街路樹は知っていた-06
ぜんかいのおはなし~!
ある人物からの情報で、仏生山が襲われる可能性を示唆されました。
おしまいっ!
仏生山クレーターは、改めて言うこともないが、一種の空洞である。メイの本体でもあるスパコン群やらいろんな施設を飲み込んで余りあるスペースを有していた。それを一介の一企業が専有しているというのもおかしな話ではあるが、どうやら国はこの空間のことをあまり公にはしたくないらしい。とはいえ管理には多大な資本がかかる。という訳で、その一角を間借りするという形で施設が入っているのだよ、と矢野は笑いながら言っていた。どこまで本当のことかは正直わからないが、ソコは大人の事情もあるのだろう。
「と、いう訳で!」
今回ばかりは一成が仕切っている。本当に珍しいこともあるもんだ。
「みんなそれぞれに一着づつ、強化装甲服一式を用意したよ。各自名前を確認して着用してみて!」
「一着づつって、…そういや、それぞれ地味にちょっと違うのな。一体どういうこった?」
司馬が気乗りしない風に質問した。
「各自の特性を活かして、それぞれオーダーで造ったんだ。そこんトコロはフロンティアの人も手伝ってくれたから、随分と早く一揃えができたよ」
そんな司馬の態度にもかかわらず、一成は最高にゴキゲンである。
「司馬さんのは接近戦用のパイルバンカー仕様。わりと自由の効くようにセッティングしてあるから、動作も軽いと思うよ。それから村川さんのがチーフスペシャル。全てを統括する指揮塔の役目だよ。当然のように対人・対物レーダーと熱感知システムが搭載されているんだ。それから通信システムが強化されているのと、遠距離支援用の超電磁投射砲が一門。ただし、連射が効くように、コンデンサーを3基切り替えて使用することができる。…とはいえ、1分に3発を連射するのが丁度いい間隔かもね。だから、連射する時は要注意ね。それから、これが野村さん用。近接~中距離戦闘用に、小回りの効く仕様にしてあるよ。で、背中には110mm個人携帯対戦車弾が3発と両腕にM72A3が3発づつ、それからアイアンクローが特徴かな? で、ボクのと俊樹クンのはあくまで標準装備。ここまでで、質問ない?」
「先生、言っていることがサッパリわからないんですが…」
俺は挙手して思ったままを言葉にしてみた。
「それって俺と一成の以外はスペシャルだってこと?」
「うん、つまりはそうだね。だから、扱いやすい機体だと思うよ。むしろ、司馬さん達のヤツのほうが、癖があると思っていいかもね」
「俺は乗らねーぞ」
司馬は断固として拒否する。
「大体どんなに自由が効くったって、俺の八極拳はこいつでは再現できねぇ」
「だからこその、パイルバンカーなんだけどなぁ…」
「それなら!」
彩花が挙手した。
「私が乗ってもいいですか、先輩!」
「いや、危険だし、乗るの、難しいし…」
司馬が言うことももっともだ。俺も同意見だった。
「あれ~、信用してませんね? なら、皆さんの中でハンドルネームEVAっていう名前、聞いたことある方はいませんか?」
「え…と、突然VR格闘ゲーム内で登場後、そのあまりのチートぶりに出入り禁止を食らったと聞いている… 伝説のプレイヤーがいたな。あれは… なんだっけ?」
村上がタブレットで情報検索しながら答える。
「それこそがこの私、HN:EVAこと平野彩花なのでした!」
沈黙、そして。
「ええええええええええ!?」
誰もが驚愕を隠せなかった。しかし、そんなに簡単に乗りこなせるものだろうか?
