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Hand in Hand (改)-ある文化祭の一考察-04

ぜんかいのあらすじ~!


俊樹クンもそれなりに学園祭を満喫しているのでした。

おしまいっ!

俺が目覚めた時には、ステージもいよいよ開始という頃。ふと周囲が慌ただしくなったのを機に、目覚めてしまったのだ。


てか、なんだか騒がしすぎやしないか?

「…おはよう、一体何かあった?」

「ああ、俊樹先輩。実は、私達の提出した書類が…」

彩花が困り顔で俺の元へやってくる。

「実は…」

「出場不可!? …なんだってそんな事に…」

「…書類の不備だそうですわ。全くもって脇が甘いというか、なんというか…」

秋帆がジト目でメイを見つめている。

「スミマセン! 提出時にはちゃんと全てをチェックして、間違いなく受理されたはずなのですが…」

メイが涙目で頭を下げている。これは放ってはおけないな。

「…メイ。受付書類のバックアップは取ってあるか?」

「勿論です。提出した日付や書類の通しナンバーも含めて、ちゃんと資料を残しています」

「よし。それらを提出した時の音声や映像などの証拠はどうだ?」 

「ハイ! 私のメモリ内に全て…」

「そうか、ちゃんと言いつけを守っていたんだな。えらいぞ」

俺はメイの頭を撫でると、メイは喉を鳴らした。


「それでは、実際に掛け合ってくる。皆、期待してていいぞ」


◇     ◇     ◇     ◇


「で、ボクが学園祭実行委員会運営委員のTARAOですが、なにか?」

テクノカットに丸メガネ。色白で背丈こそ大きい方ではないが、やおら態度の大きな青年が受付に呼び出されてきた。

「…つまり、富野研有志の方々の書類不備はでっち上げだと? まさか」

「やはりそう思うでしょうね。では、こちらにある証拠品の数々に目を通してほしいものですが…」

「ふむ… ちょっと待っていてください」

TARAOクンは少し席を外すと、しばらくして段ボール箱を抱えて戻ってくる。そしてガサゴソと箱の中を探ると、その中からひとつのファイルを取り出した。

「こちらにある書類は、実際にこれだけなんですよね。いくらそちらが主張しても、現状で認可が取れていないとなると出場は難しいと思いますよ」

「そう言ってくると思いました。こちらが準備した書類には全て通し番号を振ってあります。また、映像でそれら全てを確認している動画も存在しております。それでも、こちらに不手際があると?」

「…なんですって?」

俺は手に持ったタブレットを提示してみせた。動画には、受付嬢が書類の枚数と種類を確認する様子が映し出されている。これらは俺が、普段から必ず証拠動画は残しとくようにと強く念を押していた教育の賜物だったりする。例えメイが人間だったとしても、音声で証拠を乗っ越すように言っていただろう。これは俺が今まで大人を相手に交渉を進めていく上で学んだ処世術だ。


「…なるほど。確かにウチの委員が受理していますね。わかりました。このことはボクが直々に調べておきましょう」

「で、出場できるか否かについては?」

「今日の本番までには」

「わかりました。こちらは出場を前提に準備をしておきましょう」

「そうだ、あなたの名前を伺っておきましょうか」

「古川俊樹。二回生だ」

「なるほど。こちらでも聞き及んでいますよ。あなたが工学部でも特に変わり種ということが理解できました。では…」


◇     ◇     ◇     ◇


「…というわけだ。心配なことは重々承知だが、予定通り準備を進めておいてくれ」

「さすが俊樹先輩! 私の目に狂いはなかった!」

嬉しそうに抱きついてくる彩花。おいおい、顔が近い近い、それに胸も…あ

俺は無意識に周囲を見渡した。ジト目のメイ・真っ赤な顔をして鬼の形相の沙耶。それに何故か秋帆にも見下されているような気がするのはなぜなんだろう?

「ま・す・た・ぁ…」

「俊樹の、…バカ…」

「男って…」

…どうしてそこまで言われなければならない?


