あの日のままで-02
ぜんかいのあらすじ~!
故・玄田教授の三本の矢と呼ばれた面々の詳細が明らかになってきました。
特に、四菱重工の顧問:押井譲の過去と現在。
狂犬と呼ばれてたんですね~。
同時に、一馬とはどのような男なのかも…。
さぁ、お話の再開です!
「おや? クラウドって概念は小山氏の発明したものだったのかい?」
野村が間の抜けた声で疑問を呈した。
「いや、概念を作ったってことだ。これも残念だが、日本ってのは新しいものに抵抗感が強くてな。結局海外に売りつけたんだよ。で、全ての権利を売り払った対価として、小山氏は大金をせしめたんだ。それはベンチャーを大きくするには十分すぎる金額だったと聞いている」
「じゃぁさ、あの仏生山クレーターのスパコン群は? ありゃ、ちょっとやそっとの金額では構築できねぇ代物だぜ」
俺は素直に疑問をぶつけてみた。村山は「良い質問だ」と前置きして続けた。
「ソコだよ、重要なのは。今フロンティアの技術なしにアンドロイドは動かない。そういうことさ」
「つまり、玄田先生を始めとするグループの全面バックアップで大きくなったと?」
「そう考えるのが妥当だろうな」
「さて、皆様」
秋帆が少々ご機嫌斜め気味に口を挟んだ。
「確か、私のお話を聞きたいということでここまで呼び出されたかと記憶しているのですが、…間違っていて?」
「おお、そうだったそうだった! 実にすまねぇ」
司馬が場を取り繕う。
「で、続きだ。HIHとしては、四菱の暴走を止めたかった… 違うか?」
「あら、察しがよろしいんですのね。私のHIHに傷がつくと困りますもの。四菱の真意を問いに右京を派遣したのですわ」
「ところが、あの顛末だ。秋帆さんとしてはどうしたい?」
「暫くの間、あなた方と行動をともにします」
「ふぅん… て、ええッ!?」
誰もが仰天した。一体何を考えているんだ、このお嬢様は。
「私にも思うところがありまして… それに日本の大学生活にも少し憧れていましたの」
「日本の大学生活って、お嬢さん、一体いくつなんだ?」
村山だけでなく、誰もが知りたいことだった。
「あら、言ってませんでしたかしら。私、英国で飛び級してますの。16歳ですわ」
「私は23だ」
「私も23です。右京とは双子なのですよ」
と聞いてもない双子の年齢まで聞くことになった。それにしても16歳とは… 俺は水着姿の秋帆を思い出していた。
「…俊樹、なに考えてるのよ?」
「えっ? いや、年齢の割にはモデルのようなプロポーションだったなぁと…」
「まぁ、俊樹。嬉しい反応ですこと!」
素直な感想だったつもりだった。しかし、次の瞬間には「このスケベ!」の雑言とともに沙耶から冷ややかな視線を送られることになった。一体俺が何をしたっていうんだ?
◇ ◇ ◇ ◇
「なんにせよ、無事でよかったわ」
アタシは昨夜無事に帰還した二人に話しかけた。
疲労困憊だった二人をとりあえず我が家に泊まらせて、で、先程食事を終えたところである。
「待遇はまぁ、悪くなかったよ。飯はうまかったしな」
「でも窮屈で仕方なかったわ。ずっと監視カメラで覗かれてたんですもの」
裕二と春香はおもったより元気そうだった。
「で、一馬とは会ったんでしょ?」
春香の方から切り出してきた。
「ええ、見事に出し抜かれてしまったわよ。後始末がもう、大変!」
「で、データの方はどれ位…」
「ええ、調べてみたんだけど…」
アタシは裕二の質問に応えるべく、タブレットを操作した。
「アクセスの記録だけなら、本当にAAMYの基幹部分だけね。演算処理のためのロジックがゴッソリと」
「『だけなら』… てことは、他の部分も?」
春香もかなり気になっているようだ。
「ええ。これは憶測の域を出ないんだけど… ログを見る限り感情に値する部分の一部を読みに行ってる。それも、どうやらAAMYが意図的に、自らアクセスを行ったと見るべきかしら」
「AAMYが? まさか!」
信じられないと言った風に、裕二。アンタお茶、こぼすなよ。
「でも理解できなくもないわ。だって、もともと感情を優先したシステムですもの」
大丈夫?と裕二の足元を布巾で拭きながら、春香。ふ~ん、なんか、いい雰囲気になってるじゃん?
