表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

(6)

 7月23日 午後9時半


けたたましいサイレンを鳴らしながらドリームランドへ急行するパトカー数台。

遅れて金次郎の運転するセダンも到着した。


「金さん!」


パトカーから高坂と共に急行した里美は、懐中電灯を金次郎に投げて渡した。

金次郎は受け取るなりドリームランドの中に走る。


「おい待て! 突っ込むな! 難波!」


高坂に止められるが、金次郎は構わず園内へと走りドリームキャッスルへと向かう。

その途中、人影が見えた。


「誰だ! 呂久か?!」


立ち止まり懐中電灯で照らしながら見回す金次郎。

そこに里美も追いついた。


「ど、どうしたんですか? 金さん!」


「今人影が……高坂! 出口を封鎖しろ!」


叫びながら金次郎は里美と共に再びドリームキャッスルを目指した。

すると、城の方から誰かが走ってくる。

金次郎は立ち止まり、警戒しながら懐中電灯を翳した。


「た、助けて……!」


走ってきたのは井之頭 香苗。

手にはロープが。足にも数周巻き付いている。


「里美ちゃん! 彼女を頼む!」


「へ? あ、はい!」


香苗を里美に任せ、金次郎は城の中へと走った。

そのまま地下室へと駆け下り、拷問部屋へと走る。


「……誰も……居ないか?」


「一足遅かったデス」


その時、真後ろに立つ女性に驚く金次郎。

病院で会っていた探偵の女性だ。


「お、お前……何があったんだ」


「私が来た時には……終わってマシタ」


言いながら女性は鉄の処女の扉へ手を掛け、一気に扉を開く。

そして崩れるように地面へと転がる死体。


金次郎は血まみれの死体の顔を確認する。


「……須藤か。なんでコイツが……」


「金サン。刑事が入ってキマス。私は消えますガ……気を付けて下サイ。アクアツアーとか言う所には絶対に入らないでクダサイ、あそこには怪物がイマス」


「あ? お前何言って……」


振り向く金次郎。そこには既に女性の姿は無い。

そして入れ替わるように数人の刑事達が入ってきた。

須藤の死体を発見し、一体どうなっているんだと首を傾げている。


「呂久は……あいつは何処行った」


その場を他の刑事達に任せ、地下室から出る金次郎。

探偵が言っていた言葉が気になる。アクアツアーには絶対に近づくな、といっていた。


「まさか……さっきの人影は……。いや、まさか行ってないよな……」


先程見た人影、もしやあれが呂久だったのか。

金次郎は城から出て、辺りを懐中電灯で探し回る。

だがそれらしき気配は無い。


「金さん! いました! 呂久です!」


そこに里美が駆け寄り、金次郎へ叫んだ。


「里美ちゃん! 井之頭は!」


「パトカーの中です! っていうか急いで! なんかヤバいんですよ!」


里美について走る金次郎。

向かう先はアクアツアー。


「マジか……里美ちゃん! 拳銃とか持ってる?」


「え、いや……急いでたんで……制服組に言ってください! っていうか何でですか! 大学生に拳銃向けるつもりですか!」


「いや、違くて……」


 アクアツアーの前には既に警官が群がっていた。

しかし中に入ろうとしない。一体何があったのだ、と金次郎は唾を飲みこむ。


「おい、どうした! 呂久は!」


「そ、それが……変な生き物に……攫われて……」


探偵の言葉が何度も脳内に再生される金次郎。

怪物がいる、絶対に近づくな、という言葉を。


「チャカ貸せ! 俺が行く!」


「ちょ! 一人で突っ込まないでください!」


金次郎は制服の警官から拳銃を奪い取り、里美も後についてアクアツアーの中へと入って行った。

 中はまるでジャングルのようだった。本来ならば船で巡回するアトラクションだが、設備のメンテナンスをするために作られた足場がある。金次郎と里美はそこを走りながら呂久を探した。