◇     ◇     ◇     ◇


ポォォ…ン ポォォ…ン

彩花がチューニングを始めていた。彼女以外のメンバーひとりひとりも、それぞれの楽器の手入れに励んでいる。

「なぁ、運営委員会からの通達はまだないのか?」

「まだです。ですが、わかります。私たちは間違いなく、あのステージに立てるでしょう」

メイがギターの手入れを止めて、微笑んだ。


「失礼します。富野研の方はこちらに?」

倉庫の扉の向こうから声がした。俺はすぐさま返事を返す。

「ああ、入ってくれ」

「実行委員のTARAOさんからの言伝です。当富野研有志によるバンドの書類不備疑惑は晴れました。ですが…」

「ですが… とは?」

「すでに枠がありませんでした」

全員の表情が一瞬で曇った。


「いいよ、続けて」

「そこで提案なのですが、実行委員会バンドとの一騎打ちというイベントを急遽企画しました」

「…面白そうだね」

「参加… いただけますか?」

「だそうだ。どうする、お嬢さんたち?」


「勿論、受けて立ちますわ!」

威勢よく、一番に秋帆が手を上げた。

「面白そうじゃない!」

沙耶も乗ってきた。

「私も面白いと思います」

メイもまた、ノリノリである。

「「異議はありません」」

とは右京・左京の弁。

「先輩達さえよろしければ、受けて立ちますよぉ!」

彩花は息巻いている。

「ちょっと納得いかないけれど、それもアリかな」

頭をかきむしりながら、舞衣姉さん。

「いいよ、受けて立とう」

「…だそうだ。そのように伝えてもらえるかな?」

「こちらの不手際に対し深いお詫びと、参加の意向をいただけたことに感謝を」

こうして、正式にステージへの参加が認められたのだった。


◇     ◇     ◇     ◇


「…なぁ、メイ。今何時頃だ?」

「おはようございます、マスター!」

ニッコリとほほえみながらメイ、「今起こそうとしているところでした」と弁明しながら続けた。

「まもなく午後一時といったところでしょうか。もうすでに皆さん、バックヤードへ移動されてますよ」

「移動する前に起こせよな… あれから衣裳関係のトラブルは起こっていないよな?」

「ハイ、マスターが精魂込めて作った衣裳です。手直しも朝までかかって大変でしたでしょうに、それこそピッタリ! 一部のスキもないほどだと、皆さん喜んでおられましたよ」

「そ… そっか…。ならいいんだ」

「で、司馬さんからお言葉を預かっていいます」

「?」

「この度の見事な職人の技、交渉の手腕。まっこと見事であった。後は現場に特等席を用意してある。そこで我々の仕事を見守っておいてくれ。きっと後悔はさせない。以上! …だそうです♪」

司馬の口調を一生懸命に真似ながら、メイは言伝を告げた。

そうか、喜んでもらえたか。俺はふぅ…と大きなため息一つこぼすと、「ありがとう」とだけ言った。

「どういたしまして、マスター。必ず勝ってきますね♡」

そう言ってメイはバックヤードへと姿を消していった。

「んじゃ、俺もそろそろ行くとするか」

呟くと、俺は指示された特等席とやらへ移動を開始した。


「ではこのK大祭も、いよいよ大詰めとなってまいりました! そろそろ各団体のパフォーマンスを披露していただくステージを開催いたします! 準備はいいか、野郎ども!」

舞台上で何故か司会として仕切っている西村が気勢を上げる。そこにいた観客たちはどよめき、歓声を上げた!

「今回も皆様の投票で最優秀賞を獲った団体には一つだけ、可能なことであればなんでも聞いてくれるというK大校長から頂いてきた書状を授与! なお、演目は何を演ってもよし。…ルールは特にねェ、ただし卑怯な真似をした奴は永久に軽蔑されるであろう!」

「さっさと始めろ!」

「演説を聞きに来たんじゃねェぞ!」

「議事進行!」

「引っ込め司会!」

「アハハハハ!」

元ネタを知っている方にはお約束の、仕込みと思わしき野次が飛ぶ。そしてあちらこちらで笑いも起きている。うん、順調に舞台は暖められているようだ。コレならイケるか?

「では、エントリーNo.1番。乃木研有志の漫才からだ! がっかりさせんなよ!」


演目は順番通り、滞りなく進んだ。どうやら我が富野研と運営委員会との一騎打ちイベントはラストに控えているらしい。観客にはラストの演目が終わってから15分の投票時間が与えられてて、一人一票の投票形式になっている。また、特別審査員には全10ポイントの投票権があり、その投票によって大きく勝敗が左右されるという事態も恒例のお楽しみだった。その投票用紙には参加全団体の演目が印刷されており、チェックを入れるだけで投票可能とだという。なかなかこなれた手法だな…。俺は用意された席につきながら、あたりを見渡した。


…なるほど、舞台に遠過ぎもせず近過ぎもせず。ほぼ中央の、ミキサー席前の位置だった。

学園祭という雰囲気も手伝ってか、15分という限られた時間もオーバー気味に、様々な団体の演目全てがウケている。


ふと見ると、俺の斜め前の席でブツブツ言っている見覚えのある男がいた。その男の名をTARAOという。


今回はひとつひとつの演目全てを批評し、後に伝えていくという記録係が彼の仕事の模様だ。ブツブツ言いながらも事細かに、手帳に書き込んでいる。いちいち丸い眼鏡のブリッジを上げ下げするあたり、司馬を思い起こさずにはいられない。思わず俺はクスッと笑った。


