
「黒月、帰るぞ」
男の人の声に猫が「なぁ~ん」と鳴いて近づいて来た。
「黒月?」
「ん? こいつの名前だよ」
男の人は猫を抱き上げると私のほうに右側を向けてきた。模様がちょうどまん丸く見える。
「それからここ」
今度は猫の顔を正面に向けてくれた。額の模様が三日月みたい。
「あっ、だから、黒月なんだ」
「そう」
男の人は私の言葉に破顔した。その笑顔に心臓がドキリと音をたてた気がした。その時黒月が男の人の腕の中から身をよじって抜け出し足元に降りた。
「あっ」
そのまま私の足に頭をこすりつけてきた。私はしゃがんで黒月の頭を撫でようとしたら、スルリと黒月は離れていった。黒月の歩く先をみたら、見覚えのある草が生えている。黒月は来いと云うようにそこで立ち止まっている。
そばに寄るとまるで待っていたというように四つ葉のクローバーが目に入ってきた。
「うそみたい」
その四つ葉を触りながら、私の口から驚きの声が漏れた。
「本当に嘘みたいだな」
そばに来た男の人も私が触っている四つ葉の隣。もう一つの四つ葉を摘み取った。微かに触れた指先に心臓がドキドキと音をたてはじめた。
ふと見ると目の前に手が差し出されていた。しゃがんでいた私はその手につかまって立ち上がった。手を離そうとしたら、強い力で握られた。彼の顔を見ると真面目な表情を彼はしていたの。
「君の名前を教えてくれないか?」
これが彼と私の恋の始まりでした。
ちょうど小鳩様がクローバーの写真をエッセイに投稿された日です。
それでこの話が浮かんだのです。
あと、猫愛を感じる作品を書かれていたので。
ありがとうございました。