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何処で?-01

ハイ、新しい章へ突入します

学園祭の馬鹿騒ぎもつかの間、再びきな臭い話が始まるよ感がしてきますよ?

「痛ッ」

「おいおい、俊樹クン。男ならそれ位我慢するものだよ」

「いや、矢野さん。いきなり皮膚と血液を採取するなんているから何をするかと思えば、こんなにサンプルを取っていくとは思わなかったもので。正直びっくりしただけですよ」

K大医学部の一角、井上研究室内で俺の体細胞のサンプル取りが行われていた。

「俊樹クン、回復が早いから少々無理しても大丈夫よね」

「何言ってるんですか、井上先輩。…先生」

「先輩でいいわよ。それにしても、素体が壊れてしまったのは痛い損失だったわね」

井上先輩は窓の外を見つめていた。

「大体その素体ってなんなんです? あの時俺を助けてくれたメイの体のこととは想像がつきますが、それ以上のことがサッパリわかりません。出来ることなら教えてほしいものです」


井上先輩と矢野さんが顔を合わせた。そして、フッ… と笑うと、まずは矢野さんが口火を切った。

「素体とはね、俊樹クン。MAI-5000の… いや、メイちゃんの器なんだよ」

「器?」

「そう、この前にキミ自身が鷲尾さんから聞いてたじゃないか。器と中身のたとえ話を」


そうだった。舞衣姉さんから直接説明を受けていたばかりだった。ただまだ漠然としていて、ハッキリと掴めていないのが実情でもある。俺はもっと詳しく知りたいのだ。


「不思議そうな顔をしているわね」

「そりゃそうですよ、何もわからないんですから」

「俊樹クンはメイちゃんのこと、好き?」

「と、突然何を言い出すんですか? 好きかどうかは別として、守りたいとは思っています」

「アレだけアプローチされていてもダメなのねぇ…」

くす…っと井上先輩が笑った。

「あんまり女の子を焦らせるものじゃないわよ。メイちゃんのことも、沙耶ちゃんのこともね」

「なんで沙耶まで?」

「噂に聞いていたとおりの朴念仁だな」

矢野が笑いながら、テキパキとサンプルを冷凍保存をしている。

「私たちはだね、玄田愛衣という一人の女性を蘇らせようとしているんだよ」


「…そんなことが出来るんですか?」

「おや? そこのあたりは既に理解済みだと思っていたのだが、違うのかい?」

「いえ。あくまで憶測の範疇でしたもので、そうハッキリと言われてしまうと正直混乱してしまいます」

「そうかい。じゃ、今何故君からサンプルを取っているのかはわかるかい?」

「想像するに、素体とやらの構築に俺のサンプルが必要… というところですか?」

「いい線をいっているね。でも違う。あくまで安定しているナノマシンの状態を調べたいだけなんだ。このナノマシンを人体に投入して成功しているのは、正直なところキミだけなんだよ、俊樹クン」

「では、メイは近々には蘇らないと?」

「そうだね。この間の一件で、彼女は自分の体組織そのものを破壊させてしまった。それこそ十何年もかけて育ててきたものがあっという間に、だ。その時点で代用品がなくなってしまったのだよ」


俺は… なんということをメイにさせてしまったんだ…。自分のあまりの不甲斐なさに、頭にくる。


「でもね、メイちゃんは決して後悔していないと思うのよ。だって、大好きな俊樹くんを助けられたんですもの。だから素体は消えるときにも笑っていたでしょ?」

「ちょちょちょ、ちょっと待って下さい。大好きな… って、そんなことないでしょう。どんなに精巧にできていてもメイはアンドロイドなんですよ? そのメイが明確で完全な感情を持っているだなんて…」

「それこそ彼女に失礼だよ、俊樹クン。これはひとつの実験でしかないかも知れない。しかし、彼女は『感情を持ったアンドロイド』ではない。人間の魂を宿したアンドロイドなんだ。人としてのメンタルをちゃんと持っているんだよ。その為のスパコン群なんだ。あのスパコンの中に、彼女の魂が補完されている。わかるかい?」


「わかりますが、どうして今になってそこまでの情報を開示して頂けるんですか? 俺には全く…」

「それはね」

井上先輩が優しく囁きかける。

「あなたが眠りについていた彼女を、見事に目覚めさせたからよ」


◇     ◇     ◇     ◇


「押井先生、私は確かにDOGSをお借りしました。ただし、共同戦線を張るという作戦においてです。それがREDに残されたログを読むと共同戦線どころか、全くの囮部隊としてしか使用されていない。あなたは一体何を考えているんですか?」