「そこ、笑いましたね? ボクのこと笑ったでしょ? いいや、笑った! 間違いない!」

突然TARAOクンは後ろを振り向き、俺を指差して小声で怒鳴ってきた。

「ご、ごめん。これは俺の失態だった。気分を害したのなら謝る。スマン」

「い、いいえ。わかっていただけたならいいのです。これはボクの性分ですし、与えられた仕事を全うしている真っ最中なのですから」

「へぇ…。なかなか大変そうな仕事だな。ブツブツ言ってたのは、一体…?」

「ハイ、誰も彼も真のエンターテインメントというものを理解していない。それがあまりにも嘆かわしいのです!」

「真のエンターテインメント、ねぇ…」

そんなもん、素人に求めるなよ。俺はココロの中で叫んだ。

「ハイ、ただ脱げばいい、弄り倒せばいい、だからこそ今のエンターテインメントは廃れてしまったのです!」

「んなもん、面白けりゃいいだけだろうに。違うのか?」

「ハイ、違いますとも。例えばDVDのレンタル店などをよくごらんなさい、一時期だけのものは早くに処分されてしまい、結局長く並んでいるのは、エンターテインメント性の高いものばかりだ。そう、その場の瞬間が面白いだけではいけないのです!」

「そうなんだ。大変だなぁ、難しいなぁ(棒読み)…」

「そうなんですよ。これから当大学を志望する若者たちのためにも、質の良いエンターテインメントをこの世に残さねば、との使命感を持ってこの仕事に取り組んでいるのです!」


…なんだかこのTARAOクン、このステージに関しての意気込みにおいて性格が全く変わっていないか?


「とかなんとか行っている内に、今度は軽音部だ。なかなか洒落てるじゃないか」

俺は洗練されたその演奏を楽しんでいた。

「…ダメですね。彼らには(ソウル)というものがない。ただキャーキャー言われたいだけというオーラが滲み出ているッ」

お前、それ全国の軽音部とそのファンの連中を敵に回す発言だぞ。今のうちに撤回しろ? な?


演目は次々と進行していく。このTARAOクンは全くのマイペースで悪口を叩き、メモを取り続けるのだった。


そうだな、演目の幾つか…。

そう、例えばジャズ研の演奏はTARAOクンが褒めていた数少ない例だった。てか、単に好き嫌いだけの話じゃないのか?


◇     ◇     ◇     ◇


いよいよ我が富野研有志 vs 西村率いるバンドによる演奏の順番がやって来た。

楽器の入れ替え・設置に10分。司馬たちが手際よく楽器を配置していく。

「ははぁ…。富野研はキャストを見るに、流行りのガールズバンドですね? これは見る価値なし、と」

「おいおい、それだけかよ? うちのバンドなんだよ。スゲェからちゃんと見てくれよ!?」

「そうだったのですね? でもよくご覧になってみてください。いかに形から入っているバンドかがよく分かる」

「例えば?」

「ギターです。キーボードです。ベースです。それら全てが、あたかも自分はベテランであるとでも主張したいがためのチョイスにしか見えない」


「そういうものなの?」


「ハイ、例えばあの白黒ツートンのフライングV、あれは往年のマイケル・シェンカーのモデルです。それからもうひとつ、漆黒ステルスのウルフファング。あれは後年のエディ… いえ、ヴァン・ヘイレンが愛用したモデルですね。それなのに、です! キーボード! YAMAHAのGX-1! あれは言ってしまえば、ただのエレクトーンなんです。それを愛用していたと言えばただ一人! キース・エマーソンしかいないでしょう。彼は本当に残念な最後を迎えたアーティストの一人でした。この日本にも造詣が深かった。それから、ベースは一見するに、リッケンバッカー4001S。それを愛用する演者は数多い。しかしっ! あれだけ個性的な演者たちを御せる逸材と言えば、変幻自在のメロディの達人、ポール・マッカートニーその人だ。もう一人のキーボードエンジニアはよくわかりません…。ですが、配置されている楽器の古さや配置から鑑みるに、Yesのリック・ウエイクマン…」

「ホント。よくもまぁ…、それだけポンポンと出てくるもんだな? 改めて感心するぜ」

「ただわからないのがドラムスなのです。ツーバスのベテラン演者は数多くいる。この一見バラバラな、ある意味では偏ったメンバーからどのような演奏が飛び出てくるのかが想像できない…」


「そんだけイロイロ出てくりゃ、それなりに上手い演者ではないのだろうか? と思うのだが」

「…ハイ、その可能性はあります。しかし、今までガールズバンドでそのような演奏をしてみせた方は観たことがない…」

「おいおい、そりゃただの偏見だぜ。ただ世に出てないだけで、実は… て逸材だってゴマンといるだろうによ」

「でも、ほんの僅かに過ぎません…!」

全く譲ってもらえない。

「それに、数ある名曲を放り出してアニソンですよ? 信じられますか?」

「それも偏見だ。アニソンは、その… 色んなジャンルが織り込まれた、実はものすごいジャンルだって聞いたぜ」

俺はメイの受け売りで対抗してみた。

「…確かに。あのジャンルだけは、何でもありですね。…わかりました。ではちゃんと観てみましょう」

「助かる」

そして、俺達のバンド vs 西村のバンド対決は本番を迎えるのだった。

さて。まさかの展開ですね~。

特に、外伝とは大きく変更された部分でもあります。いかがでしたでしょうか?

楽しそうな雰囲気、伝わっていましたか?

作者はいつもドキドキものです。できましたら、ご感想など書き込んでくださいね。

おっと、もうお時間となりました。

それでは皆様、さよなら、さよなら、さよなら~♪

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