「呂久ー! どこだー!」


「呂久くーん! 返事してー!」


二人は呼び掛けながらアクアツアーの内部にある浮島へとやってくる。

そこには恐竜や巨大昆虫などの模型が置かれていた。作り物とは言え、夜に見ると背筋が凍る。


「里美ちゃん、離れるなよ……っていうか何で来たの!」


「だ、だって! 金さん一人で行かせるわけには……」


その時、呂久の物と思われる叫び声が聞こえた。

金次郎は声がした方へと振り向きながら走る。


「くそ……間に合え……間に合え……!」


呂久の叫び声が数回続く。それと共に、まるで食事をしているかのような咀嚼音も。


「な、なんですか、この音……」


「里美ちゃん……君はここで……」


引き返せ、と言おうとした時、金次郎の目の前に病院で見た少女が現れた。

 少女はゆっくりと、まるで金次郎を案内するかのように歩き出した。


「え、金さん? ちょ、待って……」


里美もそれに続き、金次郎は拳銃を構えながら少女の後に付いて行く。

だんだん大きくなっていく咀嚼音。呂久の叫び声は弱弱しくなっている。


「呂久……呂久ー!」


少女が消えた瞬間、金次郎は前方へと走り、開けた空間で倒れている呂久を発見する。

そしてその傍ら。


咀嚼音を立ながら食事をする怪物が居た。


能面のような顔に蜘蛛の体。


須藤の右腕を噛みちぎり、一心不乱に食いついている。


「な、なんですかアレ……」


思わず声を上げる里美。その声に反応した怪物は、金次郎と里美の姿を確認すると一瞬で目の前に迫って来た。


「なっ……うお!」


思わず尻餅をつく金次郎。投げ出した足に食いつかれ、そのまま引きずられる。


「くぉ……おぉぉ!」


二発、頭部に発砲する。

怪物の頭から血が吹きだすも、何事も無かったかのように金次郎を水の中に引きずり込む。


「金さん! 噓、嘘!」


里美は腰が抜けつつも必死に立ち上がり、金次郎が引き込まれた水面へと走る。


「金さん! 金さん! どこ……どこ!」


金次郎を捕まえようと水の中に手を入れる里美。


 何かが手に掴まってくる。

里美は必死に捕まえ、そのまま引き上げた。


 だが里美が引き上げたのは、能面の怪物


「いや……きゃぁーっ!」


再び腰が抜け、必死に逃げようとする里美。

だが怪物はそんな里美を嘲笑うかのように、ゆっくりゆっくり近づいてくる。


「や、やだ……ちょ……まって……おねがい……いや……」


背が木にぶつかり、追いつめられる里美。

目の前に能面が迫る。そしてゆっくりと、その大きな口を開いた。


里美を丸呑みに出来る程の大口。


死を覚悟する里美。


だがその時、里美の横に拳銃が投げて寄こされた。


咄嗟に拳銃を手に取り


「あぁぁっ!」


残り三発、残っていた弾丸を連射する。

反動で肩が外れ、痛みで気を失う。


「はぁ……はぁ……里美ちゃん……」


水の中から金次郎が這い出て来た。

怪物の体はピクリともせず、里美も気を失っているのを確認する。


「はぁ……っていうか……銃声してんだから……誰か来いよ……」


と、その時。

怪物が金次郎へ向かって飛びかかって来た。


思わず目を瞑ってしまう金次郎。


だが、怪物は何時まで経っても食いついてこない。


恐る恐る目を開けると


「ダカラ言ったじゃないデスカ。絶対に入るなト。ダチ○ウ倶楽部のフリじゃないですヨ?」


その声を聞いて安心してしまう。

目の前には例の探偵。

そしてその足の下。

怪物の頭は探偵に踏み砕かれていた。


「大丈夫デスカ。コレで借り何個ですかネ」


「あぁ……悪ぃ……」


そのまま、金次郎の意識は闇の中へと落ちて行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