リベリエ・ラヴ
あれこれと門番たちに聞かれたのちに
街に入ることができたゾルカとアレッサは、
王城のあるエリア、ヴィルレー全体で言うと
中心部のやや北側へと向かっていた。
ジュナイルやフィラミラと合流するためである。
「ヴィルレーは三ヶ月ぶりなんだろう。
ちゃんと元いた場所にいるのか、お前の仲間の、
恐ろしく文の下手な戦士と
十発に一発しか的に当たらない魔導士のタマゴは」
走りながら、アレッサは尋ねた。
ゾルカ同様彼も俊足で、闇夜の街の景色が
飛ぶように後ろへ流れていった。
「いる…はずと言いたいとこだけど、
仲間のことながら自信ないなァ…」
ゾルカは、久しぶりに会えると思っていた仲間の顔を
思い浮かべながら答えた。
ムトーは変わらず神殿にいるであろうが、
元々風来坊のジュナイルと変人のフィラミラはわからない。
ちょっと出かけてゾルカの帰りに合わせて戻ろうと思ったけど、
うっかり何ヶ月か遅れちゃったなどということになっても
少しも驚かない、そちらの自信ならある。
「とにかく、いるとすれば二人とも城の方だ!
急ごう!」
「わかった」
「そうだな、急ぎましょ!」
『…』
返事がひとつ多い。
聞こえてきた第三の声に、ゾルカとアレッサは左の方を向いた。
彼らと並走する、見知らぬ人物の姿があった。
「誰だお前!」
ゾルカが怒鳴るように尋ねると、
二人とさほど歳は変わらないように見えるその男は、
細く吊り上がった目をさらに細めてにやけながら左手を上げた。
「ボクちんはリベリエ・ラヴ!
いやあ、ボクもあっちの方に行きたかったんだけど
一人じゃヤバそうだったもんでさ!
キミたちにしても数は多い方がいいでしょ~、
一人より二人、二人より三人よ!」
そう言ってラヴはウインクしたが、いかにもうさんくさい。
愛想のいい笑顔でここまでうさんくさい第一印象を
人に与えられるのは逆にすごいなとゾルカは変に感心した。
「どこへ何をしに行く」
鋭く視線を投げかけてアレッサが問うと、
ラヴは口に手を当ててぷぷっ、と笑う。
やはり、うさんくさい。
ロクなことを言わないだろうなと二人は思った。
「お宝だよお宝!
お宝をいただきに行くの。
街中がこんな大騒ぎになることなんかそうそうないでしょ!
千載一遇のチャンスよ!」
「お宝?何だ?」
「知りたい?
知りたいの?
誰にも内緒だよ、いい?」
唇に人差し指を当てるラヴ。
こんな時に何をもったいぶっているのだと、
アレッサはいらついた。
「墓場まで持って行くから、さっさと言え」
「短気は損気よ、ダンナ!
グレムドさ!
神剣グレムド!」
「あの神話のか?
そんな物…」
「グレムド!?
あるの!?
ここに!?」
アレッサの言葉を遮り、ゾルカは大声を上げた。
探し求めていた物の名が思わぬところで出たからだ。
ヴィルレーに来た当初、自分もジュナイルもグレムドについて
聞き込んでみたものの、めぼしい情報は得られなかったのだが。
ただ、うさんくさいラヴの言うことである。
うのみにはできない。
当のラヴは、喜色を露わにしている。
「おっ、キミも興味あるの?
一緒に取りに行く?
ボクはグレムドをこの手で持ち出せれば満足だから、
その後はキミにあげてもいいよ」
「ホント!?
行く行く!」
「ちょっと黙れお前たち!
言葉はしまって代わりに剣を抜け!」
二人の会話をかき消すように、アレッサの声が響いた。
すでに鞘を払っている。
ゾルカが前方を見ると、戦闘が起こって道を塞いでいた。
「やるしかないな…!」
ゾルカは、ロト・ロウから譲り受けた
反り身の剣が納められた鞘を左手でぐっ、と握る。
世界に平和をもたらす勇者を志す者として、
仲間と合流できればいいというものではない。
避けて通るわけにはいかないだろう。
これから、戦いに身を投じる。
ゾルカの心境はこれまでにないものだった。
以前は実力がなく、自信がなく、恐ればかりがあった。
今は、命がけで己を鍛えてきたという想いがある。
やれるという、自信がある。
「(ロトさん…俺、やるよ。
俺と、ロトさんと、レイファス…そして、フォズリルとで
つくり上げた力で!
誰かのために、戦うよ!)」
すでにアレッサは三人の列から前に抜け出している。
戦場に出れば、次の瞬間どうなっているかわからない。
一瞬ののちに、友を失わないために。
ゾルカも、走る。