「問題は、一馬さんが開発したっていうK-AAMYよね」
「そうなのよ。ほんとうに自然でさ。アタシが対峙したアレが感情に振り回されて過負荷を起こしでもしたら…」
「…暴走(Eschatology)…!」
裕二がボソリ、とつぶやいた。
重苦しい空気が流れる。
アタシはメイちゃんの入っていたメンテナンスボックスに目をやった。ZE-AAMYは実証実験を兼ねて、こうやって運転をしている。玄田先生の教えの通り、非常にデリケートに扱うべきものだ。一馬のやり方は強引すぎる。彼が言っていた通り軍事に特化させてしまったら、必ず大きな歪が出てくる。そうなったら、どんな屈強な兵士でもアンドロイドは止められない。
「アタシたちは、本来触ってはいけないものを触ってしまったのかもね」
「そうとも言い切れないわ。富野教授があれだけ心血注いで構築したプログラムが走っているんですもの」
「強制リミッター解除ね。果たしてそこまで一馬が気付いているのかしら…?」
「なんにせよ、賽は既に投げられている。あとは彼らに任せるしかないよ」
「そうね。アタシたちにできるのは、彼らのフォローくらいだものね…」
「それはそうと。アンタ達、いつの間にそんなに仲良くなっているのかな?」
アタシはなんとなく話題を変えてみた。こういう時には恋バナがテキメンである。
「い、イヤね。そんなこと… ないわよ」
「まぁ、…だな、連絡を定期的に取り合っているくらいで…」
おやおや? カマかけただけなのに、どうやらこれは…。
「おいおい、もういい年なんだよ? アラサー超えてんだよ? くっついちゃえばいいじゃん!」
「もう、舞衣ったら。冷やかさないで! 学生じゃないんだから!」
「お、俺は、その、いいと、思う… けどな」
「えっ?」
頬を真っ赤にしているこの二人。爆発してろっての、コノヤロー!
◇ ◇ ◇ ◇
「気づいてない訳ないだろ?」
俺は雑音混じりの音声を聞きながら、ふと呟いてみる。
本当に賑やかにやってるよな、相変わらず。
「で、EVE-00への換装は完全なものになってるのか?」
背後で、少しクセのある喋り方。振り向くと、白髪の初老の男が立っていた。
「はい、ボクの設計にミスはありません。あと少し、今度は人としての経験値を増やしてやれば、あるいは」
「小原一馬くん。…キミの進言でDOGSは動かさなかったんだ。だいたい何故、あの二人を拉致する必要があったんだ?」
「それもこれも、計画を前倒しにするため。この回答ではご不満ですか?」
「大いに不満だね。計画書によれば、EVE-00とDOGSの精鋭を対峙させるという。私は大事な手駒をひとつとして失いたくはないんだがね」
「それだけ、先生もAAMYを恐れていらっしゃるという証拠ですよ」
「仏生山を潰すほうが早いのではないのかね?」
「それはむしろ逆です。御存知の通り、AAMYは競わせることで成長します。競う相手を失うことは、かえって逆行するも同じです」
「わかった。任せると言ったのは私だ。…期待していいのだな?」
「勿論ですとも、押井先生をがっかりさせるようなことはいたしません」
「…いい。任せる」
「ありがとうございます」
俺はその場を下がりながら、聞き耳を立てる。
…今度は一体何人のDOGS要員を俺に仕向けるんだ?
下手は打てない。慎重に、慎重に、だ。
◇ ◇ ◇ ◇
「ねぇ、俊樹。あたし思うんだけど」
あたしはベスパのエンジンを停止させながら、話しかけた。
「メイちゃんって、本当にアンドロイドなの?」
「当たり前だろ? かなり特殊ではあるけど、カテゴリで言えば完全なアンドロイドだよ」
ヘルメットを脱ぎながら俊樹、不思議そうな表情を浮かべる。
「あたしはね、違うと思うんだ」
「へぇ~、どのように?」
「メイちゃんってね、本当に『ヒト』なんだって思うの」
「?」
「そこで質問。ヒトとアンドロイドの違いって何?」
「そりゃ、おまえ… 使役するのが人間で、機械として使役されるのがアンドロイドだ」
「ならば、よ。アンドロイドがヒトと全く同じ感情をもって、同じように考え・行動を起こせるとしたならば?」
「それにしたって条件は同じだろう?」
「更に言えば、よ。彼らが自分たちで種を増やすことが可能になった場合、どうなのかな?」
「え…」
俊樹、なんだか難しそうな顔をしている。
「じゃ、言うわね。欧米における人種差別と同じことが、ヒトとアンドロイドとの間に起こり得はしないかなって」
「ふむ、…そりゃ興味深いテーマだな」
「それがメイちゃんだって言ってるのよ?」
「…沙耶、お前すごいな」
「普段の彼女を見てて思うんだけど、彼女、本格的な人格を持ってて感情をも持ち合わせているの。それもプログラムされたものではない、別の何かで。そうね、魂と言ってもいいかしら。そういうものが宿っているのよ」
「いくらなんでもそれは考えすぎだろ?」
「いい? 俊樹。今から予言… 警告しといてあげる。多分近いうちに、メイちゃんと同じようなアンドロイドがやってくるわ。それは多分、メンタルのレベルで同様のね。いい? 確かに警告したわよ」
キョトンとしたままの俊樹をおいて、あたしは階段を駆け上がった。俊樹の部屋の前まで来ると、ここまでいい香りがしてくる。今朝打ち合わせしておいた通り、青椒肉絲の準備が整っているようだ。
「さすがね」
あたしは新たなライバルの出現を予感しながら、解錠し、ドアを開けた。
という訳で、やっぱりと言うかなんというか、押井譲と一馬はつながっていましたね。
それもどうやら不穏なつながりの模様で…
気になりますね~、ホント、ボクも気になります。
それでは次回をおたのしみに!
さよなら、さよなら、さよなら~♪