「ならば模擬戦闘、ヤッてみるかい? お嬢ちゃん。そんなに甘くないってこと、教えてやんよ」
野村が申込んだ。それなりに自信があるらしい。
「そりゃ面白い。俺も観戦していいか?」
司馬が初めて興味を示した瞬間だった。
「それでは早速、セッティングしようか」
村川がそう言って「練習は?」と問うと、「必要ない」と答える彩花がそこにいた。
前言撤回。それなりに、ではなく、相当の自信があるらしい。
このクレーターの天井は高いところで数m以上、低いところでは本当に数十センチといったところか。とりあえず俺達はこのクレーターの中で強化装甲服のトレーニングをしている。人数分揃ってからというもの、それこそ毎日のように、だ。この強化装甲服にはフロンティアの協賛ということもあって、デカデカとフロンティアのロゴが背面に貼り付けてある。それにしても、一体どこにアピールしたいのやら。
「そこはそれ、いずれちゃんとお金になるのですよ。あなた達が本当に優秀で、助かってます」
とは、矢野の弁。
「いずれにせよ、そうすることで得をする連中がいるんだよ。フロンティアもその一角なのさ」
とは、村川の弁。
一成の開発したモノ全てのスポンサーは全て、フロンティア。本当によくできたお話である。
野村は相応に操作に慣れてきていた。長距離から近接戦闘という射程を活かした戦闘方法もマッチしているのだろう、早く実践をしてみたいという雰囲気が見て取れる。彩花はスパッツにTシャツという軽装の上から強化装甲服を身に着けていた。
「おい、あくまでこれは模擬戦だ。くれぐれも大怪我はしない・させないようにな」
司馬が釘を刺す。
「わかってるって」
軽く、野村は答えた。
「野村先輩、容赦はいりません。思い切りかかってきてください」
「言われずともそのつもりはねぇ。お嬢ちゃんこそ、気後れ無しで頼むぜ」
村川の指に、コインがセットされた。
「双方、遺恨はないな。それじゃ、始めるぜ。レディ…」
ピン!とコインが弾かれる。
彩花と野村の間合いは約10m、これならM72A3を使えるか? それとも…
現在彩花が搭乗している強化装甲服は、本来司馬専用機である。超近接戦闘に特化したモデルで、広い間合いは全く得意ではない。
果たして…
コインはキラキラと弧を描き、チャリンという音と共にゲームは開始された!
口火を切ったのは野村の方だった。左腕に装着してあるM72A3を一発、発砲した。
「おっと、後方確認…」
「「「「遅ェよ…」」」」
彩花機は超信地旋回を繰り返し、ひらりと爆風をかわす。そのままキュイ…ンという軽いローラー音とともに、野村の左へと回り込んだ。
「いいかい? 本来なら本格的な火器を積む予定じゃなかったんだ。でも、詳細なデータを取りたいというスポンサーの意向があって、取り敢えず取り付けてある。対人ではできるだけ使わないようにね」
当初、一成はそう説明していた。しかし、見ての通りそれを破ったのは野村だった。
「約束を破る悪い子はお仕置きですね、野村先輩!」
「ぬかせ!」
野村は右腕に持ったフルオートコイルガンを連射する。
パパパ…ン
しかし、それすらも旋回しながら華麗に避ける彩花機。
流石に焦ったのか、野村機が間合いを取ろうと加速を始めた。
「たとえ相手が超近接専用機といえど、俺の機体だって、格闘に特化してあるんだよな…」
双方の軌跡が円を描いた後、一気に間合いが縮まった。ここでも仕掛けたのは野村だった。
指を保護するカバーが起動し、その先に付いた鋭い爪がセットされる。
そのまま更に間合いを詰め、アイアンクローが彩花機を襲った!
決まったか!? しかしその軌道は虚しく空を切り、それよりも先に左側面に回り込んだ彩花機のパイルバンカーが野村機を捉えていた。
「ぱ~ん♡」
おどけながら、彩花は勝利を宣言した。
◇ ◇ ◇ ◇
「早ェ… 追いつけねぇよ。いや、大したもんだ」
野村は彩花の実力に舌を巻いていた。
「このタコ! これは模擬戦だから熱くなりすぎんなって言ったろうがよ。なんだ、火気使ってまであの醜態は?」
「あ… 」
「いいんですよ、私の勝利は決まってたんですから。それに…」
彩花は得意気に言い切った。
「これで私のチート疑惑が晴れたっていうものです」
◇ ◇ ◇ ◇
はい、いかがでしたか?
彩花ちゃん、凄いですね~。
存在自体がチートですね~。
それはそうと、フロンティア、大盤振る舞いでした。
お金は一体どこから出てくるのでしょう?
もう一度、過去のお話を読み直してみるのもいいかもしれませんね~。
おっと、そろそろお時間です。
それでは皆様、さよなら、さよなら、さよなら~♪




