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補欠勇者  作者: 吉良 善
5 みんなのところへ
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集結まで

グランバル山脈の山々に巻きつくように伸びる山道。


岩肌を削っただけの、一歩行くごとに


肝を冷やす想いをしなければならないような


その道を進んでいたジュナイルは、足を止めて振り返った。


空気は冷たく、風は強い。


まとったマントが激しく煽られて、ばたばたと音を立てた。


眼下には、薄い霧の向こうに周囲を山に囲まれた


小さな集落が見える。


簡素な人家がいくつか散らばっているだけの散村だ。


あまりにも険しい風景の中にそれはあり、


初めて目にした者は、なぜこのような場所に


住んでいる人々がいるのかと思わずにはいられないだろう。


己の意志というよりは、その集落の歴史、


そこにいなければならない何らかの理由が、


住民たちをこの秘境につなぎ止めているのかもしれない。


異邦人には、そんな想像をするのがせいぜいであった。


ここはグランバル山脈でもかなりの奥地で、地図には載っているが


人が訪れることは全くと言っていいほどなかった。


あの村を旅立った時、父もおそらくこうして


振り返って見下ろしたのだろう。


その際に、ジュナイルも同じ眺めを見ていたのだ。


それだけが、幼い彼の記憶に焼きついていた。


「ありがとな。


 そして…さよならだ」


万感込めてつぶやくと、前を向いた。


もう、来ることはないだろう。


あの村は―――――


故郷は、今や消えゆくのを待つばかりである。


己の過去を見つけたことで、ジュナイルはひとつの旅を終えた。


これからは、漂うような人生ではない。


自分の意志で、流れるように日々を送ることがあったとしても。





「うん、うん。


 いい、いいですよ、フィラさん。


 実によろしい」


軽やかに剣を納めて、キラリトは拍手をした。


場所はファンフランの王城ホワイト・ウォールの敷地内にある


女性兵士用宿舎に隣接する訓練場。


キラリトから少し離れた所に、フィラミラが立っていた。


純白の斧フランファランを手にした彼女が屹立している様は、


さながら絵画のような光景であった。


「いい気分転換になったよ~、


 ありがとうキラさん」


爽やかな表情で言うフィラミラ。


彼女は真イミラト文書の解読作業の合間に、


キラリトに時折稽古をつけてもらっていた。


「あなたなら戦士としても一流になれますよ。


 これ、言うの何度目でしょうね」


笑いながらキラリトは言ったが、その言葉は正直なものだった。


フィラミラは細身ながら意外なほどの腕力があるし、


技は容姿と同じく華麗である。


魔法やら古代やらに傾倒している彼女だからありえないだろうが、


もし武器を扱うことにも関心を抱いていたならと考えると


実に惜しい。


「解読作業は完了に近づいているそうですね。


 そろそろお仲間もお戻りになるのではありませんか?」


「え?…ああ~、そうだったかも」


「…かも?」


冗談で言っているのではない。


フィラミラは涼しい顔でフランファランを振り回している。


彼女にとっては、自分がより強く興味をひかれるもの以外は


ぼやけた背景で、後になって問われても


「そういえばあったな」くらいの感覚なのかもしれない。


おそらく本人に悪気はないのだろうが、


この娘をパーティーの一員としていることには、


苦労も多かろうとキラリトは再び思った。


しかし彼女の持つ稀有な美貌と才能とは、


いくつかの問題を抱えたとしても補って余りあるものであろう。


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