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補欠勇者  作者: 吉良 善
4 強くなりたい
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ゾルカとレイファス

だから、レイファスはゾルカの所にやって来た。


「何だよ、レイファス?」


いつもと違う様子のレイファスに、


ゾルカはきょとんとした。


かまわずに、レイファスは鋭い視線とともに


己の思いを言葉に変えて向けた。


「いいか、デスゾルカ・レビ。


 私は、どうあがいてもお前が及ばないことを証明する。


 他の誰にでもない、私自身にだ。


 剣を取った時期が違うとか育った環境とか、


 あれこれと理屈を付けたくはない。


 だから、ここを去る日まで剣のことのみを考えろ。


 本気では不足、死ぬ気でだ。


 そして、私と勝負しろ。


 その時までに、私が全力をもって倒す価値のある男になれ」


「ああ、獣の原で話したやつだろ。


 お前が負けたくないと思える男になれってことだな」


「いいや、違う。


 言葉のとおりだ。


 せめて全力で戦うだけの意義がある相手になって、


 私に倒されろということだ」


「はああ!?


 何!?


 何だそれ!


 かませ犬だか踏み台みたいになれってこと!?」


「そうだ。


 踏み台であり、引き立て役だ。


 今のお前はそれらにすらなっていない。


 お前と剣を交える時、私は全力を出したことなどないのだからな」


「急に敵意むき出しにして、反抗期か!」


「敵意ではない。


 このままではお前とともに鍛錬をした意味がないということだ。


 言うまでもなく、勝負とは真剣勝負。


 敗北すなわち死であると知れ」


「え!?


 ちょっと待った!


 俺、そんな殺伐としたノリで話してたんじゃないんだけど!


 卒業記念試合でしょ?


 終わったら肩を組んで海を見に走るみたいなのを


 想像してたんだよね!


 そういうのにしようよレイファス君!」


ゾルカからすれば、唐突すぎる話である。


獣の原でともに戦い、話す内に、良きライバルになれるものと


思うようになっていた。


最近はまた、やや無愛想になったかと感じてはいたが、


このような申し出を受けようとは。





狼狽するゾルカに対し、レイファスは仮面を付けているように無表情で、


冷たい顔をしていた。


「私たちがいるのは学校ではなく、励んでいるのは授業でもない。


 より強くなったのはどちらか、はっきりさせるには最適の手段だ。


 それに、最初に会った時に言ったはずだ。


 邪魔をするなら容赦はしないと」


「邪魔なんてしてないよ!


 たまたま一緒に修行してるってだけ!」


「十分にしている。


 弱いお前に付き合わされ、そして…」


「そして?」


「…」


レイファスの心にとって、邪魔な存在になりつつある。


ここでは、俗世間を離れひたすらに剣に打ち込むことができる。


そうする内に自分の意思が精錬され、


真に目指すものだけを見据えるようになった。


その結果、ゾルカは己の道に不要な存在となった。


だから、彼が競い合う相手となり好敵手となるかもしれないなどと、


一度でも考えたことに今では気持ちがささくれ立つ。


己の未熟ゆえだろう。


そのような心境になるのも、同い年の相手に様々な想いを抱くのも。


これ以上、揺らいではいられない。


ゆえに、断ち切る。


ゾルカを、完膚なきまでに打ちのめして。


「…存在自体が目障りになった、ということだ」


「ひどい言いがかりだ!


 お前の気の持ちようひとつじゃん!


 候補勇者の言うことじゃないよ!」


「…とにかく、お前が拒んでも私が仕掛ける。


 覚悟しておけ」


「嫌だね!」


きっぱりと言うと、怒りを露わにしていたゾルカは


一転してにやりと笑んだ。


レイファスは、その笑みを凍えるような瞳で見た。


「勝負は受ける。


 けど、俺はお前の命を取る気はない。


 俺が勝って、その勝負は殺し合いにはさせない」


「そんな甘い考えで、生死を賭け戦う私に


 勝てると思っているのか?」


「命がけの奴が強いのはわかってるよ。


 この先も殺生はしないなんて言うつもりもない。


 剣は命を左右するもの、それを手にする以上、


 そして戦う以上、自分が死ぬかもしれないこと、


 誰かの命を奪う時が来るかもしれないことは


 覚悟してる。


 でも、お前が言っているのは違う。


 お前は俺をつぶしたいだけじゃないか」


レイファスの凍てついた瞳を、ゾルカの燃えるような


強い輝きをたたえた瞳がまっすぐに射抜く。


交わされる言葉だけではなく、互いの心が、


外には現れぬ形でぶつかり合っていた。


「俺たちがロトさんから教えられたのは、


 獣の原で悟ったのは、何て言うか…


 もっと前向きな必死さを持つ必要だったはずだ。


 それって、心も体も本当の本気の全力を発揮することだろ。


 俺を目の敵にしているだけのお前に、それができるのか」


「前向きも何もない。


 持てる力を常に存分に、自在に操ることができるのが


 真の武人というものだ。


 そのために、鋼の如き精神を宿す必要がある。


 常に己の命を賭し剣を振るうことで、


 お前の言う境地にはたどり着ける」


「…ああ言えばこう言うヤツだな…


 でも、修行には付き合ってもらうからな!」


「いいだろう。


 可能な限り上達してもらわなければならないからな


 …弱いままのお前を倒すのは不本意だ」


「ケッ、な~んでこんな急激に険悪になってんだよ。


 やっぱボンボンは気まぐれだなー!」


肩をすくめて首を振りつつ、ゾルカは夕食の準備のため


小屋の中へと向かう。


少し遅れて、レイファスも続いた。


この日以降、二人が打ち合う時の激しさが


日を追って増していった。


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