風来坊の帰還
「よ~う、帰ったぞジュナイル様が!
あ、これお土産です。
グランバル地方のドライフルーツ詰め合わせな!」
ヴィルレーに到着し城の女官の居住エリアに
やって来たジュナイルは、フィラミラの部屋の
扉の横に立つ女性兵士、イメリア・ターナーに包みを渡した。
ある種の変人であるフィラミラのお守りは苦労も多かったろう。
その労いの意味も込められていた。
「ありがとうございます。
でも、今はフィラミラさんはいらっしゃいませんよ」
頭を下げ、両手で包みを受け取ったイメリアはそう告げた。
「いない?
あの凝り性のお嬢ちゃんが出歩いているということは、
もしや作業は終了しているのか?」
「ええ、二日前に完了したとのことです。
それからは、国立図書館や博物館、古本屋などに
行かれているようですね」
「休暇を楽しんでいるというわけか。
ま、大仕事の後だからな…」
「あれ?
ジュナイル君、帰ってたの?」
「お」
背後からの声に振り返ると、フィラミラの華やかな姿があった。
細腕には見合わぬほどの、何冊かのいかにも古びた分厚い本を抱えている。
そんな物でさえも、彼女を飾る役割を果たしているように思えた。
現れた途端この場が明るくなったように感じさせる少女である。
「グッドタイミングだな、お前さんも戻ったところか。
街に出ていたようだが雷バリアの被害者を
続出させていたりはしないだろうな」
フィラミラがナンパなどの手合いを撃退するために
身体の周りに流している弱い雷のことである。
ケガをするところまではいかないが、
雷バリアに触れると痺れる。
「してないよ、わたしも気をつけてるからね。
それより、ジュナイル君どこ行ってたの?
長いこと見ないな~と思ってたらさ」
その言葉を受けて、ジュナイルはやれやれと額を押さえた。
相変わらずと言えば相変わらずだが、
赤の他人ではなく仲間なのだから動向に
もう少し関心を持てと言いたい。
「…ゾルカとムトーも行くべき所に行ったんだから
どこか行って来たらって言ったのはお前だろ…
あとな、行方不明だと思ったら探してくれ、せめて」
「あっはっは、それもそうだ」
「…。」
笑っているフィラミラ。
聞いているようで聞いておらず、
適当に答えている時の反応だ。
もっとも、それを気にしていてはきりがないが。
「ゾルカはまだか?」
「みたいだね。
少なくとも、わたしは会ってないな」
「ムトーは?」
「神殿の地下に篭って訓練中だって。
さらに筋肉が増えていたらどうしよ~」
「いや筋トレのために篭っているわけじゃないだろ、
いくら何でも…
三ヶ月くらいという話で動いているから、
二人とも直に戻るだろう。
オレは強力な武器や魔法の情報収集でもやっておく、
お前さんはしばらく好きにしてな」
「ほ~い」
仲間が集結する時は近い。
まだ全員そろってはいないが、
ジュナイルは帰って来たという気がしていた。
そして、四人そろってそれぞれの三ヶ月のことを話したり
他愛ないやり取りをすることを楽しみにしていた。
今は、仲間のいる所こそが帰るべき場所、彼の家なのだと言えた。