「…杉山くん。キミはアンドロイドの恐ろしさを知っているかね?」

「だからこそ、全面に押し出して共同戦線を…」

「だからダメなのだよ。01Jは陽動以外の役には立たない」


四菱重工のとある薄暗い一室にて、俺は押井先生の前で膝を折っていた。

「もともとDOGSは対アンドロイド・ドローン戦に特化した部隊だ。当然だが、その弱点も全て研究され尽くしている。各種戦闘に於けるデータは、研究結果として全てが次のモデルの生産に活かされるようになっている。そうやって製造されたアンドロイド・ドローンの再考証をするのが彼ら本来の役目だ。故に、キミの持つオモチャを戦力と見なさなかったとしても、なんの不思議もあるまい? 実際、キミのオモチャはたかだか一介の大学生たちによって破壊されている。この事について、キミはどう考える?」

「それは、…彼らの持つポテンシャルがこちらの想像を遥かに超えていたと…」

押井の視線からハイライトが消えた。

「アンドロイド・ドローンはあくまで機械的でなくてはならない。いわば、殺戮のためのマシーンだ。それらと相対した時、人は初めて恐怖する。そこに感情など必要ない。あれらは単なる機械の塊にすぎないのだよ。違うかね?」


俺は押井の目を見ることができなかった。淡々と喋るこの押井譲という男の素性は計り知れない。


「私もアンドロイドに夢を見た時期があった。しかし、以前ある男のエゴによって、アンドロイドそのものの存在意義が大きく揺らいだのだよ。その男は、人間の魂そのものをアンドロイドに託そうとした。しかし、そんなものをアンドロイドと呼べるのだろうか? 否、それは道義的にも大きな間違いである。そして今、奴の弟子たちは化物(ミュータント)を作ろうとしているのだよ。わかるかい? もしそうなったら戦場は激化し、とりとめもないバーチャルな殺戮戦にしか発展し得ない。何処かで誰かが止めなければならないのだ。その事に人類が気付くまで…」


押井は俺の前に跪き、俺の顔を覗き込んだ。

「言ったろう? 私は人を、人類そのものを愛しているんだよ」


◇     ◇     ◇     ◇


俺は部屋に戻ると、汗で湿ったシャツを脱ぎ捨てた。

そこにはスクラップと化した01J-B/Yと無事に帰ってきた01J-Rが待機している。


「01J-R、お前は俺に何を望む?」

「マスター。質問の糸が理解できません」

「…ならば、言い方を変えよう。これから先、お前は何がしたい?」

「私には、ある人物に”借り”があります。これを返さずには、私はスクラップになるわけにはいかない」

「そうか。強く… なりたいか?」

「その回答には、イエス。私は強くなりたい。B/Yの仇を討てるほどに」


◇     ◇     ◇     ◇


「…私の身体は、MAI-5000の姉妹機として造られました。そして、この身体の元になった玄田愛衣の記憶がありありと残っています。この感情のはけ口を、私は一体どのように処理すればいいのでしょう?」

「EVE-00、お前もそういうことを言うようになったか。一歩成長したのかな?」

「茶化さないでください。あなたの下僕(サーヴァント)としての私と、玄田愛衣の人格としての私とがせめぎ合っています。今はまだ制御できていますが、これからが怖い…」

「…いいんじゃないか? ボクとしては大賛成だね。大いに悩むといい。それがキミの経験値となり、新たな人格となる」

「私は既に、MAI-5000としての代替品ではありません。そこのところをお忘れなく」

「分かっているさ。君は君だ。同じ本体で動いているとしても、全くの別人格だよ。いわば、双子の関係に当たる」

「双子… ですか?」

「そうだ。ただし、MAI-5000の経験値がそのまま君にフィードバックされるようにできている。性能はキミの方が上だ」

「…そういう事にしておきます。では、私は戻ります」

「そうしてくれ。ボクもあと少しで戻るよ」

俺はEVE-00を見送ると、研究室の窓から帰宅するEVE-00の後ろ姿を眺めるのだった。

ハイ、いかがでしたでしょうか?

正直なところ、EVE-00のデザインがまだ決まっていないんですよね~。

メタリックな素体モードしか…おっととwww

そんな訳で、お時間です。

それでは皆さん、さよなら、さよなら、さよなら~♪

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